こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『車椅子探偵の幸運な日々』ウィル・リーチ

2024-08-14 20:26:15 | 読書感想
 
現在26歳のダニエルは、生まれて間もなくの頃に進行性の難病となり、今は喉に痰が絡むと吐き出せない状況になっており、呼吸停止の危険にさらされていると言える。

それでも地域航空会社の苦情メール対応の仕事もしつつ、生まれた時からの幼なじみであるトラヴィスとフットボールゲームの観戦に出かけるなど、結構楽しんでいる。

そんなダニエルが毎朝玄関ポーチから通りを眺めていると、携帯を見ながら歩いていく女学生らしき女性を見かける。
ところが彼女が初めて顔を上げてダニエルに会釈したまさにその日、やはり通りかかった車に乗せてもらって去った後になって、彼女が行方不明となり捜索願いが出されてその両親も母国から飛んできたという事態に陥っている事を知った。

要するにダニエルは彼女が誘拐される現場を見た目撃者となるのか?
その上、ダニエルは匿名とはいえ不用意にSNSにその事を投稿し、あろう事か接触してきた被疑者へ偽名にしても返信してしまう。

何と言いますか、ホラー映画じゃないけれどフラグの立てすぎじゃないですかダニエル?(^_^;)
探偵としてばかりじゃなく、成人としてかなり危なっかしいと感じてしまいます。
まあその分、ハラハラドキドキで楽しめるとも言えるのですが。

あと本題とは関係ないかもしれませんが、物語に出てきたアメリカ南部では未だに有色人種に対する差別や、選挙投票のへの妨害などを行っているというところ、古臭い考えの持ち主が多いのですね。
変な言い方で申し訳ありませんが、アルビノが一番偉いと主張しているようで(アルビノが悪い訳でもありませんが)たかが肌の色の違いだけでおかしいと思わないのですかねえ?
そういう偏見による行為を何でもないと言ってしまうところは、ダニエルも(無意識にしろ)白人至上主義的なところもあるのかな?と残念に思いました。
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『隠し子騒動 妖怪の子、育てます4』廣嶋玲子

2024-08-09 19:51:57 | 読書感想
 
久蔵の双子の娘に声を掛け、強引に父のもとへと連れて行かせた少女おまきは、自分自身も久蔵の娘だと名乗った。
久蔵はというと、おまきとまったく縁が無いわけでもないが娘として迎え入れる事は出来ないと言う。
中身は貧相なのに衣裳が豪華という、身なりがちぐはぐな状態で現れたおまきの事情とは?

幼い頃に人の世から隔絶されてしまうと、感覚がこうなってしまうのでしょうか?
騒動が収まるかにみえて、まだ火種が燻っていそうな状況。
まだまだ黒幕が隠れていそうで、今後が気になるところです。
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『spring』恩田陸

2024-08-05 20:19:38 | 読書感想
 
深津純の語りから始まるこの物語。

のちにバレエダンサーで振付師となる萬春についての話です。

JUNこと純のHALこと春の出会いは、バレエのワークショップ。
HALは時々、どこかを見ていた。
JUNも見られているようで見られていない、全体を見ているような不思議な見方が気になっていた。
HALの周りには、数多溢れんばかりの才能を持った少年少女が、きらめくばかりに存在していた。

2番めの語り手はHALの叔父の稔。
3番目は彼と同じバレエ教室に通い、のちに作曲家になった滝澤七瀬。
4番目にして、ようやくHAL本人が語り始めます。

そこまで3人の関係者が見てきたHALの真意はどこにあるのか?何を感じ考え思ってきたのか?
そういう意味では、この物語にはミステリ要素も強いのかもしれません。

あと、私の勝手な見方ではありますが、もしかしたら恩田さんは「さすがにこれは映像では再現できまい」という「挑戦状」と言うと語弊がありますが、小説でのみ描ける物語を書こうとされたのではないかと感じました。
すべての登場人物の個性がが生き生きと息づく、素敵な群像劇でもありました。
他にも現代ならではの個性もあるのですが、読んでからのお楽しみという事で強くお薦めします。
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『アンソロジー 舞台!』近藤史恵 笹原千波 白尾悠 雛倉さりえ 乾ルカ

2024-07-25 20:28:36 | 読書感想
 
舞台をテーマにし、近藤史恵さんも書いていらっしゃるアンソロジーと伺って、興味津々だったこの本。
どのような舞台が繰り広げられるのかと、楽しみにしていました。

まずは冒頭、いい意味で裏切られました。
歌舞伎に行くかと思いきや、違う方向から魅せて下さいました。
それは2.5次元の舞台。
アニメやゲームの世界を舞台で表現するというものですね。
ここではさほど売れない舞台俳優に、主要キャストの体調不良による降板によってその役が舞い込んできます。
しかし、それまでの俳優で感情移入してきた観客の動揺や拒否感、役を演じる上での他の役とは違う役者としてのオリジナリティの否定など、なかなか大変そうで。
果たして本番までに、もしくは本番中に問題は解決するのか?
とても興味深く、面白かったです。

他の作品もバレエの衣装に携わる方々の話や、劇団〇〇を連想する劇団の脇役ばかりやっている俳優の思いや、逆に観客側の物語などもあって、色々と楽しませていただきました。

特に一度でも舞台をご覧になった事のある方には、強くお薦めします。
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『化学の授業をはじめます。』ボニー・ガルマス

2024-07-18 20:10:28 | 読書感想
 
1960年代のアメリカ。
まだまだ女性の地位が低すぎる時代に、化学者として生きようとしているエリザベス・ゾット。
博士課程の頃だったか、上司に強姦されそうになり抵抗して逃れると首になり、ようやく入れた研究所でも研究成果を奪われ、能力を利用され、最愛のパートナーも亡くし、シングルマザーになった上に、そこでも失職する。
それでも料理上手でもあった彼女は、TVプロデューサーに見いだされ、生活のために料理番組に出演する。
プロデューサーの上司は男性の気を惹くセクシーさを要求するが、彼女は科学者として料理番組を進める。
それが、やはり男性優位社会で鬱屈していた女性たちに高評価で迎え入れられ、人気番組となるのだが・・・。
未だに男性優位社会が続き、女性にも行きづらい世の中ではありますが、この物語がすべての女性の希望になればと思います。
もちろん、私にとっても希望です。
コメント (2)
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