月のmailbox

詩或いは雑記等/小林貞秋発信。

詩-Space フラグメント

2008-03-06 22:44:55 | 
      フラグメント


           

海を眼前に絶壁、数キロメートルもある高さゆえに見下ろす高所恐怖症の目には、彼方へと流れる風に乗り見る夢のような眺めとしか映らない。そうして考えたりなどしている。多分、壁を容易に抜ける透明なひとというのは、切れた凧のように何処にも戻ることなく、ただ遠ざかるのみなのであろう、初めからそこにいたことなどないかのように、と。


                 *


ゲームなどというものではない、単線を行く列車の旅なのだが、真上に時限爆弾つきの雷という文字が浮いていて、離れない。不参加組というのもあるが、それは好んでそちらに入っているわけでもない。初めは誰もそれに気づかずにいて、だんだんと顔が見えてきたりするので、しっくりとするカードの組み合わせを、おそらく最後まで追いに追う。


                 *


なぜにあの向き、あの色、形、感情なのか。この球上取り巻く総ての地カラコロ音立て、巡るまでもなく、あれ脳内深くに沈んで追い払おうにも鍵見つからず、見えてくるのは、草、樹、薙ぎ倒して重戦車のように地鳴り立てる、巨大な褐色の塊。開いたこちらの扉抜けそうな気配に波乱の兆しも、あの雲の流れに読めると、見立てるとか。


                  *


そこもまた、上は天、下は地、ギリギリと引かれた一線が横に見えるような、雑、全部放り捨てられて、それは撃つものも引きずるものもない、それこそがとびきりの眺めだと、上下の色の優しさよと、西に数億、東に数億キロ置き前方見る眼は、原人めいて、雑な、雑すぎるものの生え立つ幻景、新たに噛み捨てている、束の間。


                  *


青の地では青の罠受け、黄の地では黄の手が犯す。彼の地に行けばそこだけの眺め見え、圏外限りなく離れれば、空間で光受けつつその顔見えないわれらのこの星、見えていながら追えば道分かれ、足ひとつ置くに場所ない地に、追いうちかけて暴発の気配あり、この集団何処に向かうのか、知られた試しなく、また問いかけるまでもない、とも。


                  *



ああ、とうに数万もの日々、似たような道、動きつづける繰り返しに、足、自律の気失せ、前に進むのはご免蒙りたいと、跳ねている、跳ねている、跳ねている、天まで届けと風船気分、浮かぶイメージ描いて、暫しこの変調スタイルに決めたかに見える、わたしであるようなあのひとそのひとでもあるような、順番待ちのひと。


                  *


あそこに指、向ける。その指、悪い指、むかし圧された切ない指、風切りたがる指、でもいやである、いやなばかりではない、坂道の先見えない処まで遠ざかりたい訳あると、指、恐れだしたりなどするのは、あそこのあれ、なぜにあれほど形ととのうのか、なぜにあの角度からの光に強いのか、偶像、隙なく敷きつめられるという。


                  *


限界、というのが初めからそこにあるのに、それを知ることのできない無能ゆえの、哀しさ、そう言う者あり、いやいやそうではない、限界云々のことではない、と湖面から顔出す溺れた仙人めいたのが発して、先に読めるものがある、読めるものがある、と強調する。



                    from Six Poems No.11 2006


 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする