たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

池山尾根往復・空木岳

2008年09月28日 | アルプス系
◎2008年9月27日(土)─I男と

 I男とは、伊那市にあるエビスホテルで合流ということにしてあったが、行程のタイミングがほぼ一致し、伊北IC先のコンビニで合流。まずはビールとつまみを購入。どうせ早朝の出発、飲んで寝るだけだから、宿はどこでも良かったのだが、このホテルには浴場があるので、部屋のユニットバスよりは旅の情緒も少しは味わえるだろうと、ここにした。8畳間としながらも実質のスペースは5畳。狭いながらも、和室2人で素泊まり8,000円。先ずは部屋でビールで軽いウガイをするつもりが焼酎が加わり、若干重い、いつもの「打ち合わせ」になる、まだ外は明るい。ここでしけ込んでいるわけにもいかず、飲み屋の開店時間に合わせて繰り出す。地方で過ごす夜は長いが、夕方はもっと長い。4時半には、もう飲み屋も開店しているし、スナックも6時過ぎにはやっている。飲み助にはありがたい。都合2軒ハシゴし、宿代を簡単にオーバー。コンビニに寄って、山の食糧を調達して宿に帰り、その日は9時半頃に寝た。宿の風呂はめちゃくちゃに熱かった。目ざましは4時にセット。

 当初、ロープウェイ経由で空木岳に縦走を考えていたが、途中の小屋に泊らないとまず無理だろうが、下ってからのアクセスが悪い。林道をかなり歩くことになる。いろいろと悩んでいたら、金曜日は確実に雨の予報。ともに、金曜日は休暇をとっていたから、その日は現地の安宿に泊まって、土曜日に池山尾根往復にした。木にも声をかけたが、仕事であっさりと断られた。K女はベトナムだったかカンボジアに遊びに行っている。I男しか相手にできない。

 5時前に宿を出る。オレの車はそのまま預け、I男のデリカで行く。林道を走るには車高が高い方がいい。迷いながらも林道終点に着いたのが5時20分。すごい道だった。今日は好天が約束されていたから、菅の台バスセンターの駐車場には、たくさんの車が駐めてあった。タクシーもエンジンをかけて、薄暗い中、客を待っている。ロープウェイが動くのは8時。混雑時には2時間待ちもざらのようだ。こんな時間から、パスではなくタクシーで行く人もいるのだろう。林道終点には車が9台。我々の後にも2台到着。ぼんやりと明るくなっていたので、ライトは不要。ライトを使いたがっていたI男が残念がる。ちなみに、結局、富士山に行けなかったI男、オレが餞別代わりにやった酸素ボンベを持ってきたがったようだが、かつて山を慣らした職場の仲間にたしなめられて、酸素は泣く泣く持参せず。後になってから、山頂付近で息苦しくなって、やはり持って来るべきだったとほざいていたが。

 5時33分出発。前後に7~8人の山歩き。この方々とは、あちこちで頻繁に顔を合わすことになる。傾斜のゆるやかな、整備された道を進む。I男が早速、飛ばし気味。たしなめる。快適な歩きのはずではあるが、こっちはどうも、頭も身体も重い。やはり昨夜は飲み過ぎ。6時24分、池山小屋近くの水場。夫婦者が2組、男3人組、そして単独のジイサンAがいた。この水場の水は勢いが強い。ただ、強弱が急変するから、変な格好で飲んだら水をかぶってしまう。流れに法則性があるのか、しばらく観察していたが、ただの気まぐれのようだった。オニギリを食べる。オレは1個。I男は2個食べた。

 ここから、本格的な登山道に入る。この先にも遊歩道コースが分岐しているが、先ずは登山道を行く。やや急になる。ここでハプニング。I男が木の根で滑ったのを見て、注意したばかりなのに、オレ自身が滑って、前のめりに倒れて顔面激打。立ち上がりざまにもう1回。まったくみっともない格好。額と鼻面をしこたま打ちつけてしまい、血がにじみ、顔が腫れ上がってしまった。ザックから薬を出そうとしたが、あるのは筋肉痛用のものだけ。まして、バンドエイドではカバーしきれない範囲。ここで山歩きをやめにするわけにもいかず、戻るまで我慢することにした。額部分は帽子があるから何とか隠せるが、鼻周辺はどうにもならない。まともに顔を見られないように、ひたすらうつむきかげんに、人目を避けるだけ。それにしても痛い。前歯も2本グラグラ。歩きながらも、痛みも伴い絶えず気になった。

 遊歩道との合流を通過。水場から遊歩道に向かった夫婦者も、ほぼ同時に合流。道は良かったそうだ。マセナギに到着。7時11分。3人組の1人が以前ここを歩いたことがあるらしく、その時はマセナギの表示板がなかったと言い張っていたが、よくみると、相当に朽ちた表示板だ。何年前の話なのだろうか。地図では、ここから「迷尾根」と表示されているが、どこがどう迷いやすいのかよく分からない。整備されていないながらも、登山道はしっかりしている。下る際、単独が登ってきて、「しかし、この尾根、確かに迷い尾根だね。どこに向かっているのか、さっぱり分からない」と言っていたが、なるほど、方向感覚が鋭い人にはまさに迷尾根なのだろう。オレとI男にはからきし理解できない。しかしながら、まったく展望がきかない。前をジイサンAと3人組。抜いたり、抜かされたりの繰り返し。ジイサンAは話好きなのか、休んでいたら、I男がつかまってしまった。肺炎あがりだとか言っていたが、本当だろうか。単独が3人、さっさと先に行く。3人組もしかしながらのおしゃべり。男のくせに、よく話題が尽きないものだ。あれじゃ、結構、疲労するよ。

 大地獄、小地獄の手前でようやく、右手の展望が開けた。宝剣岳が見えた。今日の天気は最高。ただ肌寒い。地面には霜柱。アップダウンが多くなる。帰りはきついかなと思ったが、この尾根は平均してなだらかだ。ここまでも、急登はなかった。時間はかかるが、むしろ楽なコースとも言える。I男が汗をふき出し、さっさとアルコールを発散させてしまったのが不思議なくらいである。さも、自分は楽勝かのような言い方になってしまったが、その実、I男の歩きについて行けず、頻繁に一休みを強要していた。

 空木平への分岐9時16分。出発から3時間45分。標準タイムは5時間程度だから、随分と早い。しかし問題はここから。山頂までは延々とかかってしまう。普通なら1時間で行けるルートが、1時間半もかけてしまった。空木平に一気に下る。後ろから大声がかかった。3人組。「どこへ行くの?そっち行ったら、空木平に行っちゃうよ!」。そして、これをたしなめる声。「そっちからでも行けるんだよ!」。しばらく立ちすくんでしまった。何か悪いことでもしたような後ろめたさ。避難小屋まではかなり下る。登り返しで山頂までが長いんじゃないか。ちょっと失敗したかな。

 避難小屋には10分くらいで着いた。きれいな水が流れている。空木岳から伏流して流れている。冷たい。小屋に入ってしばらく休む。ノートを読んだら、昨日あたりも数人泊まったようだ。ガスの中を歩いたのだろうな。お気の毒に。寒い。山頂が見えている。そんなに急ではないので、あっさり着くんじゃないのかと安易な思いが出てくる。ところがとんでもない。2分も歩けば立ち止まる。その繰り返し。駒峰ヒュッテが見えるのだが、一向に近づかない。今度はI男が積極的に休みたがる。このコースはだれも歩いていない。見事な紅葉だ。一週間後は最高だろう。裾野から山頂まで、黄色と赤が連なっている。伊那谷を越えて南アルプスの全容が見える。南アルプス南部の向こうに頭をかすかに出しているのは富士山だろう。左には八ヶ岳、浅間。休みの間に、一つ一つ、山の講釈をI男にたれてやったが、北岳の存在そのものを知らないI男のこと、後半はほとんど適当なウソ交じりの解説。もう一度言ってくれと言われたら、ほとんど先の話と矛盾するだろう。

 駒峰ヒュッテまでは何度休みながら登ったろうか。軽く15回は休んだろう。予定では3回程度の予定だったが。ようやく駒峰ヒュッテ10時43分。立ち休みして山頂に向かう。上からジイサンAが下りて来た。寒くて、さっさと下りてきたそうだ。10時54分、山頂着。先客に例の3人組。I男は早速、シャッター押しをせがまれていた。ここからの眺望もすごい。乗鞍、恵那山、南駒。御岳は特定できず。そして北アルプス。岩陰で休憩。I男はしきりに感動している。山頂で食べるつもりでリンゴを1個持参していたが、前歯の具合が悪いので、1個丸ごとI男にやった。山頂には15分程度。確かに寒い。

 駒峰ヒュッテに向かい、ここで食事にする。中にはジイサンAとバアサンBが食事をしていた。外にはジイサンBがいて、このジイサンがなかなか頑固そうなのだが、見ていると、バアサンBとは夫婦のようで、食事が遅いバアサンBにいらいらしているところがあって、何度も小屋に入って来ては、バアサンBにさっさと食えと催促している。バアサンBは一向にひるまない。オレとI男も残りのオニギリを広げたが、オレは1個食べるのがようやく。口に物を入れるのが苦痛でならない。この分では、しばらくは麺類とおかゆしか食べられないだろう。ジイサン、バアサンは食事を済ませて、そのうちに出て行った。このヒュッテは休憩に使用する場合、金額の決まりないのだが、箱にお金を入れることになっている。一応、2人で200円入れたが、ジイサンらは金を払っていなかった。

 ヒュッテの鐘を鳴らして下山にかかる。11時18分。今度は駒石経由にする。ハイマツと白砂台地の世界だ。そしてなだらか。やはり、このルートを上りに使った方が早いだろうし、下から空木平分岐までの延長でとらえるなら、こちらが違和感なく続いている尾根ルートだ。しかし、駒石なるのはすごい。どうやって、あんな岩石がここに集まったのだろうか。3人組が食事をしている。完全に疲れきった顔になっている。しばらく行くと、ハイマツの上で大の字になって寝ている人がいる。びっくりした。よく見ると、ジイサンB。その時は、バアサンBは食後のキジ打ちにでも行ったのかと思っていた。ところが、さらに行くと、バアサンBはジイサンAといっしょに歩いている。こりゃ、まずいんじゃないの?話好きなジイサンA、おしゃべりしながらの楽しい下りになりきっている。追い越して休んでいると、しばらくしてやって来て、バアサンBはジイサンAにミカンをおすそ分けなんかしている。あっという間に発展している。ジイサンBは中々下りてこない。バアサンBは栃木なまりの言葉を話していた。

 随分と人が上がってくる。この時間の方々は小屋泊まりだろう。荷物も重そうだ。団体の12~13人。登山道は狭いので、待つのに時間がかかって仕方がない。つい、「オタク、最後ですか?」と聞いてしまった。そうでも言わないと、我々が待っているのではなく、休んでいるように思われては不愉快になる。気づいてくれたからいいけど。マセナギの下で休んでいたら、またジイサンとバアサン。今度は明らかにバアサンBの様子がおかしい。後ろを振り返って心配顔。「ハイマツの上で寝ていましたよ」とも言えない。ジイサンBには、その後に先を越され、また抜いている。黙っていた。遊歩道分岐では、ジイサンAも完全に元の単独に戻って下りてきた。ジイサンBがとうとう追いついたのだろう。また、ジイサンAにつかまった。ただ、耳が遠いらしく、大声を出さないと話が通じない。下山時の風呂屋を聞き出すまでに、相当の時間を費やした。その間、I男は何やら靴を脱ぎだし、足裏に出来たマメをいじりながら、バンドエイドを貼っていた。

 遊歩道コースを選ぶ。確かに道は登山道に比べて整備されていて歩きやすい。心地よい笹と白樺の世界だ。だが、Uターンの連続になっている。ところどころに太い切り株が脇にあり、黒ずみ、遠くから見ると、熊がうずくまっているようで、一瞬、ぎくっとする。オレだけかと思ったら、I男もそう思ったそうだ。水場の合流14時6分。ようやくあと1時間。とうとうフィナーレか。また、じっと水の配水を見ていたら、またジイサンAがやってきた。今日は、ずっといっしょだった。しかしながら健脚なジイサンだ。どうみても、あれが肺炎患者か?

 駐車場に着いたのは15時ジャスト。9時間半の歩きだった。車も20台近くに増えている。やがて、ジイサンA、少し遅れてB夫婦。3人組はどうしたのか。B夫婦はてっきり栃木だと思っていたら、福島ナンバーの車だった。常に空腹のI男。駒峰ヒュッテでオレの分を含めてオニギリ3個食べたとはいえ、若いから歩けば腹が空く。オレの荷物の中にラーメンがあるという話は歩きながらしてあった。車に着くや、I男がカレーヌードルを出したから、袋ラーメンをコッヘルで煮炊きするんだよと改めて言ったら、ようやく納得した。駐車場にある東屋はただ座るだけの構造。お勝手するには不便で、I男が地べたに座る。ここで、バーナーを使って餅入りラーメンを作ったのだが、持っているコッヘルでは不便。1食分しか作れない。I男が感動しながら食べている間、オレはサバ缶を食べて我慢した。やわらかい物なら口に入る。ましてや空きっ腹。

 本当はゆっくりと打ち上げてもしたかったが、オレは顔面打撲、I男は明日5時の集合でサーフィンとのこと。温泉に入れば、痛みも麻痺し、ビールも飲みたくなる。しかし、その後がおそろしい。ビールだけでは終わらない。ここは我慢するしかない。とにかくオレはキズ薬が欲しかった。林道を下る。ストーリーはこのままでは終わらない。群馬ナンバーのギャランがとことこ前を走っている。そしたら、いきなり止めて、助手席からオレと同年輩のオッサンが降りて、かけてきた。「上の駐車場から下りてきたんですよね?実は、家出したムスコを探しているんですけど、上に、軽のトディはなかったですか?」と聞かれた。つい、「群馬ナンバーですよね?」と聞いたら、そうだと言う。「なかった」と答えた。そりゃそうでしょ。長野とはいえ、名古屋圏の山に来て、車が駐まっていたら、群馬ナンバーの車なら、つい気になってしまう。群馬ナンバーはなかった。ただ、後で、駐車場の隅に、うつむいた青年がいたのをI男が見かけたという話を聞き、自分の直感はダメだなと思ってしまった。ギャランのオッサンも、オレの話を信用しなかったのだろうか。広いところで、待機する形で車を駐車した。何やら、自殺の可能性があるとか、電話があったとか、何でこの林道に目星をつけたのか、不思議でしょうがない。

 オレの車を駐めてあるエビスホテルに向かう途中、薬屋でキズ薬をI男に買いに行ってもらう。人前で顔を出せない以上は仕方がない。I男はタイガーバームがいいと思ったらしいのだが、薬屋の勧めで、首をかしげてしまうような薬を買ってきた。I男と別れ、自分の車を運転し、ようやく1人になってから、路肩に車を停めて顔じゅうに薬を塗りたくった。もう、早いところは膿状になっていた。I男から丁寧なメールが届いた。今日の山はすごくよかったみたい。無理して連れて来てよかった。だけど、オレの感動は顔面激打で半減だったな。

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5 コメント

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やったね! (K女)
2008-09-28 16:21:43
ブログを開けたとたん、綺麗な紅葉と山の写真、青空も素敵。計画を聞いた時は、この行程では私には無理だし、旅行帰りだったので不参加でしたけど、ちょっぴり悔しいくらいよい眺めでしたね。9時間半の歩き、途中でのケガなど、話題沢山ですね。
報告会には参加しますよ。
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顔面強打 (俺だ)
2008-09-28 18:42:24
とは痛々しい。謹んでお見舞いを申し上げます。で、歯は大丈夫か?25年くらい前のことだが、俺は穴に落ちて前歯がぐらついた。4~5年で入れ歯にしたよ。でも、天気が良くて、紅葉も見られて、さらに相棒のI男氏も元気でよかったな。次回の調教を楽しみにしてるよ。おっと、K女も行けばかなりのダイエットになったのに、残念!!。
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お騒がせ (mailaddress-1234)
2008-09-28 20:57:33
歯は大丈夫だろう。ただ、上の歯ぐきはまだ腫れているから、歯はしっかりと固定していない。昨日は、まったく食を寄せ付けなかったが、今日は、昨日の学習のせいか、脇に寄せてかんで食べている。肉は当面無理だな。K女さんよ、ベトナムからいつ帰って来たの?
オレらの報告よりも、そっちの話を聞きたいな。立山も冠雪なんだってね。次の調教登山は楽勝・乗鞍の予定だが、雪があったらアウトだな。木さんよ、黒姫の紅葉なんてどうかね?
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その後 (俺だ)
2008-09-30 18:32:18
顔の状態はどうだ?登山前夜の深酒は慎んだほうがいいな。睡眠が浅くなるから、酒が切れても体調は芳しくないし、場合によっては血圧があがるし、少しは歳のことを考えたら。と、偉そうに忠告しておく。自省もこめて。
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次回の調教登山 (俺だ)
2008-10-04 18:49:35
だが、外せない用事ができてしまった。残念無念、申し訳ない。中嶋を誘ってみてくれ。
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