Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

ライブ・イン・HD DVD いよいよ店頭に (1)

2008-09-21 | お知らせ・その他
映画のプレビューだの、ヴェルレクだの、レクチャーだの、と浮かれているうちに、
Madokakipはライブ・イン・HDのDVDの発売を忘れてしまっているのでは?と思われた読者の皆様、
お気遣いをありがとうございます。
記憶力の低下がはなはだしい私なので、ご心配もごもっとも。
しかし、自分の誕生日を忘れることはあっても、このDVDの発売日を忘れることは決してないでしょう。
もし、メトがらみの大事な日にちを失念するようなことがあった日には、
いよいよ自らの深刻な痴呆症を疑わねばなりません。

店頭買いが好きであるレトロな私は、発売日である16日に、二軒もCD屋をはしごして、4つの演目をかき集めました。
『ラ・ボエーム』、『マノン・レスコー』、『ヘンゼルとグレーテル』、そして『マクベス』がその4演目。
盤の製作が間に合っていないのか、EMIの思わせぶりな作戦か、
6演目一斉発売のはずが、各CD店で1~3演目しか棚出しされておらず、
他の演目を希望の場合はその店に入ってくるまで待つか(正確な予定日は不明)、
店から特別にオーダーをかけてもらうかこの2つのオプションしかない。

16日から今日まで、残りの二つ、『ファースト・エンペラー』と『ピーター・グライムズ』が
入荷するかも、という希望的観測で待機してみましたが、
せっかちな性格であるので、とりあえず、第一弾として、すでに手元にある4つについてのみ、
手短に感想を上げてみることにしました。
第二弾をいつあげられるかはCD店のバイヤーの腕次第。
バーンズ&ノーブルとヴァージン・メガストアの両店、よろしくお願いします。

さて、今回4演目を鑑賞し(うち、『ラ・ボエーム』を除く3演目は、映像になったものは初めて観た。)、
セットとか舞台の雰囲気が上手く映像に写りこんだ演目とそうでない演目があることを発見。
つまり、ライブ・イン・HDのりがいい演出、というのが間違いなく存在するということです。

 プッチーニ 『ラ・ボエーム』



映画館で後日アンコール上映されたたため、4演目中唯一すでに鑑賞済みの映像。
以前にも書いたとおり、ゼッフィレッリの超大なセットがやや映像に収まりきっていない感じが
するのが残念。
特に実際の上演がすすんでいる時にそれが顕著。むしろ、舞台裏でセットを組み立てたり
解体している時の方が、雰囲気が出ていると思う。

あと、この『ラ・ボエーム』のみならず、他の作品でもそうなのだけれど、
実際のライブ・イン・HDの上映にはあったはずのインタビューの全てが
DVDにのっているわけでないのも私にとっては残念。
一体、誰がどういう基準で決めたのか。

例えば、この『ラ・ボエーム』で一番面白く、NYの映画館の中でも笑いの渦だった
指揮者のルイゾッティへのインタビューはDVDにはないし、
(話している内容が面白いのではなく、キャラが立っているのだ。)
またルネ・フレミングが児童合唱のメンバーにインタビューする場面は彼女の素顔が垣間見えて
興味深かったのだけれど、それもカット。
ゲオルギューのフレミングへの、”じゃ、あんたがカバー”発言を含む
主役二人へのインタビューは採用となっているので、それで我慢するしかありません。

 プッチーニ 『マノン・レスコー』



実際にDVDを観て、ますます、なぜこれをDVD化したのか?という疑問が消えない演目。
マッティラはやっぱりこの役には合っていない。
ジョルダーニは、”彼にしては”まだましな歌唱を繰り広げている。
しかし、重ねていいます。最近についていえば、これが彼の歌唱の良い方の上限です。
むしろ、歌よりも意外と演技の方がナチュラルで好感が持てます。
でも、オペラはやっぱり歌がよくないと、、。
他の演目にはしっかり演出家がついているのに、この演目は、セット・デザイン、
演技付けをした人、などがばらばら。
そのせいもあってか、ヴィジョンがまったく感じられず、それがこの公演をだるいものにしていて、
また音楽とまったく呼応していない演技づけといい、観ているうちに疑問符が次々と頭に浮かんできた。
たとえば、一幕、マノンが帽子をもてあそびながら、後ろからデ・グリューがじっとマノンを見ているシーン。
この時にバックでオケが奏でる音楽をきけば、ここは絶対に二人の視線が出合って、そして瞬時に恋に落ちたことがわかる。
なのに、このメトの舞台では、マノンとデ・グリューの視線すら合っていないのだ。
何を考えているのか、この演技付けをした人は。

オケはよく聴くと、特に弦セクションを中心に頑張っているところもあり、
特に第三幕が始まる前の間奏曲のチェロをはじめとする弦楽器がいい演奏をしているのだけど、
セットも舞台で観たときはそうでもなかったのだけれど、DVDではなんとなく古色蒼然として見え、
全体としてだるい雰囲気の公演になってしまっているのは本当に残念。
そろそろ新演出を組まなければいけない演目の一つかもしれません。

 フンパーディィンク 『ヘンゼルとグレーテル』



セットの美しさでぴか一なのはこの演目。あまりに映像のりがいいのでびっくりしました。
特に前半。サンドマンが出てくるあたりは本当にうっとりします。
ただ後半、魔女が出てきてからも映像のりがすごくて、これもこれでびっくり。
魔女の腕のたるみとか、こわいくらいです。
(ちなみにこれはラングリッジに施された特殊メイク)。
万人受けはしないかもしれませんが、やはり、私はこの公演、好き。
メトのチャレンジ精神を感じる。

 ヴェルディ 『マクベス』



やっぱり演奏のテンションが高く、観ていてあきない。
最後になりましたが、このEMIのDVDシリーズで賞賛すべき点としては、
割と音声が上手く録音かつ再現されていること。
ただし、テレビについてくるスピーカーなんかで小さなボリュームで聴くのではなく、
できればきちんとしたスピーカーで、オペラハウスで聴いているときと同じくらいにまで
音量をあげないと、良さが聴こえません。
この『マクベス』で言うと、夫人が手紙を読んでいる場面で、
バックに流れている弦の音がきちんと聴こえるくらい、です。

この公演、細かいことを抜きにすれば、私はあまり不満はないのですが、
一点残念だったのは、撮影と編集のコンビネーションが悪いのか、
椅子や人が舞台からはけたり、といった、転換の場面がなぜだかたくさん画面に映りこんでいること。
オペラハウスで観たときは全く気にならなかったのに、なぜだかこのDVDではとっても邪魔に感じました。
演出家のノーブルは、やっぱり舞台の人なのか、このほかにも、
天井からふってくるわっかとか、緑の液体、舞台にせりだしてくる球体といったセットが、
映像上では若干チープに感じられたのも残念。
これも、オペラハウスでは、もうちょっと違って見え、
不思議で神秘的な効果を出すことに成功していたのですが、、。
『ヘンゼルとグレーテル』のリチャード・ジョーンズの演出が舞台でも映像でも視覚的に成功しているのに対し、
『マクベス』の方は映像化された時点で、舞台でのヴィジュアル面での良さがやや
消えてしまった個所がありました。

ただ、全体の出来としてはやはり4作品中ぴか一で、
繰り返しの鑑賞に耐えられる素晴らしい公演の記録となっています。

EMIによる、当DVDについてのサイトはこちら
映像の抜粋等も観れます。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ええええええ!!!ホント!!! (今泉澄)
2008-09-24 14:58:42
10月のテレビ予定表を見ていたら
ビックリですわ。
NHKハイビジョンでMETライブビューイングが
10月6日から9日まで放送されます!

6日が「セビリアの理髪師」で、これは2007年のものかな。(フローレス)

これ以降、昨シーズンで
7日「ロメオとジュリエット」
8日「マクベス」
9日「ヘンゼルとグレーテル」
となっています。
5.1チャンネルです。


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訂正(追加) (今泉澄)
2008-09-24 17:07:28
10日の「連隊の娘」を書き忘れました...トホホ




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な、なぬッ? ( F)
2008-09-25 13:19:31
幕間の爆笑コント無しですかぁ~
初心者にとってはある意味、舞台以上に楽しかったのに残念です。

『ヘンゼルとグレーテル』は序曲だけは知ってます(笑)
けっこう好みなので、アバンギャルドな公演も観てみたいです。
でもそれよりまずは、エバーグリーンたる『マクベス』でしょうか。
今泉さん↑がお知らせしてくれた放送も楽しみです。

返信する
いつもありがとうございます!/二本セットはいかがでしょう? (Madokakip)
2008-09-25 14:09:36
頂いた順に。

 今泉澄 さん、

いつも貴重な情報、ありがとうございます。
特に日本での上映及び放送予定というのは、
私が全く情報を追いきれていないため、
こうしてコメント欄でいただけると、
当ブログを読んでくださっている皆様とも共有できるので、
本当にありがたいことです。
このブログは、このコメント欄が一番の自慢の私です。
セビリアは、そうです、一つ前のシーズンのものですね。
とても演出が面白くて、舞台も良く出来ていますので、
印象に残っている演目の一つです。
このセビリア、そして、連隊、ロミジュリは、DVD発売にはならない演目なので、
必見ですね!

 Fさん、

そうなんですよー。なんでルイゾッティのインタビューが入ってないのだー?!ですよ。
あれは、もうボエームの中の白眉のシーンだったんですが、、。
EMIは何を考えてるんでしょうね、、みすみすあんな面白い映像を封印するとは。
いや、あまりに面白いから封印し、後で取り出してきて価値を高めようという気か?
(しかし、どんな場で、、?)

ヘンゼル、すでに好みでいらっしゃるということであれば、ぜひ!!!
英語で歌われるのですが、それほど違和感もないですし、
演出がとにかくふるっていて、メルヘン的美しさとグロテスクさの混ざり具合がなんともいえない奇傑作です。
かわいいお花~と思って近寄ったら、いきなり食虫植物のように、ぱくっ!と食いついてくるような、そんなイメージです。
わかりにくくてすみません(笑)。


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ちょっと反省 (今泉澄)
2008-09-25 18:36:02
まだ、日本版のDVDも出ていないのに
年2回の番組改正で、NHKからのビックなプレゼント。

考えてみると、
「METライブビューイング」を見たくても
住んでいる地域によっては、
まったく見ることが不可能な人も大勢いると思う。
それを考えれば、すごい贈り物ですわ。

今シーズン、「朝の10時からオペラかよぉ~~」なんて不満は
絶対口にしないようにします....ハイ。

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とはいえ、、 (Madokakip)
2008-09-26 14:29:19
 今泉澄 さん、

そうですね、確かに観れるだけでもありがたいことなのかもしれませんが、
10時はやっぱり早い!

NHKが毎シーズン、フォローの放送を入れてくれているのは、
本当に喜ばしいことですね。
やっぱりDVDを買うというのは、テレビを見るほど気楽にはいかないので、
とってもいいことです!ぜひ、続行していただきたい!
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