こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『My Humanity』長谷敏司

2014-08-17 19:44:15 | 読書感想
疑似神経制御言語ITPによる経験伝達によって高度な専門技術者を簡単に養成しようとする実験が行われていた。
しかし、ITPは英語圏の人間を基準に開発されていたため、他文化圏で齟齬が起こる。
ケンゾーたちが開発している日本文化調整接尾辞は、この欠点を解消するため、経験記憶を日本人の脳に合わせる処理手続きだった。
果たして、ITPは文化を押し潰す方向に偏っているのか?

日本人でありながら、さほど日本文化に愛着のないケンゾーと、文化を気にするジャックを描いた「地には豊穣」ほか三作品を収録した長谷氏初の短編集です。

私は中でも、この「地には豊穣」とナノマシンの急激な進化による災害とその研究者の苦悩を描いた「父たちの時間」が、より人間らしさを扱っているようで特に気に入っています。

「allo,toi,toi」は結末が悲惨すぎますし、その過程の矯正対象者の心の動きにいまいち共感できません。
そういえば「あなたのための物語」も、結末はつらかったですよね。
それでも面白い物語ではあるという共通点はあります。

「HollowVision」は、IAIAという国際人工知能機構から送り込まれたヘンリーが、軌道ステーションでテロの対抗する物語で面白いです。
ただ、まるで新大陸アメリカとヨーロッパの関係を繰り返しているように感じられて、人間って進歩しないのかと思ってしまいました。
『BEATLESS』のスピンオフ作品だそうですが、まだ読んでいないんですよね。
つい、読みやすい本を選んでしまう情けない奴です。
コメント
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