倉野立人のブログです。

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〈行政視察報告「秋田市」〉

2009-11-19 | インポート

11/18 Wed.  [ クラちゃんの起床時刻 3:15 AM ]

 

 

◇ 行政視察報告「秋田市の学力向上」の陰に、教育委員会の真摯な取り組みがありました。

  

先日、会派で秋田市の行政視察を行いましたので、その結果についてご報告させていただきます。

  

・秋田市視察(福島市教育委員会 学校教育課)

【自治体データ】 面積:約905k㎡ 人口:約33万3千人

           財政規模(一般会計支出 )約1,130億円

 

・秋田市の「全国学力調査」一位獲得の〝秘訣〟について

 

文部科学省が小5生と中2生を対象に行っている「学力調査」において、秋田市は全国トップを維持しています。

このことから、その取り組み状況が全国的に注目されることとなりました。

 

視察の冒頭、秋田市教育委員会の担当職員は「私どもは、学力調査で一位を獲ろうとして努力したのではなく、平素の取り組みが、結果として一位になった、との認識でいます。」と切り出され、そのうえで、秋田市教育委員会の取り組みを披瀝してくれました。

 

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0秋田市の「全国学力調査」の捉え方と対応

・秋田市は、本調査を、あくまで子どもたちの学習状況を把握するための資料の一つと捉え、調査結果については、他校や他自治体との競争ではなく、子どもたち一人ひとりに応じた学習指導改善のために役立てたいと考えています。

 

・その「学習指導改善」のために『学習指導の改善の方策』という教員向けのマニュアルを作成、全ての小問について、「問題のねらい」 「設問における調査結果」 「授業改善の方策」 「指導のポイント」などについて、教育現場でスグに確認でき、その場で改善ができるよう、全教員が共通のツールで取り組めるようにしています。

このことで、学力調査実施後、各校の全教員が速やかに指導改善に取り組めるようになりました。 

 

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その一方で、学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力などを含めた総合的な学力など、本学力調査では測りきれない面についても同時に検討を重ね「確かな学力」を育てる方策を探る、としています。

 

さらに、学力調査の結果について、全ての教科について秋田市独自の分析を行い、それを日常の授業に反映させるための『授業改善のポイント』なる、やはり教員向けのマニュアルを作成し、授業改善のポイントの提言、学科ごとの考察、また「ペーパーテストでは測れない学力の状況」の項目を設け、分析・考察を行っています。

 

さらに、秋田市教育で特筆すべきは「生活環境や学習環境に関する調査」を行っていることです。

すなわち、

・朝食の習慣

・学校に持っていくものを、前もって確かめる習慣

・家で学校の復習をする習慣

・家で苦手な教科の勉強をする習慣

                                  について、全国の状況と比較しています。 

 

その調査の結果、全ての項目について全国平均を上回っており、特に「家で復習をする習慣」が小学生80%超、中学生65%超と、全国平均を25~30%上回っており、このことから、秋田市の児童生徒が授業の復習や苦手教科の学習など、家庭での自主的な学習に取り組んでいることが伺えます。

その一方で、秋田市の児童生徒の「通塾率(塾通いの率)」は小学生25%、中学生50%と、全国平均を15~25%「下回っている」のも特徴です。

このことは「塾に通わず、家で勉強する」そのうえで学力調査の好成績を挙げていることを裏付けています。 

 

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この「家庭での取り組み」について「なぜ?」という質問をぶつけてみましたが、秋田市教育委員会の答えは「具体的な理由は分からない」とのことでした。

「強いて言えば、真面目で無骨な秋田気質ということでしょうか ^^」とのことでした。 

 

さらに、この「真面目な取り組み」は教育現場にも反映されていました。

学力調査に基づくマニュアルを全教員に配布した結果、それぞれの先生方に「工夫して授業を行う」という意識が浸透し、教員間でイイ意味での切磋琢磨が生じ、学級ごとの「学ばせる姿勢」が向上し、さらには、授業と両輪になる「学級づくり」の積極的に行われているとのことです。

 

「それに伴う教員の負担感はないのか?」の問いにも「先生方も意欲的に取り組んでいます。」との返事でした。

 

教育委員会の説明を伺い、まさに「理想的な形」で学校と家庭での生活習慣・学習習慣が構築されていることに感心・感嘆すると同時に、私は、説明する秋田市教育委員会の皆さんの表情・・・それはすなわち、私たちに説明する際の、教育に賭ける熱意に満ちた表情を感じ取り、ある問いを投げかけてみました。

 

「学校と家庭の環境向上のためには、間に入る教育委員会には相当の努力があるのではないでしょうか?」

それに対し、同席した指導主事の方が笑って応じてくださいました。

 

「私たちは「現場密着型」の指導主事をめざしています。」とのことでした。

 

私たちは、そこに、秋田市教育の真髄(しんずい)を見た思いがしたところです。

 

すなわち、県に身分を置く教職員⇔市が所管する学校⇔家庭、この三者三様の立場の意識をひとつにまとめ、子どもたちの健全育成のために一致して取り組むためには、市の教育委員会の〝働きぶり〟で成果は大きく異なってしまいます。

 

他者の立場を尊重し過ぎる余り〝お任せ主義〟に陥り、教員⇔学校⇔家庭の情報交換がなおざりになってしまえば、真の向上は難しいところですが、秋田市教育委員会の、とりわけ指導主事は、現場、すなわち学校に積極的に足を運び、先生方との一体感を醸成、そのうえで全教員に「共通マニュアル」を配布することで、一様に教育環境の向上が図れる、まさに「現場第一主義」により生み出された「チームワークの成果」ということが言えると思います。

 

先日の福島市教委ではありませんが、学校指導の主体である先生方と連携するには、しっかりとした信頼関係が肝要であり、その点において、秋田市教委の指導主事の活動は、有機的に機能していると、職員の「目」を見て実感したものでした。

 

 

0「秋田市教育ビジョン」について

 

・秋田市は「第11次秋田市総合計画」の策定を期に、教育を取り巻く課題を整理し、秋田市教育のめざすべき方向を明確化することで、学校などの教育現場の活動を一層充実させることをねらいとして「秋田市教育ビジョン」を策定し、その内容について研修しました。

 

「秋田市教育ビジョン」は「今、人づくりのために秋田市教育がめざすものは何か」を基本的な考え方に位置づけています。

その実現のためには、自立の力と共生の心の育成、健やかな心と体づくり、豊かな心の醸成が必要であるとし、そのうえで、H20~24までの5年間を計画期間とし「学校教育」「社会教育」「スポーツ振興」「文化振興」の4分野に亘り取り組まれています。

 

そして各々の分野を「基本的な考え方」「基本方針」「重点施策」の展開により構成し、市民に対して取り組みを促しているのです。

 

[学校教育部門]

・子どもたちは、家庭や学校、地域でさまざまな教育を受けて育ち、社会(市)は、子どもたちが自らの人生を力強く歩み、よりよく生きる力を身につけるために充実した学びの場を創造し、一人ひとりの可能性の実現に向けて導いていく責務がある。

・子どもたちが自らの人生をたくましく切り開くため、的確な判断力と行動力を身につけられるよう「自立」を培う努力

・豊かな人間性を育むために、互いに認め合い・支え合い・高め合うための「共生の心」を培う努力

・幼児期においては、幼児一人ひとりの望ましい発育を促すため、幼保小の連携を図る。

・小中期においては、小中9年間を連続して捉え、各発達段階に応じた適切な指導・支援の充実を図る。

・いつの時代にも変わらない「普遍性」を基本に据え、いじめ・不登校対策や特別支援の取り組みを充実させ、子どもたちに郷土を愛する心を育むための「地域性」を活かした教育の実践を図る。

 

[社会教育部門]

・市民一人ひとりが、学習したいという意志に基づいて、いつでもどこでも学べる環境を整え、その成果を自らや地域のために活かすことのできる社会を創りあげる。

・今後は、より充実した人生を送りたいという欲求の高まりや、情報化社会の進展が生み出す価値観の多様化などにより、市民の学習意欲はより高まり、その要望も多様化することから、秋田市第3次教育中期計画の「だれもが学んで活かせる協働あきた」の実現をめざし、「学びの支援体制の充実」「学びの機会の選択の支援」「学びの機会の支援」「学びの成果を活かす機会の充実」を4本の柱に据え、行政と市民相互の協働で、社会教育活動を推進。(公民館整備・図書館整備・勤青センター整備・女性センター整備) 

 

[スポーツ振興部門]

・スポーツは人類の文化であり、健康増進や生活習慣病の予防、ストレス解消・市民の相互連携など、心身両面でさまざまな効用がある。

またスポーツとのかかわり方については、自ら行うだけでなく、観戦やボランティア参加など、生活の質の向上やゆとりを生み出す、さまざまな形態があることから、それら市民の多様化するニーズに応えるための支援を行う。

・そのために、市民のスポーツへの主体的な取り組みを促進しながら、そのニーズに的確に応え、いつでも、どこでもスポーツに親しめる、生涯スポーツ社会の構築をめざし、スポーツ活動の多様化に対応できる体制づくりや環境づくりのための施設の計画的な整備と効率的な運営、スポーツを通じた健康な心と体づっくり・地域の連帯感の醸成に努める。

 

[文化振興部門]

・文化は、市民生活の全てに関わっており、市民が充実した人生を送るため、文化に対する期待感は高まってきている。また近年は、文化資産を活用したまちづくりや地域経済活性化を促す効果なども認識されている。

・今後は、市民が郷土の歴史や文化価値を再認識し、生涯を通じて学び、成長し、充実した人生を送れる環境整備に努め、国内外に広くアピールできる地域文化の創造を図り、文化芸術が人々を引きつける、文化力「文化の持つ、人々を元気を与えるとともに地域社会を活性化させる力)」を高める。

 

 

秋田市の視察を通じて、秋田市教育委員会の真摯な取り組みと、それを説明する理事者の「目」を直に見て、地域の教育における教育委員会の果たす役割の大きさを再認識させていただく貴重な機会をいただきました。

教育という、まさに多様化のるつぼともいえる部門を円滑に運営するためには、それぞれの立場を理解し、そのうえで円滑な交互関係を補完するための教育委員会が有機的に機能することは非常に重要であり、秋田市の場合は、職員の真摯な取り組みにより見事に実践され、実際の成果に結びついている、ということでした。

 

秋田市教育委員会の雰囲気が、どこまで長野市教育委員会に伝えられるかは未知数ですが、実際に現地に足を運び、現役職員から〝生の声〟を聞いた者として、少しでもこの取り組み姿勢が伝播されるよう、議会を通じて訴えていきたい、と思いをいたしたところです。