ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

【映画】クロニクル:今風の感覚にみちた超能力者の悲劇

2014年01月02日 | 映画♪
普段はあまり超能力者ものの作品を見たりはしないのだけれど、TSUTAYAの人気ランキングの上位に入っていたので、借りてみることに。日本の漫画だと面白いものも多いんだけど、アメリカの超能力ものというと、スティーヴン・キングなんかもあるけれど、全体的に大味な作品が多い気がする。と、あまり期待しなかったのだけど、予想以上に面白い。現代的な感覚に満ちた良作。

【予告編】

映画「クロニクル」予告編


【ストーリー】

高校生のアンドリュー(デイン・デハーン)は、大酒飲みで暴力的な父親、病気で寝たきりの母親のもと、学校でも一人ぼっちで過ごしていた。アンドリューはそんな生活のすべてを、唯一の話し相手である中古のビデオカメラに語りかけながら記録していく。ある日、同じ高校に通ういとこのマット(アレックス・ラッセル)が、アンドリューをパーティーに誘う。インテリで社交的なマットは早速お気に入りの女の子ケイシー(アシュレイ・ヒンショウ)を見つけて話し込むが、ビデオカメラを回していたアンドリューはいちゃもんをつけられて殴られてしまう。マットとアメフト部のスター選手スティーヴ(マイケル・B・ジョーダン)は、外で泣いていたアンドリューを見かねて、近くの洞窟探検に誘う。そこで3人は、不思議な物体に触れる。それをきっかけに不思議な能力を身につけた3人は、女の子のスカートをめくったり、駐車してある車を移動させたりと、軽いイタズラを楽しんでいた。

【レビュー】

これまでも超能力者を主人公にしてきた作品は多数あったけれど、この作品の魅力は何といっても「同時代性」だろう。Wearableカメラ等を使って自分の見たもの、体験しているものを録画し、ネットに公開するのが当たり前のようになっている時代。しかもそれらのネタをTwiiterやFBで公開し、ネタとして提供することが一種のステータスを獲得することでもある。

一昔前までのこうしたサイキックものの場合、どうしても物語性にこだわるあまり「現在」という空気感を十分にとらえられていなかったと思う。これは何もサイキックものに限らず、1990年代までの映画と2000年代以降の映画では、登場人物たちのもつ雰囲気が異なりはじめた。以前は物語の文法にそったセリフやキャラクター作りがなされていたが、今ではもっと自由に日常的な台詞に近いものとなった。僕らの会話というのは、まじめなセリフも冗談めかして言うと、深刻な場面でも冗談交じりに話したりするだろう、それと同じ感覚が映画でも使われたのだ。

この映画でも超能力を手に入れてからのはしゃぎぶりはまさに現代の風潮を反映している。超能力を使ってキャッチボールをしたり、スーパーマーケットで悪戯を仕掛けてみたり、それらはまるで、YouTubeに投稿された動画のネタそのものだ。

そして恥をかかされた後の主人公の壊れっぷり。コンプレックスの裏返しか、プライドが高くちょっと恥をかかされたからといって、際限なく逆切れしてしまうその様は、「いる!いる!」と言いたくなくらいネット社会では見受けられるタイプ。破壊した規模は凄まじいが自らの感情をコントロールできなかったというのは本人の精神的な幼さ故ということだろうが、今の日本の自己顕示欲と結びついて愉快犯からみればまだましということか。

ストーリー自体はそれほど凝ったわけではないが、最初の映像のもつミニマムなストーリーの雰囲気からは想像がつかないくらい最後は大きくストーリーが広がっていく。こうした裏切り方もあって見ていて飽きることはない。



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