抗がん剤治療は2週間ほどで終了、この治療により癌が退治され完治するほどの効果
はあろうはずはないから、来る手術に向けて体調を整えることに力を注ぐことになる。ま
た、抗がん剤治療自体、即効性はないだろうから、画像でチェックしても大きな変化は
ないと思っていた。
自覚症状が出たのが7月中ごろだから約2か月後の今、抗がん剤治療により癌は痛めつ
けられはずなのに、いつか先生が言った『このままだと数か月で食道は塞がります』の言
葉に近づいていた。食事をゆっくり、少しずつ注意しながら食べれば何とかなっていた
のが、注意しても調子がよくないと食べた物が詰まり、毎回のように嫌悪感を味わい、自
発的な嘔吐で収束させなければならなくなっていた。食いしん坊が生まれて初めて食べ
ることへの恐怖を感じていた。
後刻、結果を聞いたところによると、食道がんの効果的な縮小はみられないが硬化して
きたこと、胃がんは2/3くらいに縮小していた。私の場合、副作用がゼロに近かったから、
これだけでも効果があれば万歳と言えるだろう。
もし副作用で苦しみ,のたうちまわっていた結果で同程度の効果の場合、その評価は
如何に。ただ確認できない小さい癌細胞がリンパ節などに転移していたものが、この治
療で効果大であったとしても、それを知る術はないから、やはり効果は大きかったと思え
ばいいのだ。
この治療中に現状報告と手術方法の説明があった。食道下部のがんと胃の吻門部のが
んを摘出する。胃がんがどの程度のものか開けてみないと確定できないが1/3くらいの摘
出になる。摘出した部分の再建に大腸を代用することを考えているが、腸と食道の血流
が適合するか否かで変わることもある、また胃がんの部分が予想より進んでいた場合な
ど色々なケースが想定される。一番いいのは胃がんが小さく、摘出後に胃を食道に再建
することだ。手術による治療を待ち焦がれている反面、身体を切り刻むことへの恐怖感は
日に日に増していく。逃げ場のないことは分かっている。手足だけの手術は何度も経験
しているがこんな大手術になろうとは予想外だった。
ブログで何度も書いた『手術の恐怖』今までに外科の手術は何度も受けてきた。特に子
供頃は悪戯坊主だったから、木から落ちて頭をけがして縫って貰ったり、電気鋸を勝手に
使い大怪我をしたりと外科専門で病院に行くと『今度はどこですか?』と医者から聞かれた
と母の言。だから、手術慣れしているように思うが、腹を切るとなると話が全く違う。
考えただけで、怖くて怖くて、夜中に目が覚めると暫くは頭の中でこいつ等が運動会を始
める。ひょんなことから、病気と闘う赤ちゃんたちのことを思い浮かべた途端、『あんな小さ
な赤ちゃんたちですら、手術を受け沢山の管を繋がれたりしていても必死で生きようと闘
っているではないか。いい歳をした爺さんが情けない姿を見せるな』と思うようになった。
このことを境にして手術の恐怖感は皆無になり、癌と闘う意欲は更に増し、手術はこの子
供たちも応援団してくれるから、必ず成功すると信じていた。