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蝶の標本と父の命日

2007-11-05 09:45:41 | memory 幼年期
5年前の新月の日、父は69歳で他界した。
今日は命日。

父が手作りした美しい標本が今も実家に飾られている。
生前、父は蝶を採るのが恐ろしく巧かった。

1970年代のとある日曜日。
私と姉は父に連れられて、“とんがり山”と呼ばれる
絵に描いたように頂がとんがった山に登った。
姉妹おそろいの檸檬色のホットパンツに、捕虫網を携えて。
登山好きの父は急勾配をものともせずすたこら進んだが
小学生の私は、最初にはしゃいでいただけに途中で息が上がった。

頂上で頬ばった母のおにぎりは格別だった。

ふと気がつくと、父がまるで踊るように捕虫網を振りまわしていた。
その周囲には夥しい数の蝶・蝶・蝶・蝶・蝶・・・・。

群れなし乱舞する無数のオオムラサキの神々しい光景と
その渦中で嬉々として捕虫網を操る父の姿が、
今も脳裏に鮮明に焼きついている。

父はそこで捕獲した2頭を傷つけぬよう大切に持ち帰り
自宅で器用に標本に仕上げた。
胸にピンを挿された蝶は至近で観察すると、いささか残酷でグロテスクだった。
が、歳月を経た今も、色褪せたとはいえ、あの神々しいオオムラサキは健在だ。

もう少し大きくなってから「生まれ変わったら何になりたい?」と
父に尋ねたことがある。「んー…」と考え込む父に
「蝶は?」と云うと、苦笑いを浮かべて即答した。
「蝶は勘弁」

今夏、はっとするような黒い蝶に何度か遇った。
黒い蝶は、その場の時間を止めるような気がする。
同じ頃、17歳のときに読んだまま実家に置きっぱなしていた
三島由紀夫の『ラディゲの死』をふと読み返したくなり、
実家にもうないというので買い直したら、
新潮社文庫特有のオレンジ背表紙はそのままながら
表紙に新しくクロアゲハがデザインされていた。
ふと、時間が止まったような気がした。

父は何に生まれ変わるんだろうか?
黒い蝶に遇う度、ふとそんなことを思った。

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東京デザイナーズウィーク

2007-11-05 02:31:07 | Art
日曜夜は、最終日の「東京デザイナーズウィーク」を
ライターのRayさんと一緒に2時間ほど見て回った。
本丸の神宮外苑中央会場の中だけだったせいもあり、
どこのブースも意外とこぢんまりした雰囲気。
企業やメーカーだけでなく、学生や個人出展も多く
トーンもまちまちで、なんだか美大の学園祭みたいだった。

19時からはステージに大沢伸一が登場し、トムトムクラブなど80年代ニューウェーブを
がんがんかけ始め、辺りは一段となぞの学際ムードに。
巨大スクリーンのVJなめに臨めるライトアップされた絵画館も、なんだかいつもよりキッチュで。。

そんな中、美大や専門学校等の学生さんたちが屋外展示していた
エコロジカルで独創的なエクステリアオブジェ(?)が予想外に面白かった。
昔、大学の工房とかでよく見た風景が蘇って 少々面映ゆかったが。

シリコンで創った有機的なチェアユニット、
座ると座部が下がって孔雀みたいにアクリルミラーの羽が八方に広がる
“ドラアアグクイーンチェア”(勝手に命名)
ペットボトルの素材でできたシマウマ型の巨大なダストボックス etc.

なかには荒削りでプリミティブな作品もあった。
が、その一方、プロトタイプとして非常に完成度が高く
クレバーでアイデア豊かな作品もあり、いろんな意味で興味深かった。

中でも、東京理科大建築科の学生さんたちの作品は
そのままプロダクトとしても、アートとしても成り立つものが目立った。
私が特に気に入ったのは、壊れた2つの金属椅子のパーツを組み合わせ、
極太の紅い毛糸で縫い合わせてあるチャーミングな白いチェア。
椅子というプロダクトの物語を背負った壊れた椅子と椅子が
支えあって新しい物語を紡ぎだしている。それはロマンティックですらあった。
ひょっとしてこれはフリークな純愛のメタファー(?)と勝手に解釈。
デザイン的にも秀逸で、聞けばベルギーから来たビジターも絶賛していたという。

残念ながら、うっかり愛用のEOS kissを忘れたので、撮影できなかったのが心残り。
冬には、近所の代々木上原でグループ展をするそう。それにはぜひ足を運びたい。


そうそう、椅子といえば、最近ニキはイームズチェアがいたくお気に入り。
脚がくるくる回るタイプなので、以前は載せてもすぐに飛び退いていたのに。
猫は、自分のお気に入りのポジションが2週間~1カ月サイクル位で入れ替わる。
ここしばらくは、ニキ的にイームズモードというわけらしい。その心は不明だが。

クッション部分で爪とぎしようとしていたため、
カバーしようとバスタオルを敷きかけて、はたと思い出した。。
夏に『モダンインテリア』の取材で今田耕司にインタビューした際
「風呂上りには湿っぽいからバルセロナ・チェアにバスタオル敷くねん」と
言っていたことを。。
バスタオル敷きのデザイナーズチェアって、やっぱりさむい。。
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