入院を控えて一つしておかなければならないことがあった。前歯の1本がグラグラして
おり、このままでは拙いと思い歯医者に行き仮処置のお願いをした。歯は一寸強くす
れば直ぐに抜けそうなくらいグラグラで時折、私の仮処置『瞬間接着剤』で留めていた。
もっと早く始末しておげばよかったのに、癌の治療に行くよりも歯医者の方が怖いらし
く、尻に火が付かないと動けなかったらしい。意を決して飛び込みで歯医者に突撃,
赫云々(かくかくしかじか)でグラグラの歯を何とか仮止めして欲しいとお願いした。
暫く待つと看護師さんの呼び声、いつもながら神妙な面持ちで先生に言うと、見た瞬
間『駄目ですね、抜いておきましょうか』『接着剤でもありませんか?』『無駄なことです』
全く相手にされない。
『ならば、自分で始末します』
会計の所へ戻り『幾らでしょうか?』『何もしていなんで結構です』『初診代だけでも』と
言うが、それでも結構と言われ格好の悪い撤退となった。グラグラしていて抜けそうだけ
どもう少し頑張ってもらうことにし、このまま手術を受けようと思った。