ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

映画「恐怖新聞」

2011-08-27 00:10:00 | 映画感想
つらつら書いてたら結構真面目な感想文になりました(一部を除く)。
あとこれすごくネタバレしてます。

原作はつのだじろう。主演は川中島学園の上杉さんこと真司郎くん。競演はシンケンゴールド源ちゃんこと相馬くん。

映像の怖さ(ていうかグロさ)で怖がらせるタイプの映画ではないので、そんなに怖くはなかったです。逆に言うと、絵面の怖さでガンガン攻めて来る系のホラーが好きな人には物足りないかも。
なんとなくですが、つのだじろうが好きな人より、「百鬼夜行抄」が好きな人の方が向いてそうな気がしました。つのだじろうの漫画読んだ事ないけど。

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「恐怖新聞」というガジェットの一番のキモは、「(一見)選択の余地がある(ように見える)」事だと思います。
「読んだら寿命減りますよ」とまず提示しておいて、「でも読まないと怖いことが起きるよ?」「気になるでしょ?」「今困ってるでしょ?読んだら解決方法分かるよ~」と外堀を埋めて、結局「読む」事を選ばざるを得なくなるというか。

なんか恐怖新聞の「恐怖」って、心霊現象の怖さもあるけど、それ以上に究極の選択を迫られて結局は自分で自分の寿命を削ることを選ばされるっていう、心理的に追い詰められる感が怖いし嫌らしいなあ…と。こんなもの思いついたつのだじろうってすごいなと思いました。

そして、この究極の「命の選択」を「恐怖新聞」のキモとするなら、なにげにこの映画はそのキモの部分に焦点が当たっているような。よくよく思い出して見るとこの映画には、しつこいくらいに「命の選択」が提示されてます。

まず第一に鬼形くんの幼少時の体験。悪霊に取り憑かれた(らしい)友人のヒロシくんを見殺しにしてしまったこと。
友人を助けるか、自分が助かる(逃げる)かを迫られて、自分が助かる方を選んでしまった事に彼は罪の意識を感じている。

そしてしずくに降りかかるメリーさんの呪い。
しずくを助けるために寿命を削って「恐怖新聞」を読むのか?自分の命か、しずくの命か、その選択を迫られる。

ここでダメ押しのように、新聞の配達人としてヒロシくんが登場。ここでヒロシとの決着が付いていない事は、実はそんなに重要じゃない気がして来ました(「恐怖新聞」の正体については、最後のシーンでマスターに集約されて持ち越されてるし)。重要なのは、しずくか自分かを選ばされている今の状況が、ヒロシか自分かを選ばされた過去の状況と重なっている事。
そしてヒロシを見殺しにした過去の選択が、鬼形に取って重い十字架になっている。

そしてさらに、しずく(に取り憑いた霊)が「私を見殺しにするのか?」と鬼形に迫る。

そこで鬼形くんが決断する…前に、しずくの選択が提示されます。「僕を助けて」と縋り付いて来たヒロシくんとは反対に、自分よりも鬼形を助けようとするしずく。
つまりしずくは、自分ではなく鬼形の命を選んでいる。

そして鬼形もまた、自分の寿命よりしずくを助ける事を選び、彼女の呪いを解く事に成功するのです…が。

皮肉な事に、この「選択」の結果、鬼形の友人の長森が命を落とすことに。
「友人を見殺しにした」過去を繰り返さないためにしずくを助けたはずが、長森の死によって結局は同じ悲劇が繰り返されてしまった、という皮肉な結末は、よく考えると地味に怖い。

そして、鬼形(と観客)に見えない影の部分でも一つの「命の選択」がなされていた事が最後に明らかに。
長森は自分の命としずくの命を秤にかけ、自分可愛さにしずくを見殺しにしようとしていた。
ついでに、もしも鬼形が自分としずくとどちらを助けるか選択を迫られた場合、選ばれるのはしずくだろうと予想し、それを阻止しようとしていた。
この「選択」は鬼形には結局突きつけられてはいないけれど、結果的には長森の予想通りになったという(しずくの事を聞かれて照れる鬼形くんがすごくかわいいんですが、一方この時の長森くんの心境を考えると…あな恐ろしや)。

結果的には、自分ではなくお互いに相手の命を選んだ鬼形としずくが助かって(鬼形くんの寿命はざっくり削られてますが)、自分が助かるためにしずくの命を犠牲にしようとした長森が命を落とした…という意味では教訓的な終わり方に見えなくもないけど。
究極の命の選択を迫られて、結局は悲劇を選ばされてしまう辺り、実は結構救いのないオチなのが面白い所だなと思いました。

いろいろ未解決に思える所は、上にも書いたように結局マスターに集約されて持ち越されてるだけなんですよね。メリーさんも要はマスターにダシに使われてただけだし(笑)。
なんか色々説明不足(尺が足りないんだろうけど)な所が多いけど、その分色々想像してしまうなあ…。

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あと役者さんの件。源ちゃんもよく「普通にしてればイケメン」と言われてたけど、変な言い方だけど、現実的なイケメンなんですよね。そしてイケメン源ちゃんと比べても、やっぱり上杉さんは、マンガの中から出て来たような顔だと思いました。つのだじろうの描いたマンガではないけど。
中の人の美貌を心ゆくまで堪能出来る映画でした。なんか、たまに眉間にシワ寄せて
  _, ._
( ゚ Д゚)
みたいな顔してたのが印象的。何か表情で色々訴えて来る感じが面白かった。
あとバイト中のカッターシャツ姿で、驚異的な細さと、スタイルと姿勢の良さにビビりました。上杉さんダボダボの学ランだったし、ブリザードはみんなして厚着だから気付かなかった。

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あと、映画館が面白かった。

シネ・ヌーヴォ
http://www.cinenouveau.com/index.html

下町のちょっと分かりにくい所に立ってるミニシアターなんですが、途中の案内看板とか入り口の装飾とかが、手作りっぽいのにやけにかっこいい。
Wikiによると「維新派」という劇団が内装を手がけているそうなので、看板etc.もそうなんでしょう。
ちょっと退廃的&耽美?な感じなので好き嫌いは別れるかもですが、あのセンスただ者ではない。
「恐怖新聞」が上映されるのはシネ・ヌーヴォXという新しいスクリーンで、質素だけど小奇麗で中々快適。そして意外と音が良い(←これが一番言いたかった)。

鬼形くんが頭痛に苦しむシーンが度々出てくるんですが、その時に「キーーーーン」っていう耳鳴りみたいな音が鳴ってて。それがサラウンドに響き渡るもんでこっちまで頭痛くなりそうで、中々臨場感がありました(笑)。
その他ホラー独特の「ゴゴゴゴゴ」とか「どぉぉぉぉん」みたいな音がいちいち腹に響くので段々楽しくなって来る。私ホラー映画を映画館で観たの初めてだったんですけ、ホラーは音を楽しむために映画館で観るんだとわかりました。


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既にDVD売ってるしレンタルもしてるっぽいけど、あと1週間シネ・ヌーヴォでやってるので、お近くの方は出来ればあの雰囲気を体感して欲しいです(笑)。

ちなみに百鬼夜行抄はこれ。


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