ほとほと通信

89歳の母と二人暮らしの61歳男性の日記。老人ホームでケアマネジャーをしています。

どこにいっちゃうの?

2012-08-26 | ほとほと日記
昨日お伝えしたように、今日は納涼祭があった。
予定通り、さしたる企画もなく、サクッと終わった。

ひと段落ついた午後三時過ぎ、三人の面会客があった。
五年八ヶ月ほど前から入居されている女性に、ご長女とご長男夫妻が会いにこられたのだ。
皆さん立派な方たちである。

ご長男は数年前に病に倒れて、一時は生命が危ぶまれるほどだった。
難手術後、奥様の献身的な援助とご本人のリハビリ努力の成果で、少しずつ回復していった。
今年の初めに面会されたときは、車椅子に乗られた。
だが今日は、杖を突いてずっと自力歩行をされた。

90歳をいくつも超えたご入居者は、「だれ?何しに来たの?」と、大声で不思議そうに問われた。
認知症状はかなりある方だが、そのせいばかりではないようだった。
驚きや喜び、それから本来その方の気性奥深くに潜む「衒い」が、こんなときにも出ているように感じられた。

そして、面会が終わった約一時間後。

お部屋から出るところにバッタリ私は出くわした。
入居者の女性は、すっかり変わっていた。

「どこいっちゃうの?もう来ないの?」
と、悲しげな表情で訴える。
「また、すぐにいらっしゃいますよ」とお伝えすると、
「来るの?ホント?いつくるの?」
と、いつになく甲高い声色になっておっしゃった。

エレベーターのドアが閉まるとき、ご長男は心なしか視線を反らしておられたように思った。
入居者の女性は、介護スタッフによって大勢の入居者が待つホールに向かって行った。

こういう職場にいなければ、こういう深い感情と出会うことは難しかっただろう。




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2 コメント

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不安になります。 (がんさん)
2012-08-26 21:07:09
こんばんは。私には77歳になる母がいます。膝や腰が悪く歩行が、しんどそうですが、生活は何とか送れています。でも、痴呆になったり車いす生活になる可能性もあります。もしも、そうなったら、どうしようかと不安になります。私には資産と呼べるものはありませんし、働くこともできない現状です。心配しても仕方のないことですね。
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歩行を維持すること (ほとほと男)
2012-08-27 09:08:47
親の老後は心配ですよね。経験上、食べることと自力で歩くことが大切です。お母さんの膝と腰が悪いのは心配ですが、整形外科医で良く診察してもらって、必要なら杖や歩行器を使うのも良いかもしれません。転倒するとかなりの確率で足を骨折するので、それは防がなければなりません。一人でくらしておられるなら家事などで働いていることが認知症リスクを下げているように思います。
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