ゆるゆる素浪人の「気まぐれ日誌」~ 自己満足とボケ防止に、人生の雑記帳~  

そういう意味で老人の書いた「狼の遠吠え」、いや「犬の遠吠え」と思い、軽い気持で読んで頂けば有り難いです。

35年前の「台湾への誘い」から(最終回)

2012-03-10 06:56:08 | 雑感・旅行
「台湾への誘い」は海外旅行が一般化しだ35年前、その「いろは」を習得するために、
好奇心旺盛な遊び仲間5人と行った見聞録である。
いよいよ最終回だが、この原稿は某団体会誌の依頼で、海外旅行の啓蒙に書いたものである。
その為に物語風に面白く書いてみましたが、見聞録としては詳細過ぎたかもしれません。

●「台湾への誘い」(四)
  
Ⅴ.高雄→台北
 高雄を親切に案内してくれた美女の王さんとは、なごり惜しく握手をして別れ、遠東航空機の機上の人となった。台北の松山空港には、再度李さんが迎えに来ている。
車の中で李氏はスナック経営や外車などを扱う青年実業家で、輸入元の社長さんと聞きおよび、
ここにきて大金持ちの正体が初めて明らかにされた。
今日の宿泊所の、康華大大飯店に向かった。
部屋はセミダブルのゆったりした清潔な室である。
ボーイがカタコトの日本語でチップを要求する。
台湾では何をするにもチップの必要な国であり、戸惑うことしきりであった。

 高雄の疲れを癒すため、台湾名物サウナ付上海風呂にいく。
日本の銭湯と同じ大衆風呂のようなもので、驚いたことに日本の三助に似たプロの洗い人がいて、
乾いたタオルを腕に巻き無防備の裸体を擦り上げる。
痛くはないが黒いアカが玉のように落ちていく。
我々日本人はタオルで男性自身を隠そうとするが、すぐにタオルを取られ、
まな板に上がった鯉のように上向きに寝かされたのには困惑した。
サウナのあとは若い男性による、マッサージや爪きり、美顔、整髪と、大名気分が味わえる。
しめて全コース500元(3,500円)と、思ったより安かった。

 奇麗さっぱりとしたところで、李氏の経営するスナック翠月に行く。
そこには、若い20才前後の美人ホステスが待っていた。
自分の好みのタイプの女性が、カタコトの日本語で酒の相手をしてくれる。
飲むほどに酔いはまわり、歌ったり踊ったりしだす。
 
 台湾でも日本のカラオケが大繁盛で、すきま風、瀬戸の花嫁、クチナシの花、漁火恋唄、悲しい酒等、
日本のスナックで飲んでいる気分と全く変わらない。
お相手の女性は、すらっとした髪の長い子、ぽちやっとした日本風の子、清悍な高砂族を思わせる子、口は少し大きく外人風のマスクの美人では、酒の酔いも一段と早まり極上気分に達する。
あとはおぼろに、あとはおぼろに、台湾の夜はふけていった。

Ⅵ.台北市内観光
 今日は昨日と変わって、小雨模様である。
台湾の雨も日本と同じく冷たかった。
市内観光の最初は政治の中枢である総統府で、
日本の統治時代に総督府として建てた、赤レンガのルネッサンス風建物であった。
そこから清朝が首府を台北に移したとき築いた古城門を経て、
建国の父、孫文の生誕百年を記念して作られた、中国宮殿様式の豪華な建物の国父記念館に着く。
白の総大理石の大きな建物は日本には比べるべく建物はなく、ここにきて大中国の片鱗を見せられた。
4年の歳月と総工費12億円(1972)をかけ、3万㎡の建物は壮大であった。
建物の正面には孫文の座像があり、民主、科学、倫理の教えが説かれている。
展示室には中華民国建国の歴史、孫文の著作、蒋総統の生立ちなどが展示されており、
国家事業のためか入場は無料であった。

●旧総督府(台北)

●国父記念館・台中公園(台北)


 世界一安いと言う、タクシーに乗って龍山寺に向かう。
この寺は250年の歴史をもち、精巧な造りと鮮やかな中国寺廟の装いは素晴らしい。
本殿には観音菩薩を祭っており、境内では善男善女が神に問いかける三日月型の二枚の神片を、
思いがかなうまで、何度も投げて祈る姿が印象的だった。
私達もこれからの旅の安全を祈って龍山寺を後にした。

●龍山寺(台北)
 

 台北の中心街の華西通りに出てきたが、人と車のためになかなか前に進まない。
しかも台湾では車が優先であり、信号もなく事故が起きてもおかまいなしだ。
日本では交通整理のお巡りさんが2~3人居そうな所も、警官とパトカーの姿は一人も見掛けなかった。
華西通りの路地裏には蛇肉料理、海鮮料理等が多く、
日本で言う『食品衛生』は全く無視され、食中毒の発生しそうな薄汚い露店街であった。

 
 昼食は広東料理で有名な喜年華大飯店で取ることにする。
広東料理は『食在広州』と言われくらい、材料の多彩さは有名で、
新鮮な海の幸や豊富な肉類を使った、最もポピュラーな中国料理の一つである。
飲茶(ヤムチャ)は、手押しぐるまで運ばれてくるギョウザ、春巻き等を、自分で選ぶ食事スタイルで、
特に牛の軟骨はゼラチン質で美味であったが、牛の舌には異様に感じた。

 食後、喫茶店でコーヒーを飲むことにしたが、台湾ではコーヒは高価な飲み物である。
看板にコーヒ廰と書かれた店では若い小姐がいて、
いかがわしいサービスをする喫茶店であるので、近寄らないほうが賢明である。
この辺りから時折降っていた小雨も上がり、初秋を思わせる気候に変わった。

 午後の最初は、世界第三聖人の孔子を祭る孔子廟を礼拝し、忠烈祠に向かう。
中華民国の戦死者を祭った宮殿式の建物で、直立不動の衛兵が興味深い。
一時間ごとの衛兵の交替風景は、バッキンガム宮殿の衛兵と比較されるほど見事な光景で、一見の価値あり。

●孔子廊


さていよいよこの台湾旅行の最終目的地、国立故宮博物院につく。
緑に囲まれた外双溪の山ふところに建つ、豪壮な四層の中国宮殿建物に、
紀元前3千年から中国歴代の文化芸術作品、62万点が収納されており、
館内には約8千点が展示されている。
保存を良くするために、後背の山を繰り抜いて建てられている。
陳列品は3か月ごとに交替され、駆け足で鑑賞しても最低2時間は下らず、その道の通なら3日間は必要である。
しかし入館料は20元(150円)と格安である。
 
 館内には陶磁器、銅器、絵画、書、彫刻、翆玉等が陳列されており、まさに中国文化のオンパレードである。
なかでも清時代の価格の付けられない翡翆の孱風、精巧な象牙彫刻の九層球、九層塔などは、
製作に一年以上かかったであろう。
小さな木片に彫刻された人物風景は、虫眼鏡でみなければいけない。
4階には清時代の皇帝の紫檀、黒檀の執務室など、
中国文化遺産の規模の雄大さと精巧さは、とてもペンでは書き表す言葉を持ち合わせない。

●国立故宮博物院(台中)


 この博物院からの帰りに蒋総統の未亡人が経営する円山大飯店で、一杯千円のコーヒ・ブレイクにする。
この建物は王宮式の豪華なもので、さすが建国の父・未亡人=宗美齢(106才没)ならではのものである。
今はアメリカで癌のため入院しているとかで、いかなる権力者や金持ちも、よる年と病気には勝てない様である。

●丸山大飯店・喫茶(蒋介石夫人経営)
  
 
どこをどう通ってきたか定かでないが、古ぼけた路地に出てきた。
突然、若い娘が「センセイ、センセイ」とカタコトの日本語で話しかけて来たが、
ここは元遊廓街であった。
細い路地裏をなおも進んでいくと、厚化粧した若い女性がたむろしており、
「センセイ、安クシテオクヨ、300元」と、なおも呼び掛けてくる。
顔にはあどけさが残りスラットした美少女では、何か哀れさを感じ台湾の恥部を見たような気がした。
辺りは薄汚い裏町であり入ってみたいような男心を振り切って、台北の夜の繁華街へと出ていった。
 
 行きかう台湾の女性は美人も多く、すらっとした筋肉質の身体は健康その物で、
日本で見慣れた肥満タイプに比べて、何か新鮮さを感じさせる。
市内には病院も多く目につき、なかでも産婦人科の多いのはどんな訳があるのであろうか。
それに比べて薬局は少なく、台湾での医薬分業はどうなっているか気になったが、遂に聞く機会を失った。
通貨も大きな店なら日本円で通るし、日本の商品、日本風スナック、日本料理、日本の商社と、
国交は断絶していても、日本の経済とはしっかりと結びついていた。
ここでもGNP2位の日本の円は強かった。
 
かくて、最後の台湾の夜がやってきた。
最後の晩さんは本場台湾料理のメッカ、欸葉ですることにした。
台湾料理は味付けに気取り無く、中国料理のおふくろ版である。
台湾の地酒、紹興酒を思いきり飲んで、最後の夜は深くふけていった。

Ⅶ.台北→大坂→自宅 
 午前11時、いよいよ帰途の時間が近ずき、台湾での楽しい3日間は、瞬く間に過ぎていった。

歴史とロマンの国、南国の景観、男性パラダイス、究極のグルメとすべてのものが揃っており、
老若男女が楽しめる国、それは台湾であろう。

 これも、いつも離れずに案内してくれた、李さん父子によるところが大きい。
李氏との再会を誓って硬い握手の後、大阪行きボーイング202便のタラップを昇っていった。
ありがとう!高雄の貴婦人の王さん、台北の実業家李さん、それにも増してこの旅行を計画したAさん、
ずっと同行してくれた旅行社のBさん、ありがとうと心で叫びなが中正国際空港を離れていった。

 それから5時間後に5人の顔が○○空港にあった。
空には南国で見たのと同じ星が、無数に輝き始めていた。
そこには少し疲れた顔ではあったが、快い満悦の男の顔があった。 (完)
                       
                     (○○県○○会誌原稿から 1978.3)


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12 コメント

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Unknown (せとやん)
2012-03-10 08:51:03
ハハ、楽しい大名旅行でしたね。特別の案内人のおかげで今のツアー旅行よりはるかに面白いかも。でも基本的には35年前と今とあまり変わっていないような気もしますね。
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私の (TAKAOSAN)
2012-03-10 09:27:55
おはようございます。
昨年の台湾旅行で行ったところと、殆どかぶっていますので、思い出されて楽しく読ませていただきました。
私は2回目でしたが、何度も行きたいところですね、台湾は。
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こんばんは (ytakei4)
2012-03-10 19:39:51
わたしも台北へ行ったことがあります。
2泊3日の短い旅でしたが。
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台湾の (まるこ)
2012-03-10 21:33:14
都市は日本によく似ていると思いました。特に高雄市は。日本の統治下にあった歴史を物語っているようでした。故宮博物館や衛兵の交代は本当にすばらしいですね。台湾旅行を思い出しました♪
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博物院へ行きたいなぁ。 (kikuko0917)
2012-03-11 07:10:04
男性ばかりの旅行。さぞ。楽しかった事でしょう。
博物院に行きたいなぁ。何日もかけて眺めていたいなぁ。
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大阪からお邪魔致します~♪ (鉄ちゃん爺や)
2012-03-11 14:17:25
35年前と現在では雰囲気もさぞかし変っているんでしょうな。

男性天国の風習もなくなっているでしょうね。

でも中華料理の味は中国五千年の歴史とか言いますから
同じ伝統の味の食事ができるんでしょうな。
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せとやんへ (クロやん)
2012-03-11 16:02:16
今も余り変わりませんか・・・
いやあ、あの時は楽しかったですよ。
添乗員が本場や穴場へ案内してくれたから・・・

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TAKAOSANへ (クロやん)
2012-03-11 16:06:02
私は所要も兼ねて3回ほど行きました。
まあ近くで料金も安く手ごろでいいですね。
特に家族旅行に・・・・
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yatakei4 (クロやん)
2012-03-11 16:08:39
近くて手頃でいいですね。
特には海外旅行の練習・・・・
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まるこさんへ (クロやん)
2012-03-11 16:12:52
世界を駆け巡っていますので、まるこさんは物足りないのでは・・・
まあ家族旅行には食事や観光には日本人に合いますね。
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