目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

インビクタス 負けざる者 ★★★★★

2010-12-28 21:15:31 | ★★★★★
この映画はアパルトヘイト政策下にあった南アフリカ共和国で人種差別政策を撤廃し、民主的な選挙により当選した黒人大統領ネルソン・マンデラと南アのラグビーチームの白人のキャプテンの交流を軸に、ラグビーチームがワールドカップで実際に優勝した史実を基にした映画作品。

クリント・イーストウッド監督、モーガン・フリーマンとマット・デイモンが主演。実際にネルソン・マンデラとモーガン・フリーマンは面識があるそうで、それを知ってから映画を思い返すと非常に感慨深いものがあります。何せ、結構この話って最近の話をモチーフにしているんですよね。ネルソン・マンデラ氏も歴史の教科書に載るレベルの偉人ではありますが、まだ存命ですし。存命の偉人を演じる、というのもまた難しいと思うのですが、モーガン・フリーマンは序盤から完全にネルソン・マンデラにしか見えませんでした。この手の映画は人種差別の背景に思いを馳せながら鑑賞すると非常に最初から泣けます。なにせ、ネルソン・マンデラが刑務所に27年間入れられていて釈放されるところから映画は始まり、最初の数分で大統領となるまでをさらっと描いてしまうわけですが、この27年間の重さたるや想像を絶します。そういう史実に思いを馳せつつ画面を見るともう大統領執務室に入っていく最初のシークエンスで既に結構感動してしまいます。うーん、史実は映画作品や小説よりも重たいですね。世の坂本龍馬作品に皆が感動してしまうのも坂本龍馬が実在の偉人だからなんですよね。そこへもって、相当の実在感で迫ってくるモーガン・フリーマンの演技は見事としか言いようがありませんでした。

筋書きとしてはそれほど難しい映画ではなく、かなりあっさりと優勝までを描いているのですが、ネルソン・マンデラがワールドカップを通じて南アでの白人と黒人の融和を言葉と行動でそれぞれ訴えかけていき、最終的にはそれが優勝という形で一つの映画的には結実を見せる、という筋立てには素直に感動しました。実際には南アでは経済問題も人種問題に起因する就職問題、移民問題など未解決の案件はまだまだ山積していますが、それ以上にこの当時奇跡といわれたラグビーチームの優勝までの道筋がマンデラを通じて描かれています。

これは傑作と思いました。歴史的背景をある程度頭に入れてから鑑賞すると、よりいっそう楽しめる作品とは思いますが、それがなくてもとても楽しめる作品です。

ちなみにラグビーが題材ですが、スポーツものの映画とはかなり描写が異なり、そのあたりは結構あっさり描かれているのでそこをスポ根モノと思って観ると非常に期待を裏切られるように思います。


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