さきのネット記事で、東京都内の高齢者施設内で発生しているコロナ感染症に伴い 施設内で深刻な〝療養崩壊〟が起きていることが報じられ、この報に触れたときに、改めて コロナ対応が新たなフェーズ(局面)に入っていることを実感させられました。
報道によると、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」による感染の第6波で死者が急増する中 東京都内の高齢者施設でも療養中の新型コロナウイルス感染者の死亡例が増えているとのこと。
関係者からは、医療機関の病床逼迫(ひっぱく)のシワ寄せにより 施設内で行なわれている「施設内療養」の限界を指摘する声が上げられています。
都内の とある高齢者施設で今月になって90歳代の女性入所者(Aさん)が息を引き取ったのですが、その10日ほど前には Aさんの症状はごく軽症で、本人や家族の希望もあって そのまま施設内で療養することになったそうです。
ところが、その数日後にAさんは脱水症状を起こして食事の量が減り アッという間に衰弱してしまい、容体が急変したことから救急車を呼んだものの搬送先が見つからず、車内で約4時間待つ事態に陥り 最終的に亡くなってしまったとのことでありました。
この施設の施設長は「高齢者の容体悪化はあっという間だ。入院できない上、入院が必要になっても受け入れ先が見つからないのは大きな問題ではないか。」と訴えておられました。
さらに報道によると、都内では 1月中旬まで大半の高齢者が入院できていましたが、オミクロン変異株による感染の拡大で次第に病床を圧迫、都は1月下旬になって「重症化しにくい」というオミクロン変異株の特性を踏まえ、高齢者施設入所者であっても 軽症で重症化につながる持病などがなければ、施設内での療養を認めることとしました。
ところが その後の調査によると、1月中に施設内で亡くなった高齢の感染者は3人だったのに、2月に入ると(逝去者は)3週目で19人に急増、今週は23日時点で16人が亡くなっており 雲行きは急に暗たんたるものになってしまいました。
かかる 都内の高齢施設内での今年の逝去者数は計38人で、全ての逝去者(352人)の約1割を占めているそうです。
この事態に先んじて 都は、施設内療養を進めるにあたり 都内の医療機関と連携し「医師の往診体制」を整えたとのことですが、それも抜本的な体制整備には至らず 対応が間に合わないうちに逝去の多発を招いているようです。
往診を担う医師の一人からは「高齢者施設は あくまで「生活の場」で、医療の場ではない。(コロナ)対応には限界がある。」と指摘していたことが報じられていました。
今回報じられた 都内の高齢者施設で発生している深刻な状況は、オミクロン変異株の伸張により 感染状況が大きく変わってきているのに、行政によるコロナ体制が旧態依然のままであったことの弊害(シワ寄せ)が如実に現れたものでありました。
このことは さきに長野市保健所長のオンライン会談での指摘にも附合するところですが、たとえ軽症者が多いとはいえ 第6波でコロナ感染者が激増しているにも拘らず(国は)これまでどおりの体制のままに 保健所を窓口にした感染者の追跡のみに腐心し、結果 病床逼迫→施設内療養容認→高齢者の逝去事例急増 につながってしまった。
こと ここに至った以上には、発生してしまった感染者の管理はもとより そこから派生する 中等症~重症患者の抑制に向け、関係者が注力してゆくことこそが「選ぶべき道」ではないか。
具体的には、コロナ感染者の対応は 保健所が間(あいだ)に入るのではなく、医療機関⇔医療機関 との〝直接対応〟に効率化する。
そのうえで保健所は、高齢者施設など感染が発生した箇所への指導などの〝本来の業務〟に徹するべきではないか というものです。
従前も述べましたが、現下のコロナ禍は まるでボクシングのボディーブローのようにジワジワとダメージを与え、気づいた頃にはダウンを喫するような悪しき流れとなっているようです。
この流れを断ち切るためにも、新たな認識でコロナ対応にあたるべき…再認識させられた報道でありました。