[ドラマ紹介]
イギリスのとある町に住む
13歳の少年ジェイミーが、
同じ中学校に通う少女ケイティを殺害した容疑で逮捕される。
ジェイミーは犯行を否定する。
学校では生徒たちの間に動揺が広がり、
ジェイミーの家族・ミラー家は世間の批判にさらされる。
逮捕当日、3日後、7カ月後、13カ月後と、
4つのエピソードによって語られるが、
各エピソードごとに
ワンカットで撮影されているのがユニーク。
つまり、通算3時間48分が4カットだけで構成されている。
第1話は、
早朝、ジェイミーの自宅に警察隊が突入し、
ジェイミーを逮捕して、署に連行、
尋問を始める。
自宅から警察への車内、
警察での尋問と、
ワンカットの映像が緊迫感をもって語られる。
第2話は、事件3日後の学校に
尋問した警部たちが訪ね、
生徒たちから情報を取ろうとする。
カメラは学校内を縦横無尽に移動し、
ワンカットで生徒たちとの会話を描く。
生徒の中には、警部の息子もいる。
警報の誤作動で、
生徒がテニスコートに移動する混乱の中、
カメラはドローンによって
空中に飛翔し、
殺人の現場まで飛ぶ。
そこにジェイミーの父親が花束を持って現れる。
第3話は、ジェイミーが拘束されている少年拘置所を
訪れた心理療法士とジェイミーの対決を描く。
一室の中での心理療法士とジェイミーの対話を
カメラが二人の周囲を巡りながら
ワンカットで撮影する。
第4話は、ミラー家の自家用車に
「NOUSE」(小児性犯罪者)と書かれたのを消すため、
父母と姉の3人でホームセンターに行き、
ペンキを買うが、
その途中、ジェイミーから容疑を認めるという電話が入り、
家族は悲嘆にくれる。
家からホームセンターへの車での移動、また家へと
ワンカットで描写する。
各エピソードは50分から60分かかり、
どんな綿密なリハーサルをしたのだろうと想像する。
特に学校の場面は人数も多く、
すれちがうたびに
対象となる人物が変わるが、
相当準備しないと、出来るものではない。
通常、ワンカット撮影では、
壁が一瞬視野を狭めるなどして、
カットをしたものを
そうでないように見せるテクニックが存在するが、
「アドレセンス」の撮影監督によれば、
本作品ではそのようなことは一切行われておらず、
正真正銘のワンカット撮影がされているという。
撮影監督は語る。
「計画に多くの時間を割きました。
使用するエリアの地図を作り、
その中でカメラがどう動くかを検討し、
私とキャストで、
まるでダンスのようにリハーサルをしました。
その前からフィル(監督)と私は
ロケ地を探していて、
それが決まったら、ルートをプロットし、
パズルのピースをすべて納得がいくまで動かしたんです」
話が展開するにつれて、
事件の背景が明らかになり、
ジェイミーがケイティによって
侮辱されていた事実が現れて来る。
二人はSNSを通じて接点があり、
ケイティは、ジェイミーを
「インセル」だと絵文字で表現していた。
インセルは非自発的な独身者を表し、
「非モテ」「弱者」を自覚する男性たちを意味し、
女性嫌悪や性差別的暴力と深く繋がっている。
ジェイミーは、自分のことを「醜い」と思っており、
それを指摘されたことが事件の背景にある。
未熟な少年ゆえの犯行。
「アドレセンス」とは、思春期のこと。
無実を信じていた父母が
ジェイミーからの電話で
事実を知った後の父母の悲嘆が悲しい。
「私たちは、育て方を間違えたのではないか」との煩悶。
父親役のスティーヴン・グレアムが
素晴らしい演技を見せる。
監督はフィリップ・バランティーニ。
既にワンカット撮影では実績がある。
「ボイリング・ポイント/沸騰」(2021)がそれ。
あるレストランのクリスマスの夜の
厨房での混乱を90分にわたり、
1カットで描写した。
スティーヴン・グレアムは
この映画で主役のシェフを演じている。
ジェイミーを演じたのは、
約500人の中からオーディションで選ばれた
新星オーウェン・クーパー。
第2話での長い対話を見事に乗り切った。
すでに今後複数の作品が決まっており、
「嵐が丘」で、若きヒースクリフを演じる予定だという。
配信から11日で視聴回数6630万回を記録し、
Netflix のリミテッド・シリーズで歴代1位を獲得した。
世界71カ国でストリーミング1位となり、
グローバルランキングで3週連続1位を獲得し、
93の国と地域でトップ10を獲得した。
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