キはキモノのキ

キモノ‥愛してます

蜻蛉玉・大垣・蜻蛉玉

2007年09月13日 | 今日のキモノ

 先週の日曜日には『大垣オフ』が予定されていました。キモノ仲間のおーこさんが、家庭の事情でなかなか出てくることができない。ならば会いに行っちゃおう!という趣旨のオフ。行きたいなあと思いつつ、わたくしも近頃浮世のさだめに翻弄されて疲れ気味、行ったらリフレッシュするだろうと思いつつ、行く元気が今ひとつでどうしようかなぁと迷っていました。
 そしたら、もうひとつのことから思いがけず土日ともキモノで出かけることとなりました!

 もうひとつのこと。それは、キモノ関係のネットで知己を得たふちこまさんが、富山から名古屋にいらっしゃるという知らせ。ふちこまさんは蜻蛉玉を造っていらして、そのグループ展を名古屋栄の丸善でなさる、そのために週末かけていらっしゃるのだとか。
 ふちこまさんとはネットでだけお話してその潔い人柄に惹かれ、オフラインでもお会いしたいものだなあと常々思っていました。これはいい機会、会いに行こうかな。

 と、そんな話をしたところ、おーこさんが「葉さん、すごい人とお知り合いですね!!」と。おーこさんは蜻蛉玉作りにはまって1年とちょっとなのですが、ふちこまさんは憧れの作家さんなのだそう。ひえっ、そんなすごい人だったのか。
 おーこさんもこのグループ展には行きたい!ととても思っているのですが、家庭の事情で名古屋まで出ることが難しく、悔しくもどかしい思いでおられるとか。「是非行って見て来て、そしてどんな作品があったか教えて!」おーこさんの切なる願いが伝わってきます。
 よーし!では土曜日にふちこまさんに会いに行こう。そして日曜日におーこさんと会って、その話をしよう。週末の予定は、こうして決まりました。

 さぁ、張り切ってキモノを着ます!
 
 今日の着物:蜘蛛の巣ポリ単:竹蔵龍さん 39800円
 今日の帯:蜻蛉帯:きもの・なかむらさん 40000円
 今日の半襟:薄緑すかし模様 竹蔵龍さんよりいただく
 今日の帯揚げ:クリーム色草花模様 大須骨董市800円
 今日の帯締め:草色三分紐 きもの・なかむらさんよりいただく
 今日の帯留め:髑髏蜘蛛 竹蔵龍さん 18900円
 今日の足袋:草色水玉夏足袋:まねきや 780円
 今日の草履:酒袋台すうちゃんお見立て花緒:松屋バーゲン6000円
 今日の簪:銀粘土蜘蛛の巣:キョウコちゃん作 8000円

 季節柄、蜘蛛の巣着物と蜻蛉帯は着納めかな?「蜘蛛と虫」コーデ、着納めが初お披露目となりました。お宝同士の気合の入ったコーデ、今日の気分によく合っています。いざ出陣~~!

 会場の丸善ギャラリーに着くと、奥の方で縞の木綿を粋に着こなした女性がお客さんと話をしています。あれがふちこまさんかな?接客が終わるまで、展示されている蜻蛉玉を眺めていることにしました。

 ・・と、軽い気持ちで見始めた蜻蛉玉ですが・・あっという間に。
 魅了、されていました。

 蜻蛉玉。大きいものでも直径3センチくらい?だいたい1~2センチの小さな管玉。なのに、その中になんて大きな世界が展開しているのでしょう。じっと見つめていると、玉の中に吸い込まれてしまいそうです。
 一面の花畑があります。月夜の野原に薄が揺れています。宇宙。銀河。曼荼羅。季節を表現しているものもありました。ウサギや猫が躍動していました。作家ごとに個性もいろいろ。
 そしてふちこまさんの作品。こんな小さい玉が、なんて存在感。重なり合い響きあう色、確かな線。これは「秋の気配」?これは「祈り」?緻密で、繊細で、雄大です。ああこれはおーこさんが心惹かれるはずだわ。

 夢中で見入っておりましたところ、「葉さん、ですよね?」とふちこまさんが声をかけてくださいました。はっと現実に引き戻されたものの、心の半分はまだ玉の中に。「あ、ああ葉です、ふちこまさんはじめまして、作品、凄いですね!」話しをしつつ、なかなかうつつごころが戻ってこないのでした。

 そして‥気がついたら「連れて帰る子」を一生懸命選んでおりました。
 
 ふちこまさんと、「うちの子」を見つけてにんまりするわたくし。

 今日のこと、明日おーこさんに話そう。この玉を見てもらおう。きっと感激してくれるわ。そう思いつつ、ギャラリーを後にしました。感動の余韻で、なんだか足元がふわふわと雲を踏むようでした。

**

 翌日。この日のコーデは前日とほぼ同じ。会う人が違うからいいよね、というずぼらな理由です。
 ただし、おーこさんにみていただくため、帯留めは昨日求めた蜻蛉玉、『白蛇戦国玉』戦国玉・・古代中国の春秋戦国時代にお守りとして使われた玉の意匠を配した玉のこと、らしいです。それに、ふちこまさんに見立てていただいた帯締め、帯揚げは玉に合わせて手持ちから鱗模様のハギレを合わせました。

 さて、大垣へ。mayさんと申し合わせて同じ電車に乗り、大垣駅に降り立つとおーこさんとぶるちゃんが待っていてくれました。
 
 今日のオフのメンバー(全員で写った写真がなかったので、ちょっと合成しました)。
 おーこさんは阿波しじらかな?木綿の着物に格子の帯。自作の蜻蛉玉帯留めはウサギ模様で秋らしく。しっとりと大人っぽい着こなし。
 mayさんは綿麻の着物、この色はmayさんカラーですね。帯は紅葉模様が季節です。
 ぶるちゃんの着物は夏銘仙?夏お召し?ちょっと透けるしゃりっとした生地で、色合いがいかにも今の季節。帯はお太鼓に青海波の刺繍が。
 
 まずは、ランチ。一軒家そのままをカフェにしているから「イエ・カフェ」なのかな?と思いきや、素直に「アイ・イー・カフェ」だったらしい。
 
 のんべ組はスーパークリングワインでかんぱーい。

 ランチをいただきながら、いろんな話を。おーこさん、たいへんだね。みんなそれぞれ、いろいろあるよね。愚痴も苦労話も、話して聴いて癒される時間。
 そして、わたくしは昨日の話しをいたしました。蜻蛉玉、すごかったわ。小さな玉の中に世界があるのね。わたし、たまらなくなって求めてしまったわ。今つけている、これ。
 
 話の途中から、おーこさんの瞳がうるうると濡れてきました。
 「素敵な蜻蛉玉・・。こんなのがたくさんあったのね。見たい・・。」頬が赤らんでいます。恋する乙女のようです。
 「ねえ、大垣から名古屋って、そんな遠くないじゃん。なんなら今日、一緒に行こうよ。」「そうそう、私も見てみたいよ」
 みんなでおーこさんに勧めます。「行きたい・・主人に聞いてみるわ」

 もう行く方向。では、大垣めぐりちゃっと行きましょう。せっかくおーこさんいろいろ考えててくださったし、わたくし大垣初めてだし!

 というわけで駆け足の大垣観光。市内を流れる水間川、船町港跡。
 
 大垣は水運の町。ここから桑名までの船のルートは江戸時代から明治にかけてたいへんな賑わいだったとか。そういうところなので、川端には灯台が。「住吉灯台」跡です。
 
 ここは芭蕉の「奥の細道」の旅終焉の地でもあるということで、こんな像もありました。江戸は千住の宿を出発し、巡りめぐってここまで来た芭蕉翁。こんなところでキモノ女におもちゃにされようとは・・。

 
 川上に向かって少し歩くと、大きな水場が。大垣は水の都。澄んだ水が滾々と湧き出でています。
 えー、画面左端の写っていないところには、若いカップルがひっついて座っておりました。水面を見つつ、愛を語らっておったのでしょう。ごめんねおばちゃんたち遠慮しなくて。「わーー、きれいねえ~」「あっ、魚がいるわ~!」わあわあぎゃあぎゃあ。

 
 さて、それから大垣城へ。ここは関が原の前哨戦になった戦国時代の要所だったとか。歴史に思いをはせ、、ってmayさんぶるちゃん、何ゆえそんな顔をしていたんかいっ?!

 
 歴史散歩のあとはやっぱりこれよね。
 
 大垣名物、水まんじゅう~。冷たくってとぅるるん♪として、とっても美味しかったです。でも・・あの時は言えなかったけど今言わせてください。「カエルの卵に似てるよね!!」
 ・・いや、ほんとーに美味しかったです。お土産に買って帰りましたもん。

 ここで、おーこさんご主人に電話しに行きました。名古屋に行っていいか、尋ねているのです。戻ってきたおーこさんの顔は輝いていました。「行って来ていいって!今日は食事を作ってくれるって言ってくれたわ!!」

 ぶるちゃんとは残念ながらここでお別れして(ホント残念)、さぁ一路名古屋へ。
 
 期待にわくわくうるうるのおーこさん

 あ、しまった。また来るとは思ってなかったから、キモノ昨日と一緒だ。ズボラがバレちゃう。‥ま、帯留でこれだけ変わるってのを見てもらえるからいいかと言い訳。

 会場に着きました。ふちこまさん、お客さんと話しておられます。目で挨拶だけして、まずは作品を。

 おーこさん、吸い寄せられるように作品群に近づいていきます。溜息。ひとつひとつ丁寧に見て行きながら、「どうしてこんなことができるの~」とつぶやいています。造る者ならではの見る目が、感動をより大きくしているようです。
 mayさんも目を大きく見開いて作品に見入っています。わたくしも二度目なので少し余裕で作品を愛でました。やっぱり凄い。何度見ても。
 あれが素敵これが欲しいを言い合っていると、お客さんとの話を終えたふちこまさんが来られました。「友達を連れてきました~」さっそく、おーこさんを紹介します。

 「私も蜻蛉玉を作っているんです・・でも、ほんとうに素敵で凄くて・・」
 おーこさん、瞳は輝き頬は紅潮し。ぱあっと輝くように綺麗です。やはり恋は女を美しくするのね。ふちこまさん、丁寧に答えてくれています。隣で漏れ聞くわたくし。専門技術の話はよくわかりませんが、『芸談』に当たる話は心に残っています。

 「私も10年前はぜんぜん作れなかったのよ。でも、長いことやっていたら作れるようになった。技術は、経験さえつめば必ず向上するわ。だから、大事なのは技術ではないの。自分はどんな玉を作りたいのか、ということなのよ。それさえ大事に育てていけば、技術は後からついてくる。自分の感じるところを大切にするのが一番大事なの」。
 深くうなずくおーこさん。おとなしやかなおーこさんの、心の底にある何かに「ぽっ」と火がついたところが見えたような気がしました。うん、きっと思ったものが形をなす日が来るよ!楽しみだわ。

 「蜻蛉玉って、製作のための技術はどんどん進歩して行っているの。昔の玉で凄いのがあるって言っても、それを作る技術自体は今のほうが進歩している。金工なんかでは今ではどうやっても作れないっていうような作品もある。どうしても昔を越えられないっていうのは悲しいわ。でも、蜻蛉玉はそうじゃない。腕さえ磨けば昔を越えられる。元気が出るわ。」
 力強いお言葉。これからふちこまさんが作り出す作品、未来の古典になっていくような作品をこれからも見て行きたい。

※これらの言葉、わたくしの記憶フィルターがかかったものですから‥文責はわたくしにあります。ふちこまさん、間違ったことを書いていたらお教えください。

 いくら見ても見飽きることのない作品たち。
 見ているうちにたどり着くのはやっぱり・・「連れて帰りたい!!」。
 さぁ、われらが「買い物女王」mayさん面目躍如タイムです。

 mayさんがじ~~~っとながめ、手にとってためつすがめつしている帯留め。珊瑚色の上に精巧に色が重なった花、その間に細い筋が緻密に引かれ‥細かい細工が小さな玉をとても大きく見せている、迫力の一品。・・お値段も迫力。惹かれつつ迷っているmayさん。

 「それ、泣くほどたいへんだったの」ふちこまさんがおっしゃいます。「ひとつひとつ重ねて行って・・そうせずにいられなくて作っていたけど、もう二度と作りたくないくらいよ。しかもそれ、作っているうちに神様が降りてきて一回で失敗せずに作れてしまったものだから、失敗作が手元に残っているってこともないの。そのデザインはそれひとつしかこの世にないのよ」
 mayさんの心がぐらぐら揺れているのがわかります。本当に、見れば見るほど凄い作品。いいなああ。それに、色といい雰囲気といいmayさんにあつらえたよう。行っちゃいなよmayさん、ダイブ、キヨミズステージ!‥mayさん陥落。そして、わが子になった作品を手に笑み崩れています。

 「いい方のところにお嫁に行ってくれて嬉しいわ。いちばん気に入っていた子だったの」。ふちこまさんも喜んでおられます。
 「そんな大切な作品を、私なんかがいただいていっていいんですか?お手元に置いておきたいとは思われませんか?」
 「それはないの。私は作家ですから、作品は手元に置かないんです。お客様のもとにお嫁に行ってくれるために作っているんです。そうして手元は空にしておかないと、作家はいい作品を作れないのです」

 おーこさんも迷った末に鮮やかな緑の簪(そこに精巧な縄目の模様が踊っている)を求めました。これ以上ない、というような幸せそうな顔です。見ているこちらまでうれしくなってしまう。

 買い物を終え、ふちこまさんを囲んでみんなの笑顔。
 
  それぞれ美しいものを手に、ギャラリーを後にしました。今日はおーこさんが雲を踏むようなふわふわとした足取り。心弾みが伝わってきます。

 「葉さんのおかげで、今日は夢みたいに嬉しかったわ。ありがとう、ありがとう」
 おーこさんに何度もお礼を言っていただき、わたくしのこころも嬉しい気持ちで満たされる思いでした。ただちょっと紹介しただけですのに、こんなに喜んでもらえるなんて。人生には、何も悪いことをしていないのに責められるという巡り合せに遭うこともありますが、こんなふうに何もたいしたことをしていないのにとても感謝されるという巡り合せもありますのね。

 凄いほど綺麗なものにも逢え、歴史にも触れることができ、感謝という贈り物までもらうことができた。この週末、とてもいい時間をすごすことができました。わたくしも元気をもらえました。出会ったすべての人にありがとう、です。
 


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10 コメント

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感動秘話ですね (ラ子)
2007-09-14 13:27:18
これは感動秘話ですね。いいお話し。
キモノを通していろんな人とお知り合いになれて、
それがまた、ほかの人を幸せにしてる…。
人との出会いは不思議でもあり、ステキなものですね。
それにしても葉さんの蜻蛉玉、見たことないくらい精巧な造りですね~
こういうモノとの出会いも、一期一会ですね。
やっぱり、キヨミズステージから、ダイビング、しちゃいますね(笑)

大垣…、岐阜に住んでいながら、そんないいところとは知らなかった…。
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清水のオンナ (may)
2007-09-14 20:04:30
これから私のことをそうお呼び下され…

実に楽しかったね~
喜んでもらえて一緒に名古屋へ来られて本当によかったね~
一緒に楽しめて嬉しかったよ!ありがとう!
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かんしゃ~♪ (おーこ)
2007-09-14 20:55:59
葉さん お疲れだったのに いろいろありがとう~!

今度は季節のよい時に ゆっくりと。
水まんじゅう
初めて見た方は やはりカエルの卵みたい…と思うみたいです  
ほんのりお酒の香りのするおまんじゅうもありますので 次回はぜひこれを~

本当に楽しい一日でありました。
着物つながりで 出会えた人たち 感謝・感謝であります
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とんぼちゃん (ぶる)
2007-09-15 11:47:30
今回も葉さんの楽しいコーデに
うふふでした。

とんぼ玉
今の方が技術は進歩してるのねー。
最近はすごいのを見てないので
これを見に行ってたら ひっくり返ったかも。
次回はとんぼ玉コースまでぜひ参加したいです
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Unknown (ふちこま)
2007-09-16 07:43:36
葉さま、mayさま、おーこ様、
本当に有り難う御座いました!
いつもこのブログは楽しく拝見していて、
「なんて粋な着こなしの似合う方なんでしょう!」と思っておりましたので、
お会いできて光栄です。
その上、こんなに素晴らしくご紹介下さいまして、感激しております。
富山にいらっしゃる時には必ずご連絡下さいませ!
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ものとこころ ()
2007-09-19 16:44:12
>ラ子さん
 ものはこころを運び、こころはものに宿る。こころを込め技術をこらして作られた蜻蛉玉でした。この出合いも、蜻蛉玉がアレンジしてくれたような気さえします。
 いやー、ほんとに素敵な買い物でしたよ!大垣も素敵な町でした。こんどは是非、ね。
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清水ステージの女王 ()
2007-09-19 16:46:23
>mayさん
 いやほんま、小気味良いダイブっぷり!さすが働くオンナの底力、てヤツを見せていただきましたわ、また!

 おーこさんの輝く笑顔を間近に見られて、幸せ分けてもらいましたねー。また一緒にいろいろやらかしましょう。やくそくー。
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恋する女は綺麗さ ()
2007-09-19 16:48:32
>おーこさん
 けしてお世辞じゃないぜ~♪
 おーこさんの瞳の輝き、ほんとうに蜻蛉玉に惚れ、蜻蛉玉に淫しておられるのだなと思いましたよ!
 心から喜んでいただけることなんて、人生にそうあることじゃありません。私も、本当に嬉しかったのです。行ってよかったわ!

 大垣も、またゆっくり行きたいです。よろしく~。
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ぜひぜひぜひぜひ! ()
2007-09-19 16:50:05
>ぶるちゃん
 そうなのよ~、ぶるちゃんもぜひ、できればご主人もぜひぜひ足を運んでいただきたかったわ!
 ふちこまさん、きっとまた名古屋にも来ていただけることでしょう。そのときには必ずアナウンスいたしますから、一緒に行きましょうね!ダイブの準備もしておいてね!
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こちらこそ光栄でした! ()
2007-09-19 16:53:14
>ふちこまさん
 HPで作品を拝見して「わぁ素敵」とは思っていましたが、実物を手にとって見ると、本当に凄い!蜻蛉玉からオーラがぱあっと出ているような、迫力の作品達でした。
 あんなうつくしいものを手ずから作り出してしまうふちこまさん、親しくお話させていただいて、こちらこそたいへん光栄でした。富山に行く折にはぜひ連絡させていただきますね。呑みませう♪うれしいなあ。
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