11月23日(土)~24日(日)にかけ参加した、都内(市ヶ谷)の 「 市ヶ谷カンファレンスセンター 」 で行われた 『 子ども・子育て支援新制度と自治体行政 』 の概要についてご報告いたします。
両日に亘って、地方議員を対象に行われた研修会、訊けば 当初は小さな会議室で行う予定でしたが、全国から多くの参加希望が寄せられ、急きょ大会議室を手配、会場は 新たな制度の内容を学ばんとする自治体議員が参加していました。
講演内容は下記のとおりです。
11月23日(土)
1、子ども ・子育て支援関連3法と新制度の概要
1) 「 新制度の基本構造 」 講師 : 村山祐一 保育研究所 所長
2) 「 新制度における 保育の利用手続 」 講師 : 大井 琢 日弁連 貧困対策委員
2、待機児ゼロ 「 横浜方式 」 の 光と影 講師 : 猪熊弘子 ジャーナリスト
11月24日(日)
3、「 市町村・地方議会の課題と子ども・子育て会議と事業計画 」
講師 : 杉山隆一 佛教大学教授
4、質疑
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国は、現下の少子化に歯止めをかけるため 「 すべての子どもに良質な成長環境を保障し、子ども・子育て家庭を社会全体で支援する 」 ことを目的とし、子ども・子育てに関する新たな制度を示しています。
その主たる柱が、
1、子ども ・ 子育て支援法 ( 内閣府 所管 )
2、改正認定こども園法 ( 内閣府 所管 )
3、関連法の改正のための整備法 ( 各省庁 )から成る 「 子ども・子育て関連3法 」 です
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今回の制度の見直しの背景には、主に都市部で深刻になっている 保育所などの「待機児童」の解消や、その一方で 少子化が進行する中、子育て施策を 体系立てて(所管省庁をひとつにまとめて)取組むべきなどとすることを目的に示されています。
子育て施策の実施主体を基礎自治体(市町村)と明示し、国は 所管を 内閣府の 「 子ども・子育て本部 」 としたうえで、自治体の行う 「 ニーズ調査 」 等に基づき 「 子ども・子育て支援給付(金) 」 を設定 、自治体は その財源を使って 保育所や放課後児童クラブ等の運営や、地域子育て施設拠点事業などの法定13項目を実施することになります。
この 制度変更に伴い、一見的には シンプルで分かりやすい子育て体系が構築されるようですが、実際に事務事業を担う基礎自治体にとっては、これまで以上に煩雑かつ膨大な作業を要求されることになることが推測されるところです。
財源については、いずれ10%UPとなる消費税の中から、0,7兆円を支弁する としていますが、それぞれの子育て事業の予算を包含して扱う自治体にとっては、そのときどきの状況や判断により 予算配分の偏りや そのそもの財源不足の懸念も付きまとい、今後に不安を抱きながらの計画策定を余儀なくされるところです。
そして何より 一番タイヘンなのは、この秋に示された制度変更に対し、実施主体である自治体は、来年 6 月を目途に、子育て事業を行う上での〝ルール〟などを記した条例を定めなければならない点です。
いわば 本来マラソンで走る距離を100m走のペースで駆けなければならない過酷さがあり、市行政サイドも議会サイドも、このハイペースに遅れることなくついてゆかなければなりません。
講演に立った村山氏も 「 この急がせ方は 国の都合以外の何ものでもない。 」 と半ば憤りを示しておられました。
今回の制度の見直しには、児童福祉法第24の規定があります。
児童福祉法 第 24 条 市町村は、保護者の労働又は疾病その他の政令で定める基準に従い条例で定める事由により、その監護すべき乳児、幼児または児童の保育に欠けるところがある場合において、保護者から申込みがあつたときは、それらの児童を保育所において保育しなければならない。
市町村の責任において保育を行なうべきことの趣旨のうえに立って、私たちは その〝中身〟について充分に精査し、真に自分の自治体の状況に即した子育支援事業を行うべきであります。
今後の取組みが市の態勢や財政をいたずらに圧迫し、ひいては受益者であるべき市民生活にも影響を及ぼすことのないよう図っていかなければなりません。
また、後の大井弁護士の講演においては、新たな制度が示されたとはいえ、説明には〝矛盾点〟や〝不合理な点〟が散見されることが報告されました。
これは 今回の所管が〝門外漢〟の 「 内閣府 」 であること・・・何というか 厚労省や文科省がコックさん、専門家が作った料理を、調理法を知らない内閣府がウェイターとしてお客さん(自治体)に配る とでも言えそうなちぐはぐ感が拭い去れないところです。
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またジャーナリストの猪熊氏は、表面的には 「 待機児童ゼロ 」 を標榜する横浜市の保育所について、設置するにはしているが、あまり環境の良くない状況や、企業参入による〝儲けの実態〟などが報告され、真の児童福祉とは何ぞや・・・と考えさせられてしまいました。
いずれにしても、子どもを健全に育てること、その環境を整備していくことは、今を生きる われわれ大人の責務であり、このことばかりは 「 いずれそのうち・・・ 」 などと 看過してはならない課題であると思います。
そのうえで〝実施主体〟である地方自治体は、地域の状況に合った事業を展開していかなければなりません。
今回の国の示した新たな制度は、性急かつ一元化に過ぎると感じられるものですが、これらの動きにシッカリと対峙していかなければなりません。
これまでは、市に対し意見具申をするのが議会の主たる役割でしたが、こと 子ども・子育て支援施策については、ときに市と共通認識をもちながら、それぞれの立場で知恵を出し合い、ときに力を合わせて国に立ち向かうことも必要になるのでは、と思ったところです。
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研修会のまとめとして 村山氏が 「 大人は現状に対して文句も言えるし 変えることもできます。けれど、子どもにはその力(ちから)が無いのです。状況が悪くても、それを我慢しながら時間を過ごすことしかできない。だから われわれ大人が制度設計や環境整備を行うのです。その目的は、大人にとって都合のイイものではなく、あくまで子どもの幸せのために試行錯誤するのが取組みの基本です。」 と述べられたのが印象的でした。
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マラソンの名の下の100m走の号砲が鳴りました。
これからが勝負です。
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