偏愛する
1
どうしても
眼はあちら側を向いて
何故に総ては色をまとうのか
不思議なほどに
空白がそこを抜けて
見えるもの
総てを一気に
呑みこんでしまおうというのである
そんな危うい場所に
置かれてみれば
ああ消える
消える
色を奪われてしまう
その切なさは強い思いと
結びつかずにはいない
2
なぜならば
根が曖昧でありながら
不似合いな拳を
突き出してくるからである
天と地の分かれ目に
確かな一線探るみたいに
それはあるのだと
青い声を上げる
時は前にも斜めにも
動いていない
その根は天に浮いている
かもしれないのです
その声の哀愁
3
それは見えていながら
見えないもののような
永劫ひらいているもののよう
でありながら
既に閉じているもののような
そうしてどこまでも
薄ぼんやりとしたものなんだろうと
まるで
百万年前に逝った母みたいに
どの階段に足かけて
呼び覚ませば良いのか分からない
あちらに見える
温もりただよう記憶とどめ得るのは
軽快さ何者にも負けない
蟻でもなければ
言葉話せぬ象というわけではない
変種とも思われ
傲慢極まりない蛙のごときもの
とも思われ
哀しいほどに美しすぎる
とも思われ
それは見えていながら
見えないもののような
from Six Poems No.12 2007
1
どうしても
眼はあちら側を向いて
何故に総ては色をまとうのか
不思議なほどに
空白がそこを抜けて
見えるもの
総てを一気に
呑みこんでしまおうというのである
そんな危うい場所に
置かれてみれば
ああ消える
消える
色を奪われてしまう
その切なさは強い思いと
結びつかずにはいない
2
なぜならば
根が曖昧でありながら
不似合いな拳を
突き出してくるからである
天と地の分かれ目に
確かな一線探るみたいに
それはあるのだと
青い声を上げる
時は前にも斜めにも
動いていない
その根は天に浮いている
かもしれないのです
その声の哀愁
3
それは見えていながら
見えないもののような
永劫ひらいているもののよう
でありながら
既に閉じているもののような
そうしてどこまでも
薄ぼんやりとしたものなんだろうと
まるで
百万年前に逝った母みたいに
どの階段に足かけて
呼び覚ませば良いのか分からない
あちらに見える
温もりただよう記憶とどめ得るのは
軽快さ何者にも負けない
蟻でもなければ
言葉話せぬ象というわけではない
変種とも思われ
傲慢極まりない蛙のごときもの
とも思われ
哀しいほどに美しすぎる
とも思われ
それは見えていながら
見えないもののような
from Six Poems No.12 2007