ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

“道化師”を見て浮かんだポエムのような何か~高橋大輔新FS~

2012-10-14 22:13:00 | 日記
「道化師は私なのだ。私たち誰もが金ぴか衣裳をつけた道化師なのだ。誰かがふと私たちを見かけたら、計り知れぬ憐れみの情によって心の奥底までゆさぶられるだろう…」
(ジョルジュ・ルオー)

いろいろあった先週末。
JOにて初めてお披露目されました、大ちゃんの今シーズンのFSは、歌劇「道化師」。久しぶりのクラッシック。あと、オペラの曲って今までありましたっけ?少なくとも私は初めて見たと思います。
そして見た感想。
白状すると、実は私最初ちょっとこのプログラムが…というより、音楽がなかなか掴めませんでした。如何せん、日ごろクラシックと縁が薄いものですから。
ブルースやロカビリーはすっと入って来るのに、正統派のクラシックがダメだとは。所詮私はハイソな芸術とは無縁の女。どんだけ世俗的に出来てるんだ私の耳はとちょっと部屋の隅でいじけたりもしてました。
(そうして見るとチャイコフスキーってメロディがキャッチーで分かりやすいなーと改めて思いました。バイオリン協奏曲とか白鳥とか。あと私ロミジュリのステップの部分の曲大好きなんですよね。角笛(ホルン)の音色高らかに敵に向かっていざ突撃ー!な感じで)

で、音楽にいまいちピンと来ない代わりに、頭に浮かんだのが一枚の絵。

〈青い鼻の道化師〉ルオー
http://www.digiart.cc/257_5546.html

「道化師」つながりというか。
大原美術館で展示されてて何度か生で見た事があるんですが、実は今まで特に興味を持った事はなかったし、作者のルオーについても何も知りませんでした。
でもこの分厚く絵具を塗り重ねた絵の、楽しさや華やかさとは無縁の暗い影の中に浮かび上がる視線だけをこちらに向けた男の横顔のイメージが、大ちゃんの演技にふと重なった訳です。
あー…なんかきっと、こういう感じなんだろうなって。

それで初めて、ルオーというのがどういう画家で、何を想ってこの絵を描いたのかが気になって、それで調べてたどり着いたのが冒頭の言葉という訳です。

ルオーが道化師を主題に描いた絵はこれ1枚ではない…どころか、「道化師の画家」と呼ばれてこんな展覧会が開かれるくらい、道化師やサーカスを題材にした絵を描きまくってる事も初めて知りました。

「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス」展/パナソニック 汐留ミュージアム
http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/12/121006/index.html
(近くでやってたら観に行きたいけど東京なのであきらめます)

***

「道化師は私なのだ。私たち誰もが金ぴか衣裳をつけた道化師なのだ」

みなさんもうご存じかとは思いますが、オペラ「道化師」のあらすじはこんな感じ。

道化師 あらすじ -わかる!オペラ情報館
http://www.geocities.jp/wakaru_opera/pagliacci.html

大ちゃんがこの曲が好きっていうの、なんか分かる気がする。
大ちゃん、人間の心の暗黒面えぐるの得意だもんね(笑)。

上記のリンク先にある「道化師でなくとも、人は皆、何かのために自分の苦悩を押し殺し、世間で振る舞うことをしなければならないことがあるものです」という一文は、そのままルオーの「道化師は私なのだ。私たち誰もが金ぴか衣裳をつけた道化師なのだ」という言葉を解説してくれているようにも感じられます。
道化の衣装の下に隠された狂気・嫉妬・憎悪 etc. それは誰の心にもあるもの。
そして大ちゃんは多分、自分の中にあるそういうドロドロした醜さを受け入れることができるし、そういう醜さを隠し持った他人をも受け入れることができるからこそこういう題材で魂入った演技ができるんだろうなと思います。

***

そんな訳で、このプログラムに於ける私のイメージはルオーで決定。
これからどんな形で深化して行くのか楽しみに、このシーズンを一緒に戦って参りたいと思います。

***

あと一応、競技の事について(偉そうに言える立場じゃないけど)。
JOは去年が去年だったので、この時期まだ仕上がってなくても仕方ない、と大輔ファンは誰もが覚悟して臨んだのではないでしょうか(少なくとも私はそうだった)。
まあお祭り大会だし、去年あんな感じでも最後は辻褄合った事だしと気楽に構えてはいましたが、4回転2回入りのジャンプの予定表見て流石に胃が痛くなりました。この先勝負しようと思ったらこれくらいはやらなきゃ、っていうのは頭では分かってるけど、今迄1回でも心臓に悪かったというのに…。

なんて思ってたのに、フタを開ければ予想外の完成度。
よく見たらジャンプで見た目以上に減点されたりしてるけど、これは去年と同じく、プログラムの中でジャンプを飛ぶタイミングがまだ掴み切れてないのかなーなんて思ってます。あと、ペース配分もまだ手探りなのかも知れないと思える部分もあって、そういう意味ではやっぱり、作り立てのプログラムではあるのかな、と思います。
にも関わらず去年と比べてここまで仕上がってるのは、去年と違ってプログラムを作る前にジャンプの練習がしっかり出来てたのが大きいのかなーなんて。
去年はボルト抜きの手術と術後のリハビリで大変そうでしたもんね(しみじみ)。

そして何より。再建手術から3年、膝のバネと共にかつての力強いジャンプがようやく戻って来た!!という感じで!!すごく嬉しいです!!
エッジのエラーも取られてないし!スピンもレベル取れてるし!

いやもう本当にスピン美しかったですね。
ていうか、スピンに限らず何気ない姿勢が益々きれいになって。

私がファンになった頃、高橋大輔という選手は、バレエやらない選手の代表格みたいな感じでした(笑)。
実際には選手になってからは「練習の一貫として」レッスンを受けたりはしたんでしょうけど、彼の育った境遇を見れば、とても幼少のみぎりからダンスにバレエにという環境ではないですもんね…。
でも今このタイミングで始めたからこそ、「バレエ」というジャンルの踊りの動きの形から入るのではなくて、バレエの歴史の中で培われた身体の使い方というか動きの感覚というか、別のジャンルの踊りにも応用可能な本質的な部分から取り入れる事が出来てるんじゃないかと思うのは素人の考えでしょうか。

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■拍手コメントへのお返事

○2012/10/7 15:26
こんにちは。コメントありがとうございます。
JO(とCaOI)の演技、テレビで見てもステキでした。生で観たらきっともっとすごかっただろうなーと思います。

○2012/10/7 17:11
こんにちは。大ちゃんも最初の手術から3年経って、いよいよ本当に右膝のバネも復活して来たようで、これから益々楽しみですね。
それと同時に、よくぞあの時バンクーバーに間に合わせたものだとしみじみ思います。
娘さんもリハビリは大変だと思いますが(私のようなスポーツと無縁の人間が偉そうに言える事ではありませんが)、大ちゃんのように元気に復帰を果たされます様陰ながらお祈り致します。

○2012/10/14 14:42
こんにちは。はじめまして。
「あの一連の方々」がどこ迄の範囲を指すのかが分からないのですが、私は以前にも書いた通り、4年前の決別はモロゾフ「だけ」が悪い訳ではないと思ってます。
私たちは大ちゃんのファンだから大ちゃんを中心に考えますが、モロゾフはモロゾフの主観で、自分が得をする(と本人は思っている)方向へ行動してるのは分かります(ある意味すごく分かりやすい)。その上で、モロゾフ自身も当初「バンクーバーまでの2年」を大ちゃんのコーチとして過ごす気満々だったのも(その後の言動からして)偽らざる本心だと思うし、今再び大ちゃんと組む事でモロゾフ自身にもプラスになると考えてるのはある意味光栄な事だと思うので、モロゾフを受け入れた大ちゃんの判断にも納得しています。