ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

タイムライン:マイケル・クライトンは「ドラえもん」を超えたのか?!

2005年06月05日 | 映画♪
一時期、ハリウッドスターに大枚はたいても興行収入があがらなかった頃、原作の良さこそが映画を決めるとして、とにかくいくらつぎ込んでもこの三人の原作の映画化権を押さえろ、みたいになったことがある。その1人がこの「タイムライン」の原作者マイケル・クライトン。「ジュラシック・パーク」を彷彿させるような現在科学の最高技術が生んだSF大作。

フランス南西部の修道院跡で行われている100年戦争跡地での発掘プロジェクト。そこで14世紀の地層から現代の製品と思われる眼鏡のレンズと“Help me”と書かれたメモが出土する。しかもそれはプロジェクトの責任者・ジョンストン教授のものと一致した。事態を探るために、教授の息子のクリス(ポール・ウォーカー)やケイト(フランシス・オコナー)ら発掘チームの面々は、教授が訪問中のハイテク企業・ITCを訪れる。しかしそこで知らされたのは、ITCが極秘に開発した時空間転送装置で、教授は14世紀のフランスに転送され消息を絶ってしまったという事実だった。クリスら6名は教授の行方を追ってて中世フランスへと向かうのだった…




話は面白いし、スピード感やハラハラ感もある。役者もちゃんとしてるし、迫力もある。特に物足りないところがあるわけではないのだけれど、うわー美味しかった!という感じではない。いつもいっているまぁまぁ美味しい定食屋の味というところか。

例えば「ジュラシック・パーク」の場合、まず発掘された樹液の中に閉じ込められた蚊の体内に残った遺伝子から「恐竜」を再生するという「もしかしたらありえそう」という驚きとそれを「テーマ・パーク」にするアメリカ人ならやりかねない発想にまず度肝を抜かれたわけだけど、今回の場合、所謂古典的なタイムマシンものの域を出ていない。確かに幾つかの条件や制約があったりはするけれど、物語全体は「現在→過去→現在」という流れだし、「タイム・パラドクス」落ちだったりと、言ってみれば「ドラえもん」と変わりはない。セットは丹念に作られているし、迫力も満点だけれど、3Dで恐竜が動き回った衝撃はない。

そんなわけで、期待が大きいと「定食屋」で終わってしまうのだけれど、作品としては悪くはない佳作だろう。

個人的に気になったのが、「転送」ということ。映画では、「電話線に紙は入らないがFAXはできる」と説明し、「人」の情報を電気信号に変えて転送するとあったが、こんなことは可能なのか。例えば、最近、NTTコミュニケーションズが「香り配信」を開始した。これなども、特定の香りをを調合パターンをネットワークを通じて異なる地点に伝達し、調合パターンを下に香りを組み立てるというものだ。とはいえ、FAXにしろ、「香り配信」にしろ、オリジナルがなくなるわけではない。FAXであれば「文字」、正確にいえばオリジナルの塗り潰されている配列パターンを読み取り、送信先で「再現」しているだけだし、「香り配信」でも「調合パターン」の情報を送信しているだけであり、送信先の香料の入った専用装置で「再現」しているだけなのだ。オリジナルが消えるわけではない。

パソコンでアロマセラピー、NTTコムが「香り配信」

bit化とはオリジナルではなくCopyの氾濫に他ならない。

そう考えると、実はこれだけの装置ができる前にもっと恐ろしいことがあるのではないかという気になる。オリジナルを「電気信号」に変え、異なる時代・場所で再現できるくらいなら、それ以前に、まさしくオリジナルに可能な限り等しいCOPYを作り出せるのではないか、つまりクローン羊ドリーでさえも、全く同じ遺伝子を持っているというだけで、成長過程や経験はオリジナルの遺伝子をもった羊とは異なるわけだけれど、完全なCOPYということはそうした記憶や経験も含めて同一の者が誕生するということだ。オリジナルと全く同じものが幾つも複製される――こちらの方がずっと怖いだろう。

原作だとこのあたりのフォローがもう少しあったのかもしれないけれど、結局、この物語を支えている設定そのものが、現実からはちょっと遠い「ドラえもん」と変わりないレベルであるという時点で、ただのSFになってしまったのだろう。


【評価】
総合:★★★☆☆
迫力:★★★★☆
もう一捻りほしいところ!:★★★★☆


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