倉野立人のブログです。

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〈行政視察報告「世田谷区」〉

2009-11-15 | インポート

11/14 Sat.  [ クラちゃんの起床時刻 6:55 AM ]

 

◇ 行政視察報告「世田谷区における不登校対策・BOP事業の取り組み」

 

先日来、会派や委員会で行政視察を行いましたので、その結果についてご報告させていただきます。

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「世田谷区における不登校対策・BOP事業の取り組み」について

【自治体データ】 面積:約58k㎡ 人口:約85万人

           財政規模(一般会計支出 )約2,500億円

・世田谷区における不登校対策(世田谷区教育委員会)

世田谷区は、他の自治体に先駆けて、不登校に対する取り組みを進めており、生徒の視点、また保護者の視点から施策を行っています。

世田谷区の不登校の実態は、平成19年度調べで、小学生91人、中学生292人、合計383人。全体に占める割合は、0,33%と、全国平均(0,34%)を若干下回っています。

 

不登校の原因については「子ども自身の成長や発達に起因するもの」「家庭生活に起因するもの」「学校生活に起因するのも」に大別し、それらが複雑に絡み合って不登校を生み出すとし、不登校の多様化を認識しています。

そのうえで、不登校問題の所在を

・子ども自身が抱える問題…集団対応や友人関係、昨今では発達障害も原因の一つになっています。

・家庭や地域が抱える問題…核家族化による家庭養育の孤立化(ネグレクト)地域内での交流の希薄化が原因になってきています。

・学校が抱える問題…児童生徒の多様化により、きめ細かい指導が難しくなっている。また「中一ギャップ」の発生も顕著になってきています。

                などと分析し、それぞれの「ニーズ」に応じた対策に取り組んでいます。

世田谷区は、不登校支援にあたり、次の基本的考え方に立っています

・子どもの立場に立って、何が必要であるか考え支援していく。

・子どもの行動など「予兆」を察知し、早め早めの対応で支援を行う。

・不登校は学校と家庭だけの問題とせず、地域全体で子どもに関わり支援する。

そのうえで「支援の方向づけ」を行い「取り組み」を展開しているのです。

支援の方向づけにあたっては「基本的考え方」に基づき、具体的取り組みの前提となる方針の「幹(みき)」を立て、その幹に、いわゆる枝葉となる「具体的取組み」を展開させます。

[支援方向 1]学校における子どもへのきめ細かな支援

・校長のリーダーシップの下で、教員間の連携を密にし、学校全体で協働して支援する体制を確立する。

・個々の児童生徒を「理解」することに努め、状況に即した支援を行う。

・小~中学校の9年間を通した学校間およびスクールカウンセラー間での情報の共有化を図り、いわゆる「中一ギャップ」の予防など、継続的で一貫した支援を行う。

・教室さらには保健室にも居られない児童生徒が安心できる「居場所」を確保する。

[支援方向 2]子どもや保護者の相談体制の整備

・不登校に係る、多岐に亘る相談を総合的に対応する(ワンストップ)窓口の設置。

・文科省が進める「スクールソーシャルワーカー」の導入や、スクールカウンセラーへの支援スキル向上のための研修の充実を図る。

[支援方向 3]不登校の子どもの自立支援と、そのための「居場所」の整備

・中間教室としての「ほっとスクール」の整備促進を図る。

・「ほっとスクール」についても、単なる〝居場所〟にとどめず、不登校児童生徒の社会的自立に向けた、学習や体験活動などの機能強化に取り組む。

・「ほっとスクール」の指導体制について、大学生を活用などして強化し、児童生徒の発達段階に応じた支援が行えるよう努める。

[支援方向 4]民間施設などとの連携

・NPOや不登校児保護者連絡会など、関係団体の相互交流や情報交換を積極的に行う。

・民間団体を「ほっとスクール」の主要な支援団体と位置づけ、連携・協働を図る。

[支援方向 5]専門機関・地域との連携強化

・医療、福祉など地域にあるさまざまな機関との連携を強化し、適切な情報提供や情報交換に基づき、地域における支援の仕組みづくりを図る。

・不登校そのものに対する理解啓発を進め、地域や他の保護者の理解の下での支援体制を構築する。

 

それらの体制に基づき、世田谷区においては、具体的取り組みとして

・総合教育相談室

・校外アドバイザー派遣(総合教育相談室から学校に派遣)

・メンタルフレンド派遣(総合教育相談室から家庭に派遣)

・「不登校保護者のつどい」の開催

・中間教室「ほっとスクール」の設置、運営

                     などの施策を行い、最終的な学校復帰をめざす、としています。

世田谷区の不登校対策における課題としては、不登校につながる原因の多様化・長期化に伴い、多面的な見地で支援を行う必要があること、また、いわゆる「中一ギャップ」を予防するためにも、小中の連携が重要であること、またスクールカウンセラーなどの専門職の一層の活用や「ほっとスクール」などの居場所整備の必要性が挙げられる、としています。

 

世田谷区の不登校対策の視察を通じて、課題の解決には、いかに行政が当事者の立場になって課題を認識することができるか、不登校を「特別なこと」「悪いこと」のような「対立の立場に置かず、いかに同じ目線で、子どもの個性に合わせたよりキメ細かい支援を行うことができるか、が肝要であると感じました。

残念ながら長野市の不登校対策は、世田谷区ほど踏み込んでおらず、やや画一的な感がぬぐえないと思います。

特に世田谷区のように、小学校と中学校が連携することは「中一ギャップ」を予防するうえでも非常に有効と考えられることから、長野市でもぜひ推進してほしいと思いました。

 

次に「BOP(Base of Playing=遊びの拠点)事業の現場を視察しました。

Bop

これは「放課後子どもプラン」の先進事例として紹介されたもので、学校施設を活用しながら放課後の子どもの面倒をみる事業です。

世田谷区における放課後児童育成事業は歴史が古く、昭和39年から「学童クラブ事業」として行われています。

その実績のうえに、全ての児童を受け入れる「BOP事業」が平成7年から事業開始(モデル4校)され、その後平成17年から、全小学校で実施されることになり、現在の「放課後子どもプラン」に位置づけられたものです。

BOP事業は「教育委員会」と「子ども部」が共同で所管し、主体は教育委員会が、学童クラブ所管の子ども部が支援する形で運営されています。

BOPは、1~6年の全児童が対象で「遊びと交流の場」をコンセプトとしており、その中に、いわゆるカギっ子児童の面倒をみる、1~3年を対象にした学童クラブが「遊びと生活の場」をコンセプトに位置づけられています。

事業の運営にあたり、校長やPTA、保護者会、地域の役員などから成る「BOP運営連絡協議会」が、助言や提言を行います。

職員体制は、事務局長、児童指導職員(常勤)、BOP指導員(非常勤)、プレイングパートナー(臨時職員)で、全て有償、人件費は区の単独予算で賄われているとのことです。

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今回、実施校の一校を現地視察させていただいたのですが、まさに「視察」の妙(みょう)・・・事業に取り組む現場の、それは素晴らしい雰囲気に触れ、先進自治体だからこその(長野市にない)取り組み姿勢を肌で感じることができました。

それはすなわち「学校とBOPとの一体感」です。

「放課後子どもプラン」の実施においては、学校と、学童クラブ(児童館)との連携が事業の成否を担っています。

この事業は、その連携が〝全て〟といってもイイほどの「異事業共同運営」なのです。

世田谷区においては、長きに亘る歴史を踏まえ、学校とBOPの管理者(校長⇔事務局長)に信頼関係が構築されており、授業を終えた児童がスムーズに放課後の時間を過ごせる、ハード面・ソフト面ともに適切な体制が構築されていました。

長野市の「放課後子どもプラン」は、ようやく緒についたばかりです。

私たちの立場でも、今回の視察を通じて、肌で感じた世田谷区の先進的取り組みを長野市行政に伝え、一体感のある放課後事業の実現に向け取り組んでいきたいと思いをいたしたところです。

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この他にも、世田谷区は「すべての原点は教育にある」との理念の下「世田谷区教育ビジョン」を策定するなど、地域との関係を守り育てながら教育活動の一層の充実に取り組む、としています。

教育機関と地域との関係を重視し、教育環境の向上こそが地域発展につながるとする世田谷区・世田谷区教育委員会は、長野市にとって、ある意味で欠けている取り組み姿勢を見せてくれたものでした。

教育のあるべき形を実感することができ、有意義な視察を行うことができたところです。

 

 

 

☆ オマケ「世田谷区議会の個性的な名札」

 

視察に先立ち、世田谷区議会の議場を見せていただき、そこに、とっても個性的な名札を発見しました。

まず理事者席には「子ども部長」・・・某クルマメーカーには「子ども店長」がいますが、この場合の「子ども部長」は、子どもサンが部長を務めるのではなく、子どもに関する所管事項をワンストップで受け持つ「大人」の部長席です ^^)

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次に議員席にあった「青空こうじ」・・・って「あの漫才師の「青空こうじ」サンですか?」と訪ねると「そうです ^^」との返事が。

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「質問にも〝オチ〟をつけていますか?」と聞くと「いやいや、至ってマジメに質問されています。」とのこと、ましてや「ゲロゲーロ」な~んては絶対言わないそうです(あ、あれは相方の方か ^^)