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月のmailbox

詩或いは雑記等/小林貞秋発信。

詩-Space  笑います

2009-12-16 22:36:00 | 



          うっすらと
          訳が見える
          その縁辺りから
          やおら
          弾みをつけて
          お許しいただければ
          笑います
          あそこの黄薔薇
          映す窓
          引き込みます
          そこから見えるあちらの
          剥げて斑模様の
          青い壁
          加えます
          逃げ出しそうな空も
          轟音のような
          笑いに巻き込んで
          お許しいただければ
          共に
          共に
          笑わせていただきます
          外行く黒いコートの
          幻の我が父
          寄り添う可憐な我が母
          向かわせます
          ただ
          ただ
          ただ
          笑いに
          笑おうと
          うっすらと見える訳の縁
          縁辺りから
          丸ごと
          轟音に
          染めこみます


                        from Six Poems No.9 2004
      

詩-Space  黄金の時

2009-12-12 22:45:34 | 

                             地面に
                古びた釘で
        七歳が
        無心で描いている円
        外へ外へと
        ひろがって
        視界を越え
        その向こうの
        未知の日々さえ
        越えてしまいそうに
        埋め込まれていく
                             その未知の
                日々のなかには
        透明な硝子窓
        向こうの景色には
        港だの
        基地
        空から垂れた糸の先
        ひらひら揺れる
        紙に描かれて
        いつも過ぎているのは
        黄金の時
        いつまでも
        どこまでも
        黄金の
        時


                        from Six Poems No.7 2003




        
       

詩-Space ムーヴメント

2009-12-08 22:32:43 | 



      何故かは分からないが
      泥棒の入り易い家にいる
      壁に赤ら顔の
      ベートーヴェン
      睨んでいるのに効きめがない
      さわやかなひぴきと共に
      侵入なさいます
      ニラメッコなどしない
      見て見ぬふりして
      口笛
      なつかしのメロディ
      大根割り
      泥棒の影をスケッチする
      ひどく長い尾で紙に
      収まらず
      猫に噛み切ってもらう
      画面の上に見えるのだ
      それら


                       December 1990     

詩-Space  不能エリア

2009-12-05 22:39:52 | 



      猫でなければ
      大型の亀のような
      なにかがそばにいて
      たしかにこちらを見るのだ
      刺すような光を見せたり
      遠いのどかな奥地の
      水のきらめきを思わせたりする
      邪魔ならば追いたてる
      見えないところに
      サラバ
      食べるもの
      あとで差し上げるから
      などと良心胸底に見せてから
      首の向きを変え
      出掛ける
      あまりに明るすぎて
      盲目状態になる
      不能
      と名づけられた
      マーケットエリア
      ならば
      倍の明るさで
      呑み込んでしまえとばかりに
      できるものなら
      画策したいものだが
      見ればあちらで
      天空へと向かう
      太い樹木のような
      水晶柱が
      ガツン
      ガツン
      砕かれ打ち倒されそうな気配
      立ち止まる
      見上げる


                      from Six Poems No.8 2004
      
      

詩-Space  鉄塔

2009-12-04 22:40:45 | 




                         そう
                 そう
            そう
      そう
      とあのひとたちの言うがままに
      並べているうちに
      「そ」の前に
      「う」がきて
                          うそ
                   うそ
             うそ
      うそ
      などに変化する
      その「うそ」を乾かし
      甘味を加え
      白い料理に仕立てて
      海の見える窓辺でゆるやかに
      スプーンを口に
      はこびながら
                           そうなの
                    そうなの
              そうなの
      そうなの
      そこに見える
      あの鉄塔は
      まぼろしなどではない
      現にそこに見えているもの
      見えているもの
      エメラルド色に塗られて
      あざやかに
      屹り立っているもの
      などとあのひとたちに言われても
      あやしい
               あやしい
                        あやしい
      最後に見えるもの
      最後に見たいものが
      現われないもの
      現われないものと
      食い下がり
                      無を見るように
              見下ろす
      足元


                        from Six Poems No.6 2003   




詩-Space  絶滅

2009-12-01 22:46:23 | 



        浅いゆめのなか
        ほんのり
        ほんのりと
        地の上で
        ゆめのように
        なんじゅうまんねんも
        生きつづけ
        途絶えた
        生きものの
                     浮き立つ
              すがたを
        とろとろ
        とろとろと
        追い
        とろとろと
        なんじゅうまんねんも
        生き長らえ
        死滅していった
        生きもの
        生きものの  
                        形なく
               浮かび立つ
        すがたに
        そのさだめの
        重なる
        あなたのことを
        とろとろ
        とろとろと
        重ね
        追い
                        宇宙的
                ゆめ時間の
        なかの
        あなたのことを
        とろとろ
        とろとろと
                        とろとろ
                とろとろ
        慰撫する


                       from Sixs Poems No.2 2000   

詩-Space  ゆるせない

2009-11-30 22:18:26 | 
        



        ここに
        このばしょに
        とどめたいもの
        なのに
        あれ
                あれなんなの
        なんなの
        なに
        なんなの
        しらぬまに
        はなれてる
        まるで
        まるで
                    わるいゆめ
              のように
        あるべきばょから
        はなれ
        はなれて
        もう
        もう
        もう
        もどらない
        などということが
        あるなんて
        のめない
               のめない
                      のめない
        のみたくない
        どうしても
        なんと
        しても
        ここ
        ここ
        ここに
        もっと
        もっと
        もっと
        さきまでここに
        なければ
        ゆるせる
        わけ
        ない

                     from Six Poems No.1 2000  

詩-Space 追ってもこない

2009-11-27 22:49:49 | 
                          拡大
               されすぎた
       絵模様は
       あのぶぶん
       その細部まで
       見えすぎるほどに
       見え
       眼前を
       おおうばかりだが
       あぶない
       あぶない
       見えている
       どれもが
                       ふんわり
               ふんわか
       そよぐ風の
       やわらかな
       撹拌に
       揉み解されて
       はるかこちら
       こちらの方に
       遠退いて
       見れば
       至近の
                        避けようなく
                見える
       細部が
       眼を
       芯を
       じんじん
       じんじん
       炙りたて
       じんじん
       じんじん
       焼き上げもする
       細部が
       ぶらん
                    ぶらん
       ぶらん
                    ぶらん
       軽やかに
       ゆれる
       枯れた蔓みたいに
       しがみつきも
       しない
       追っても
       こない

                                2001          

詩-Space  告白

2009-11-26 22:52:12 | 


          むかしあいした者共が
          壁をかすかに引っ掻いて
         シャラシャラ
         現われる 
         なつかしげな色
         やわらかな光沢帯びて

         だれに話しても分からない
         あのことはあちらで
         そんなふうでその先が
         まるで見えなくて
         とても遠くで
         切り裂かれていて
         キャアアアア
         あのことはあちらで
         キャアアアア
         とても遠くで

         手の指
         むかしの動きを覚えていて 
         あたりの様子を少し乱すと
         刷り込まれた習性のように
         通路を走り抜け
         あのkeyをたたき
         甦りを果たしそうだ

         フィールドには
         夜も昼も見えない
         半世紀ぶり
         顔を合わせる
         ビスケットのような
         瓦礫がつらなり
         カサカサ
         踏むと音がする
         「そのひと」に
         事の次第を打ち明ける


                            October 1991      


詩-Space  壁

2009-11-22 23:00:33 | 
       
       実のところを言えば
       それらの壁
       おそらくはパンでできている
       ナイフで抉り
       味を愉しめるのにちがいない
       触れることなく長いこと
       ただ眺めていると
       石でできている
       などとは思えなくなるのだ
       時空を超えて
       それは立ちはだかるもの
       のように思われている
       困惑の大元
       それが現われた日の
       空の色など知らないのである
       それにまたなぜに
       最後まで見えるはずもない
       そのような無情の謎が
       地の上に仕掛けられるのか

                             May 1995
                           
       




詩-Space  雨の音

2009-11-21 23:09:47 | 
      窓をひらくと
      そこに
      太古のけぶる密林が
      見えてくる
      ようである
      しめやかに降る音が
      きこえる
      雨
      の朝
      既に亡いひとが
      未だいる日々の
      なかにいるようにも
      感じられる

                    September 1994

詩-Space   どんなことにもおどろかない

2009-11-15 22:42:13 | 


人が当然予想するような道をこちらは行かない、辿らない。そういう方針なのだそうである。原理的に、などという分かりにくい言い方を持ちだして、なぜならば面白みを味わうためには、先ずなんにしてもぎりぎりまで外れた方角にPOUWWNと、弾け飛んでしまうことなのだという。なるほどなるほど、飛んでいくことがお好きなのだということは、良く分かりました。それに大体のところ、ありふれたことはきらいなんだろうな。どこかしらの与太者連中も、概ねそんなものらしいけれども、そこのところはまた、話がちがう。というのも普通の与太者は、地の上にしがみついている側である。光の帯のような虹の上を、強引に愉しげに歩こうとするようなタイプではない。
などというような、何に結びつこうとするのか分からないたぐいの話を持ちだして、わざと行き先を見えなくしようとするようなこちらの悪い癖。そのあたりで止しておいたほうが良いぜ。と言われ求められても、治るものではないんだな。
地平線は、ほぼ五キロ先にあるものなんだというけれども、見えない向こうの手前あたりに立ってこちらの模様など遠望してみれば、どちらもこちらも同じように見えるし、どのように飾り立てなどしても、全く分かるものではない。そうした位置に年柄年中いるとい分身が、そこには変わらずにいるというもののようです。
何も、些かなるものもその分身なる者に影響を及ぼすことはできない、という厳然たるものがそこにはあるということでありました。なるほどなるほどと、頷くしかないわけですね。それ、じつに真実であるはずのもので。

ふらんすの作家パトリック・モディアノ(1945~)、1972年発表の「パリ環状通り」の中に、「我々は、もうどんなことにも驚かない時代にいきているのだ」の言葉が、見える。そのように、そちらには「驚かない時代」なるものがあるんでしょう。それにもう、過去に例えばホロコースト、あまりにも悲惨なものを見過ぎてしまった我々に、もう驚くものなどありようがないはずであると見る方角も、またあるわけでしょう?
それとは別なこちらの方の分身のように、「驚くこと、驚くもの自体が初めからない」という超現実的認識に深くのめりこむ人の住む地帯というのもあるらしいのでありまして、もうなんとも。

                                2007

詩-Space Daily life

2009-11-10 22:36:02 | 


簡単に折り畳める家に住んで、人の多くいる街に出て行く。手に掴めない湧き立つ音のことは忘れて、絵模様のような風景の中を伝う。次第に風景に溶けて、透明に成り変わっていくように感じる。そうして帰途につくころには、幻想の街にまぎれこんでいたかのように、不思議な思いをもって自身の靴音をきくのだ。いつも、目論見から少しばかり外れて戻る、振り子。異常に高い入口のドアーに、必死で手をかける。

                                1990 

詩=Space    Solution

2009-11-08 22:26:14 | 

         ここから
         出ていくのは
         簡単
         立ち上がれば
         いい
         外にでれば
         いい
         その先に
         なにが
         待ち構えていても
         ぐにゃぐにゃ造りの
         アーケード
         通り抜けるように
         思いのまま
         歩いて
                           どんどん
                   どんどん
         白ずんで
         その色もなくして
         空にもなり
         土にもなり
         家にもなる
         なにものかとなって
         そのままに
         元の姿に
         戻らないことでも
         いい

                           2002

さんぶん詩  ある家主   

2009-11-02 22:49:21 | 


あちらの乗り心地良い手のひらに転びこんでいたら、どのような眼の色をしていたか。残念ながら見えないようにできている。あのお方も、意地の悪いことをする。とはいえ、どちらに転んでも、さして変わりのないこと、やっていたのだろうさ。

この男、盗っ人。ランランと眼を光らせるのである。愚か者のひとつ覚えのように。覗き見厳禁の立札掲げて、妖術使いなどにも変身する。珍奇なことでもない。好き者がいるのである。腹に一物もって透かし見したがるのが。その方面に過剰に熱心なのが。棒切れを真珠に見立てたり、犬の死骸を美味なフルーツのごとく受け入れる奇特な者が。解りにくいことに、血が求めさせるのだとか。その言う魅惑含みの風景の中から、欲掻き立てるもの掠め取ってきて、ゆったりと腰据え、壁面に映しだしたりなどするのである。

ひとりいる隣人、不死のひと。となりの男の正体など知らないし興味もない。空気ほどにも見ていない。こちらは、世界がツンツルテンにできていると信じている。街などというのも、幻影。プラタナスもクルマもレズビアンバーも、言葉からしてありはしない。些かなりとも頭もたげるもの見えたりなどすれば、微かな指の動きひとつをもって、やんわり圧し去ってしまう。真っ平でなければならないのである。かなた、不変の地平線が彼の眼に映る。そのいかにも強情そうな面構え。とはいえ、当人は透明人のつもり。
白い壁を隔てて彼ら、となり合わせ。

                   *

家主がいて、盗っ人と不死のひと。共に白い壁乗り越えにかかるときまって、哀れにも異様なうめき声あげ、引き攣りを起こすのである。

                                1986