9月14日~29日
8月19日の初診から数えて延べ9日にわたる検査を終え、一週間後からは術前の抗
がん剤治療が始まる。抗がん剤治療で知っていることは『人によって副作用が酷く、
途中で中止した人もある』これだけ。コンビニの本売り場の棚に『抗がん剤治療時の
食事』なる本が並んでいた。副作用が出たからといっても入院中に自分で食事
をコントロール出来る訳ではなく『ケ・セラ・セラ』しかなかろうと、立ち読みで終
えた。肝心の食道がんは何の治療もされていないから猛スピードで増殖を続けてい
たと思われるが、この頃でも食事以外に自覚症状は何もないし、調子がよければ食
事も上手く食べられた。酒も煙草も一時中止、手術に備えて肺を活性化させるスー
フルという機械をブーブーと吹いていた。入院の手続きに行き部屋の選択をする。
個室の上は8400円/日、並は4200円/日、部屋の大きさや設備には興味はなくネッ
ト設備の有無には関心があった抗がん剤治療と名付けられているものの、使用する
薬はシスプラチンと5FU、癌細胞をやつけるのと同時に正常細胞にも攻撃をかける。
癌細胞だけに効き目あり、正常細胞には影響なし、これが良いに決まっているが癌
に対する治療、薬はそれほど進化していないことの証でもある。
おまけに副作用が酷くなり治療どころではなくなり中止することもある。それほど強
烈な薬、いや毒と同じだ。この治療に関する内容、特に副作用については詳しく説
明を受けた。自分の身体がどのような反応を示すのか全く予想できず、構えようにも
構えようを見付けられないでいた。昔々、30代前半に野球をしていて酷い捻挫で2
週間ほど入院したことがある。初めてのナイターの試合で、四球を選び2盗、3盗と俊
足ぶりを発揮したつもりが、これも慣れない初めての固定ベースに足がひっかかり、
3盗はセーフになったが瞬間から足首がおかしく代走を頼む。ベンチに戻るのも足を
着くことが出来ないからチームメートに抱えられての帰還。
ベンチに座ったまま観戦しやがて試合終了、遅くなったけど数人と我が家で呑むこと
になり、酒を呑むと痛かった足が嘘のように軽くなり足を着いて歩けるようになった。
良かったと安堵したのも束の間、酒が切れた夜中から足首が疼きだし、おちおち寝て
おられるような状況ではなくなった。悶々と朝を迎え、友人に頼んで病院に連れて行
って貰ったら、即刻入院の宣告。食事は外科なのに一汁一菜の修行僧のようなもの、
風呂は垢だらけで湯船に入る気にはなれず、二人個室という名目だが、まるで投げ込
み部屋を急遽、病室にしたようなもので窓辺に花を飾っても『掃き溜めの鶴』といったと
ころ。入院のイメージは『汚い、不味い』だが、今回はきれいな病院だから『汚い』からは
解放されたから、あとは『不味い』かどうかだけで入院ライフの質が決まる。
副作用のないように、食事が不味くないように・・・・。