報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

アウシュビッツ解放60周年で、イラクに言及しない世界の首脳

2005年01月27日 21時18分36秒 | ■イラク関連
 この数日間、アウシュビッツ強制収容所解放60周年を記念して、ポーランド各地やニューヨーク(国連本部)で式典が行われた。
 ワルシャワの式典には、欧米首脳約40人が出席した。
 しかし、誰一人として、現在イラクで行われている虐殺について言及した者はいない。

 24日の国連の特別総会で、アナン事務総長は、
「この記念すべき日は過去の犠牲者だけでなく現在、これからも犠牲者になりうる人のためのものだ。私たちは二度と同じ失敗をしてはならない」
 と訴えた。
 アナン事務総長は、カンボジアやルワンダ、旧ユーゴスラビアでの大量虐殺、スーダンのダルフールでの人道危機については言及したが、アメリカによるイラク市民の虐殺についてはまったく触れていない。

 ブッシュ大統領は、
「ホロコーストの歴史は、邪悪が実在するが、希望が耐え抜くことを示した」
「それは悪の力を思い出させ、悪が存在するところではどこでも悪に対抗する必要性を思い起こさせる。われわれが反ユダヤ主義を目にする時、ともに闘う必要があることが思い起こされる」
 と発言し、すべての米国民に対し、アウシュビッツとホロコーストの犠牲者に敬意を払うことを求めた。

 米軍によるファルージャでの徹底した破壊と殺戮は「悪に対抗する必要性」として許されるようだ。そして「半ユダヤ主義」のイスラム教徒であるイラク市民の犠牲者には、「敬意」を払う必要はないということなのだろう。

 イラクでは大勢の市民が犠牲となっている真っ最中だ。
 世界の首脳は、そろって健忘症にでも罹っているのだろうか。

 世界の首脳が「二度とおなじ失敗をしてはならない」と誓うなら、いままさにできることが目の前にあるではないか。