laisser faire,laisser passer

人生は壮大なヒマつぶし。
楽しく気楽につぶして生きてます。

ずっとみていたい

2012-11-30 | kabuki en dehors de Tokio

南座顔見世初日。
夜の部の仁左衛門の勘平と勘九郎の船弁慶。
この二つだけで京都まで来たかいはありました。
昼の部も悪くはなかったですけどね…。

翌日、ちょっとだけ京都観光(東京では混んでるのでパスしたエルミタージュ展と、名残の紅葉をくろ谷さんと、歩いているうちに到着してしまった真如堂で)して帰ってきて、まったく師でもないのにバタバタしてるうちに早くも12月も3日。

初日のフンコーも薄れてしまったが・・・これ以上忘れないうちに一応メモしておきます。一言ずつになりそうですが。

昼の部

佐々木高綱

盛綱陣屋のあの高綱かと思うと、我當さん、いや高綱の憤懣もわかる。てかこれ、我當さん以外で見たことないような。そして南座でしか見たことないような。
進之介が微妙に進歩していて、普通の役者になってしまったのは、よかったのか、さびしいのか。
これくらいならもっと使ってあげればいいのに、東でも見たいぞ!
孝太郎、愛之助と松嶋屋息子世代が三人揃ったのも久しぶり。

石切梶原

團十郎の梶原って失笑した覚えしかなかったのでまったく期待してなかったのだが、これが意外な拾い物。
体調いい?声も出てるし、まあ台詞は相変わらず変なんだけど、とにかく、梶原って黙って座ってる時間が長いじゃない?その間大抵の役者はぼーっとしてる(ように見える)んだけど、團十郎の梶原は、舞台の進行すべてを腹に受け止めて、きっちり梶原としての存在感を示してる感じ。
温かい武士っぷりも、ぴったりで、この芝居で退屈しなかったのは久しぶり。
彌十郎の六郎太夫はちょっと無理してふけすぎ。七之助の梢はきーきーいいすぎ。
市蔵の囚人の酒尽くしは商品名じゃないバージョン。なにかスポンサーのカラミでもあるのだろうな。

対面

勘九郎の五郎は「荒事はワラベの心で」をその通り絵に描いたような童心ぶり。ただ無理して声を張り上げているので、これはそのうちのどをやられるのでは、と心配。
ただ、荒事でも心があるのは、車引の梅王のときも感じたのだがすばらしい。型を演じつつ、型だけでない、曽我五郎としての心が感じられるのよね。
時蔵の十郎がすばらしい。すばらしすぎて、勘九郎と並ぶと兄弟というより親子、それも母子にみえてしまうのは・・・w
形式美としての御殿、大磯の虎(秀太郎)がちょっと老けてるのが気になったがw七之助壱太郎の長いのと丸いのの二人美形の並びは目の保養。橋之助の朝比奈は太ったせいか最初翫雀かと思った。
仁左衛門の工藤は、台詞の力といい、身体の細さといい、やや座頭格には弱いかな。巧いんだけどね。

吉田屋

こんなに長かったっけ?と思わせるほど、ちょい退屈しました→寝ました。
藤十郎、手馴れてはいるのだけれど動きにやはり生彩を欠いていて、あとはもう藤十郎のイザエモンを何回見られるか、の記念樹的観劇という意味なのかなあ。夕霧の扇雀も冷たくてつまらない。
安定の吉弥彌十郎は朝から三連発で老け役。お疲れ&お気の毒。

 

夜の部

忠臣蔵五段目、六段目

対面ではやつれた様子が気になった仁左衛門だが、勘平という役にはそのやつれがきっちり心の痛みや色気を表現する武器になっていたような。
勘平の必死さと、本人が一杯一杯の必死さがリンクして、こういう見方は邪道なのかもしれないけれど、今の仁左衛門にしか出せない勘平像を図らずも作り上げていたような気がする。
いわゆる名優の名演、というのではなく、名優が必死になって、客席も必死で見守るパフォーマンスというのかな。
芝居が一期一会のライブパフォーマンスだというのはまさにこういうところに醍醐味がある。
上方風の忠臣蔵、おかやの竹三郎がすばらしいのだが、いささか力強すぎて、勘平をいじめているように見えてしまったのはバランスの問題か。だっておかやのほうがどう見ても強そうなんだもんw
脇では神埼与五郎の愛之助がさっそうとした武士っぷりですばらしい。愛之助はこの程度の役をやると本当にいいんだよなあ。で、勘平をやるとがっかりするw
そして何より特筆すべきはおかるの時蔵
何もしていないように見えて細部にまで行き届いた神経を感じさせる芝居、色気と気概のバランス、とにかく絶品。あまり組まない仁左衛門とのコンビもすばらしいと思った。この二人で十六夜清心など見てみたいなあ。むしろ今の仁左衛門がらぶらぶ系をやるなら玉三郎相手より、ずっと似合ってる気がする。
萬ちゃんのパパ、としてだけじゃなく、時蔵自身の株もあたしの中では急上昇中、なのだった。


口上

まあ型どおり、松嶋屋と成駒屋は息子世代も並んだので16人?の大人数。なかで「コレ言っていいの?」と思った発言が二つ。
一つは成田屋の「勘九郎さんは(どこぞと違って?w)本当に真面目で芸熱心。その通りなのですが、なぜか一時期広尾で一人暮らしをしていた当時の私生活が謎で。、海老蔵から聞いた話もあるのですが本日はここまでにしておきます」みたいな感じ。
広尾じゃなくて恵比寿だったんじゃないの?とか一時期彼女がいて通ってたのは誰でも知ってるよ!と思いつつ、この時期にそういうネタでくるとはさすが空気の読めない成田屋、と思ったり、よほど自分ちの息子だけが遊んでると思われてるのが気に食わないのか、とかんぐったりw
もうひとりは、襲名のご当人、勘九郎。
型どおりで終わるかと思いきや、挨拶の最後に「勘三郎の息子に生まれたことを誇りに思っています」と物凄く力強い声で宣言したのだった。感動もしたけれど、ここまで言っちゃうって、かなり症状が悪いっていってるようなもんだよなあ、とも思ったり。そういえばその前に勘三郎のことを表現したときに「父は○○だった」と過去形だったのも気になった。何気ない一言に実情って出るもんなあ・・・
勘九郎の覚悟は立派だけれど、今、彼の発言は一言一句を聞き耳立てられてる時期だから、気をつけないとなあ、とも思ったのだった。

船弁慶


いいと思って、期待して、期待して・・・そして期待を裏切るどころかその上を行くのが今回の襲名での勘九郎。これもまた期待どおり、いや、それ以上の成果を見せてくれた。

何がいいって静。こんな静謐で、かつ、義経への愛情と別れることへの悲しみに満ちた静は見たことがない。どうしても後シテの知盛に気がいってしまいがち(客も、役者も)な狂言だけれど、前半、まったく退屈することなく、それどころか涙まで浮かべて見守ったのははじめての体験。
勘九郎の舞いのすばらしさもさることながら、それをじっと受け止める藤十郎の義経のすばらしさ。世代も身長もw超えて、普通に愛し合ってる恋人同士に見えたから、この二人すごいわ!
團十郎が弁慶で付き合う。存在感はさすがだが、どうしてこの人、本行ものだとやたら重々しい節回しにしようとするんだろう。それが怪談じみちゃうんだよね。
舟長と船頭(左團次・扇雀・七之助)がやる気ない人、線が細すぎる人でこれじゃ船も進まないわ、と思ったのは内緒w
後シテの知盛の霊は、初日にしては押さえ気味?荒々しさより妖しさや哀しさを強く感じて、個人的には好みだった。顔、特に青隈がもう少し巧くなったら満点。

四つ目(ひゃは!外題忘れた!調べる気もしない!

橋之助と翫雀が相撲取りで八百長の話してて、結局奥さん(孝太郎)が身を売って夫翫雀が八百長しないで済むようになる、という話?中途寝たのでちがってたらごめん。いつ面白くなるのかな、と思ってるうちに転寝・・・
結局たぶん面白くならなかったような。
時蔵さん(おかる)が百両なのに孝太郎が二百両で売れる?なんてことだけ気になってしまったのだったwww

次回はパスでいいか。

とにかく、勘平と静に会えただけで満足!です。
そうそう、松次郎くんがこの芝居から名題になって松十郎さんになりました。もう捕手とかやらないのかな。ちょっとさびしい。千壽郎さんも名題披露して千壽さんに。二人とも襲名披露になるのだからもう少し目立つお役にしてあげたかったなあ。。。

小山三さんは吉田屋の最後に女中さんで登場。
藤十郎さんとちらっと絡んだり、現役女形として立派に美しい。勘三郎のことが心配だろうけど、きっと舞台に出てるほうが気がまぎれていいのよね。がんばれ小山三!!!がんばれ中村屋!がんばれ松嶋屋!

追記

初日から5日後、12月5日午前2時33分(二ザさん!?)、勘三郎死去。
このことについて感想を書く気には当分なれないと思うので、事実のみを記しておきます。
タイトル、意識したわけではないけれど、意識下に勘三郎のことも願っていたのかなあ・・・


最新の画像もっと見る

4 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (あめり)
2012-12-05 13:42:39
この日のブログ読んで、胸騒ぎしていたけど...
ショック過ぎて、何にも浮かばないよ。
返信する
Unknown (laviedure)
2012-12-05 13:45:15
あめりさん、ここでよろしかったでしょうか。

もっともっと暑苦しい芝居を見て悪口が言いたかったです・・・
もっともっと感動的な芝居を見て涙を流したかったです・・・
もっともっと息子を鍛え上げて、叱り飛ばしていただきたかったです・・・
返信する
Unknown (ビジュー )
2012-12-05 23:46:52
想像以上のショックで、カキコ遅れました。後世に名を残す歌舞伎役者としてではなく、大好きな親戚の叔父さんとして。
返信する
Unknown (laviedure)
2012-12-06 09:43:49
おや、いつのまにーつきに改名?

はともかく、個人的にはショックとか哀しみというより
「損こいた」感が強いです。
まだまだ円熟期の芸がたくさん見られただろうし、
彼が生きててくれないと勘ちゃんのいい役も当分見られないかもしれないし。

コメント欄にだけそっと書く、超自己チューの感想でした。
返信する

post a comment