内的自己対話-川の畔のささめごと

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生成する生命の哲学 ― フランス現象学の鏡に映された西田哲学 第一章(十一)

2014-03-14 01:22:00 | 哲学

3— 最も現実的なものとしての〈生命〉

 西田哲学は、一つの生命の哲学である。とりわけ最後期の西田哲学には、「歴史的生命」の哲学という包括的規定を与えることができるだろう。この歴史的生命とは、生命一般のある特定の領域あるいは次元を指すのではない。それは、まったく反対に、すべての現象を包括する普遍的生命のことである。歴史とは、生命が具体的にそして十全に自己表現する場所のことである。歴史的生命とは、それゆえ一つの歴史的世界として自己を十全に表現する生命のことであり、歴史は、生命の自己限定の過程として自己自身を理解するということを意味している。生命は、ある場所に自己限定する諸形態、自己形成的な歴史的世界のある局面の構成を絶えず自らに与える。歴史的生命は、自らの内部に新しい形を与えることによって自らを絶えず超越していくと言う意味において無限に開かれている。西田哲学において、哲学の〈始源〉は、このような歴史的生命の論理の中で最も十全な形で捉えられている。
 私たちは、本節において、歴史的生命の論理の基本構造がよく示されている論文「論理と生命」に基づきながら、まず最後期西田における生命の定義について考察し、次いで、歴史的生命の世界を構成する四つの根本契機である〈自己限定〉〈自己形成〉〈行為的直観〉〈表現〉それぞれに西田によって与えられた規定をそれとして明確に取り出し、締め括りとして、最後期の西田哲学において生命論によって開かれた世界像を示す。