報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

ロンドン同時爆破事件について①

2005年07月11日 21時13分54秒 | ■対テロ戦争とは
 七日、ロンドンで、同時多発的に爆弾が炸裂した。
 そして世界中のメディアには「アル・カイーダ」の文字がおどった
「犯行声明」もインターネット上に掲載されたようだ。
 しかし、インターネット上の犯行声明で「アル・カイーダ」だと断定できるのだろうか。そんなものが何かの証拠になるのだろうか。

 犯行声明を掲載することなど、犯人でなくてもできる。ひとつの爆弾事件に、複数の違った組織から犯行声明が出されることさえある。人の”手柄”を横取りすることもできるし、責任を他者に擦り付けることもできる。
 アフガニスタンで発生している爆破、銃撃、誘拐の三割は、軍閥によるものだという分析がある。しかし、爆破や襲撃があると、所在不明のタリバーンのスポークスマンが衛星電話で犯行声明を伝えるのが、パターン化している。しかし、のちに軍閥の仕業であることが判明した事件はいくつもある。タリバーンは何にでも声明を出すのか、それとも、タリバーン以外の人物が勝手に声明をだしているのか。真相は闇の中だ。

 ロンドンの同時爆破事件では、まだ「アル・カイーダ」だという証拠はどこにもない時点で、世界中のメディアは「アル・カイーダ」だと印象付けるような報道をしている。いったい、何を持って「アル・カイーダ」の犯行だと確信しているのだろうか。

 世界は、「アル・カイーダ」の存在を、揺るぎない事実として受け取っている。その頂点にオサマ・ビン・ラディンという男が立っているということも。しかし、僕は「アル・カイーダ」なる組織が本当に存在するという証拠など、いまだ見たことがない。オサマ・ビン・ラディンがそのリーダーであるという証拠も。不鮮明な映像と音声のビデオなど、証拠にはならない。そんなものいまや高校生でも作れる。

「アル・カイーダ」のメンバーとされる男が逮捕されたという報道はときおり目にするが、以後その男の消息はぱったりと消える。メディアも後追い取材をしない。
 グアンタナモ収容所も、あまりにも内情が秘匿され、我々にはいったい誰が収監され、そこで何が行われているのか皆目わからない。グアンタナモが問題にされるたびに、メディアは、
「アル・カイーダとタリバーンが収監されているグアンタナモ収容所」
 と表記する。
 世界中の人々の脳裏には「アル・カイーダ」の存在が印象付けられる。あるいは、「16名の無実が判明し釈放」と報じられれば、”残りは「アル・カイーダ」である”と世界は思う。収監されている全員が、市民であったとしてもだ。我々には、一切がわからないのだ。

「アル・カイーダ」など存在しないと言っているのではない。存在を証明する”証拠”を見たことがない、と言っているのだ。我々が触れているのは、漠然とした”根拠”にすぎない。決して”証拠”ではない。

 アメリカがイラク戦争に突入する前に、コリン・パウエル国務長官(当時)は、世界をまわり「大量破壊兵器の存在を証明する”証拠”」を持参してまわった。日本にも来た。小泉首相は「(大量破壊兵器が)あると確信した」と述べ、アメリカのイラク攻撃に賛同し、かつ自衛隊をイラクに派遣した。しかし、ご存知のように、現在に至るまでイラクの大量破壊兵器の存在を証明する一片の証拠も出ていない。
 昨年の9月13日に、パウエル長官は「(イラクの大量破壊兵器の)いかなる備蓄も発見されておらず、われわれが発見することはないだろう」と白状した。彼は、最初から大量破壊兵器などないことを知っていたのだ。
 では、小泉首相はいったいどんな”証拠”をパウエル前長官から示されたのか、ぜひ、お聞きしたいものだ。

 要するに、アメリカが”ある”と言ったものは疑ってはいけない。
 アメリカのすることを邪魔してはいけない。
 そういうことなのだ。
 証拠もへったくれもない世界なのだ。

 いま「アル・カイーダ」が、もし存在しないとしたら、あらゆる前提が崩れてしまう。「アル・カイーダ」という組織は存在しなければならないから、存在しているだけではないのだろうか。
「大量破壊兵器」のように。

 ロンドンの爆破事件で、得をするのはいったい誰だろうか。

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