内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

「花冷え」と「桜雨」― 美しい日本語の贈り物

2021-04-14 15:40:55 | 講義の余白から

 ストラスブールは三月下旬には暖かい日が続き、桜も一気に満開となり、四月の初めにはもうあらかた散ってしまった。その後、寒い日が続いている。ここ一週間ほど、早朝の気温は零下にまで下がっている。
 ここ何回か、授業の枕として、日本の季節や気候に関する言葉を学生たちに紹介している。日本とフランスとでは気候がかなり異なるから、日本では普通に使われている表現がそのままフランスの気候に適用できるわけではないが、こんな天気のときにはこんな言葉を日本ではよく使いますよ、という程度の一口知識のような話を枕として日本語でする。
 昨日の授業では、「寒の戻り」という言葉を紹介した。例えば、『日本国語大辞典』では、「晩春のころ、急に大陸性高気圧の勢いがもり返して、一時異常に寒くなること」とある。すかさず「晩春とはいつごろのことですか」と質問が出た。何月何日から何月何日までとは答えようがないから、東京あたりの気候を基準にして、「だいたい四月下旬くらいですかね」としか答えようがなかった。
 今のストラスブールの寒さは「寒の戻り」どころではなくて、農家では農作物への冷害が懸念されるほどである。
 桜が咲くころ、急に冷え込むことを「花冷え」という。この言葉、響きも形姿も喚起される情景もみな美しい。こっちではもうすっかり桜が散ってしまったから、授業で紹介するには時機を逸してしまったが、明後日授業で紹介しようと思う。
 『花のことばの辞典』(倉嶋厚監修 宇田川眞人編著 講談社学術文庫 2019年)では、「花冷え」は、「桜の咲くころに見舞う寒さのぶり返し」と説明されているだけでなく、「桜雨」の項にも見える。

桜の花を濡らして降る雨。桜の開花期には、〈花冷え〉という言葉があるように気温が下がり風が出て雨が降る。風に舞う〈桜吹雪〉も美しいが、雨に打たれる桜も風情がある。

 「桜雨」、この言葉もまた、響き、佇まい、情景、いずれも美しい。この語も「花冷え」と合わせて紹介しよう。ささやかではありますが、美しい日本語の贈り物をどうぞ受け取ってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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