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映画『ゆるし』

2024年03月29日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

宗教二世の問題を扱った映画。

新興宗教「光の塔」の信者である松田恵の娘・16歳のすずは、
教団の教義に反する(競争の禁止)からと
学校のマラソン大会に出場拒否し、
クラスの学友からのいじめにあう。
唯一理解者のクリスチャンの友達とも、
誕生カードを母親に破られたことで(誕生日の祝いは、異教の習慣と禁止)
気まずい関係になってしまう。


学校で教団への献金袋を盗まれたすずは、
献金しないと救われないと半狂乱になる母親から
ベルトでぶたれる折檻を受け、
お金を借りるため祖母のもとを訪れる。
虐待の事実を知った祖父母はすずを保護するが、
母親が乗り込んで来て、
取り返されてしまう。


更にいじめで犯されたすずは、
「汚れている」と母親から拒絶され、
を考える・・・

宗教二世の虐待の実態を
娘・母・祖母の三世代の視点から描いた人間ドラマ。
自身も新興宗教で洗脳された過去を持つ平田うらら監督が、
ある宗教二世が残した遺書に感化されて製作を決意し、
自ら監督・脚本・主演を務めて完成させたという。

実は、この映画、59分しかない。
それでは正規の入場料を取るのに
気が引けたのか、
上映後、トークショーが付く。
私が鑑賞した時は、
平田監督と公認心理士の方で、
二人共新興宗教から脱会し、
洗脳を解かれた過去を持つ。
その経験談を交えてのトークは興味深かった。

しかし、映画の出来栄えは、
脚本・演出・演技・音楽全てにおいて、
料金を取って、映画館で上映するレベルには達していない
酷なようだが、映画という媒体の品質の維持の観点から、
そう断定せざるを得ない。
全体的にチープな映像で、
制作費はいくらだったのだろう、
と思っていたら、
監督自ら179万円だとあかしてくれた。
監督は若干24歳で、
大学4年生の時、作ったという。
映画製作経験のない女性の作品。
つまり、自主映画
従って、入場料は
この運動に対するカンパという意味で支払われると考えたらよい。

ただ、新興宗教と家族の問題は、
これほど巷間をにぎわせているにもかかわらず、
テレビも映画業界も取り上げる気配を見せない。
宗教団体からの反駁を恐れてのことだとしたら、情けない。
本作でも、モデルは明らかに「ものみの塔」(エホバの証人)なのに、
忖度が目立つ。
さすがに聖書は聖書のままだが、
引用聖句は、明らかに伏せている。

エホバの証人・・・
1870年代にアメリカ合衆国で
チャールズ・テイズ・ラッセルによって設立された
キリスト教系の宗教団体。
独特の聖書解釈をしており、
正統的なキリスト教からは、異端とされる。
国によっては、カルト集団に分類されている。
子供を伴っての訪問伝道、
兵役拒否や輸血拒否、
学校での剣道授業の拒否などで
世間を騒がせる。
厳格な戒律があり、
若年者へのムチやベルトでの折檻も問題視される。

監督自身も圧迫を受けたことを語っていたが、
様々な困難の中、
足りない予算を工面して、
自分で脚本を書き、自分で監督し、自分で出演して、
映画という形で世に残し、
拡散しようとする
その心意気は評価したい。

アップリンク吉祥寺で上映中。

この後、大阪や地方での上映会を開催するという。

なお、ほぼ同じ時期に
未成年が引き起こした殺人事件と
被害者遺族との葛藤描く
「赦し -ゆるし- 」という映画も公開されているので、
間違えないように。

私は、間違えた。

 



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