気ままにかしまライフ

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イブキジャコウソウによるダニ駆除効果の確認実験(その2)

2021年07月18日 | 日記

イブキジャコウソウを単独で使用しても、ミツバチの寄生ダニであるミツバチヘギイタダニを駆除する効果のあることについて前回のブログで報告した。今回はこのダニ駆除効果を再度確認すると共に、ダニ駆除剤の一つであるアピバールとの併用による相乗効果についても確認することにした。

実験に供した蜂群は5群で、それぞれの巣箱の様子は表1のとおりである。

なお、「除去雄峰有蓋蜂児」の欄にはこの春から実施してきたダニ駆除対策の一つとして、繁殖のためダニが選択的に侵入する雄峰巣房で蜂児が有蓋(蛹)になった時点で切り取るという処置の実施状況を示した。しかし、「下段針金下(部分切り取り巣枠)」の処置回数は明確な記録を取っておらず、記憶に基づく実施回数を表記したため、若干不確かである。なお、この雄峰有蓋蜂児の除去については、こちらのブログに記載した。

実験は、イブキジャコウソウを単独で入れた巣箱とイブキジャコウソウとアピバールを併用した巣箱の2種類準備した。なお、G群は前回報告のイブキジャコウソウ単独での効果確認をした蜂群であるが、表1ではそれも含めて表示している。各群共アピバールは巣箱に3枚挿入し、イブキジャコウソウは100gの生葉を入れた。なお、イブキジャコウソウは6月から約一ヵ月花を付けるが、その後茂りすぎによる蒸れが原因で枯れ上がるため適度に風通しをよくするための剪定が必要となっており、今回はその剪定を兼ねて切り取ったものを利用した。巣箱の底にはトリカルネットにガムテープを張り付けた粘着トラップを設置した。

昨年実施したイブキジャコウソウとアピバールの併用によるダニ駆除を試みた際、投与開始から約9時間までの間に多数のダニの死骸が巣門前滑走路で確認出来たものの、その後は確認することが出来なかったため、イブキジャコウソウのダニ駆除の効果発現は短時間であると思われたこと、今回試しに実施したG群の実験では21日間粘着トラップを入れていたところ、ガムテープがあちらこちら食い破られていたこと、などから粘着トラップの設置は短期間であった方が望ましいと考え、設置期間は一週間程度とした。

実験の結果を表2に示す。

トラップされたダニの数は、ガムテープ1枚ごとに慎重に数えたが、一部重複や漏れがあると思われること、特に多数のダニが見られたH群のトラップ数は誤差が生じていると思われる。さらに、ガムテープが齧られ破れている個所があること、ガムテープをトリカルネットから剥がす際に一部のダニが脱落してしまったことなどもあり、数が若干少なくなっている可能性もある。

表2から、今回の実験ではトラップ出来たダニの数にはかなりの違いのあることが分る。ダニのトラップ数が他と比べると圧倒的に多いH群は、こまめに雄峰有蓋蜂児を駆除していなかった蜂群である。このことから、逆にH群以外では春から実施してきた雄峰有蓋蜂児切り取りによるダニ駆除効果が得られていたのではないかと考えられる。なお、H群は針金だけを張った巣枠に出来た雄峰有蓋蜂児を巣枠ごと取り除いた4月下旬、切り取り巣板を入れる作業の際、巣箱内に入れる余地がなくついついそのままになっていた蜂群だった。

今回の実験の目的の一つであったイブキジャコウソウとアピバールの併用による効果確認は、今回の実験の範囲では明確にはならなかった。これは、イブキジャコウソウとアピバールを併用したI群は、イブキジャコウソウ単独使用のE群よりもトラップされたダニの数が少ないことからそのように考えられる。原因は、アピバールの使用時期は春と秋が望ましいとされ、そもそも夏場の使用は推奨されていないことからアピバールのダニ駆除効果が十分に発現されていなかったことも考えられる。それよりも実験結果を左右したのは、実験開始時の各群に寄生していたダニの数と考えられる。そのため、本来はシュガーロール法にて予め各群のダニ寄生率を調べておくべきだったが、前回のブログにも記した通り、明らかにダニの寄生が認められた蜂群においてもシュガーロール法によるダニ寄生率はゼロという結果になったため、今回の実験では事前の寄生率調査は行わないことにした。なお、寄生率が何故正しく求められなかったのかについてその後京都産業大学ミツバチ産業科学研究センターの高橋准教授に伺ったところ、①大匙2杯よりも多くの粉砂糖を使い、②ミツバチは場所を変えてサンプリングし3回実施の平均値を求めるのが良い、とのアドバイスを頂いた。今後実施する際には気を付けて調査したいと思う。

なお、ミツバチヘギイタダニは6月中旬頃から増殖を始めるため、夏場のダニ駆除が重要となっているが、先に記したようにアピバールの使用は推奨されておらず、もう一つの動物医薬品として承認されている既存ダニ駆除剤も耐性ダニがいるため使用できるか否かを事前チェックしなければならず面倒であること、また昨年発売された有機系ダニ駆除剤(タチジャコウソウ成分を主成分とする)も気温が30℃以下でないと使用できないことなどから、夏場のダニ駆除に養蜂家は苦労しているところである。そこで、春からの雄峰有蓋蜂児の除去と、イブキジャコウソウを巣箱に入れる方法との併用がダニ駆除に有効ではないかと考えられる。

実験後の粘着トラップの様子を写真1と写真2に示す。いずれの写真もイブキジャコウソウとアピバールを併用した蜂群の粘着トラップである。

写真1 I群(確認出来るダニは6~7匹)

写真2 H群 (多数のダニが確認出来る)

なお、今回各群とも100gのイブキジャコウソウを使用したが、巣箱周りで死蜂が数十匹出た巣箱があること、写真3に示すように巣箱の外にミツバチが多数出ていることなどから、イブキジャコウソウの量が多すぎたということもあるかもしれず、今後は使用するイブキジャコウソウの最適量の検討も必要ではないかと考えている。また、写真4に示すように日当たりが他の蜂群よりも悪い巣箱に入れたイブキジャコウソウにカビが発生していたため、入れるイブキジャコウソウが生であることを考えると注意しておく必要あると思われる。

写真3 巣門前に多数のミツバチが出ている蜂群(粘着トラップ入れていない6枚群)

写真4 カビが発生した様子

今回は実験群のバックグラウンドが一部不明瞭であったり、実験結果の評価が必ずしも十分正確ではないなどの問題点もあるが、大きく括ると次のようなことが明らかになったのではないかと考える。

(1)イブキジャコウソウ単独で用いてもミツバチヘギイタダニ駆除に効果がある。

(2)夏場におけるイブキジャコウソウとアピバールの併用効果は今回の実験の範囲内では明らかではないため、秋などに再試験するなど今後も検討が必要である。

(3)ダニが選択的に繁殖のため入り込む雄峰巣房の有蓋切り取り駆除法とイブキジャコウソウ生葉駆除法を併用するとダニ駆除効果が高まる可能性がある。

(4)ダニ駆除のためのイブキジャコウソウ最適量は今後検討する必要がある。

なお、現在ニホンミツバチを飼育していないため、ニホンミツバチへの利用については検討出来ていないが、今後の検討課題の一つとしてアカリンダニ対策としてニホンミツバチへの利用が考えられる。アカリンダニは小さなダニで気管支内で繁殖することでミツバチを弱らせ、最後は蜂群を崩壊させてしまう恐ろしいダニである。そして、その被害が全国に広がっている。このアカリンダニ駆除にはメンソールクリスタルなどが広く利用されているが、西洋ミツバチのダニ駆除剤も有効とされている。そのため、この西洋ミツバチのダニ駆除に効果のあったイブキジャコウソウがニホンミツバチのアカリンダニ対策として利用できるか否かの検討も必要と考えている。