Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

若手のアニメーション作品

2009-05-31 02:11:15 | アニメーション
イメージフォーラムで開催されている「ヤング・パースペクティヴ2009」に行ってきました。今日はアニメーションのプログラム。ちなみに6月13日にも同じものが上映されます。

上映作品は、

「おるすばん」
「東京ミンチ」
「水平線に近づく為に」
「日曜日ノ昼下ガリ」
「COMETO」
「notice Bhim」
「車窓」
「ハピー」
「ぐるぐるの性的衝動」

の、9作品。

この中から一番気に入った作品を選ぶとしたら、最初の「おるすばん」ですね。これは注目の若手・坂元友介の監督作。既に彼を特集した上映会も催されているほど、評価されている作家です。
「おるすばん」は「電信柱のお母さん」に続いて珍しく2Dのアニメ。彼は人形アニメの印象が強いですが、技術の幅が広いんですね。
さてこの作品は、画面が動きません。「浮楼」や「地球の果ての果て」と同趣向のアニメーションです(後者は少し画面が切り替わりますが)。カメラの位置もズームも変化しません。ただ、短い章立てで構成されているので、場所は同じですが場面はこまめに転換します。幕を挟んで同じ舞台で様々なことが行われる演劇みたいなものと思えばいいでしょう。
しかし、かなり奇妙な世界ではあります。「坂元ワールド」全開と言っていい。家の前の芝生を何人もの人が泳いだり、地面に投げ捨てたはずのジョウロが巨大化して空から降ってきたり、ケーキが空を飛んでいってしまったり、家が機械化して立ち上がったり。これは全て少年の留守番中に起きた出来事で、たぶん少年の空想ないし妄想を表現したものと捉えることができるだろうと考えられます。

ただ、ぼくはかねがね思っているのですが、なんでもかんでも「少年の空想」に還元してしまっていいものか。子ども時代には色んなことを空想して不思議なことが起こったように感じるものさ、なんて大人は言って、そのようにそういう作品を見ますが、なんとなくしっくりこないのです。これは少年らしい空想を描いた作品だ、という言葉は、非常に大人じみていて、なんとなくうそ臭いのです。見るのなら、本当に起こった出来事だ、と完全に子どもの気持ちになりきって見るのが望まれる姿勢だと思うんですよね。子どもらしい空想だね、ではなく。しかしそもそも、本当に子どもというものはこのような奇妙奇天烈な妄想をするものなのか、ということも疑問です。確かに色々なことを夢見て想像を膨らませはしますが、大人の作った作品というのはその誇張ですよね。誇張だからこそ、これは少年らしい空想だ、という大人の考え方が入り込んできてしまうような気がします。だから、ぼくが望むのは、本当に少年の目線に立った、したがってたぶん地味になるであろう物語です。子どもの心の延長ではなく、まさにその心そのものが全てであるような、そういう作品が見たいですね。子どもの心をもった大人は詩人と呼ばれますが、大人の詩人の作品もいいです。けれども、そんなに洗練されていない、もっとごつごつした手触りの素のままの作品というのも見たいものです。

長く書いてしまった。
「東京ミンチ」はよく意味が分からなかったなあ。人々がミンチにされてるってことなんでしょうか…?あの電車から出てくるどろどろっとした物質の質感がなかなかよかったです。ちょっとその動きに引っかかったんですが。

「水平線に…」は、とにかく暗いアニメーション。こんなにとことん暗鬱なアニメーションは、そんなに見たことがありません。胎児のまま年老い、白骨化する、というアンビバレントでグロテスクなイメージ(たとえば老婆が子を孕むような)が基になって出来上がっているような気がしました。違ってるかもしれないですけど。ムンクの叫びのような人物たちがひたすら殺し合い、相手の肉を噛みちぎります。血飛沫。暗い。

「日曜日…」はすっきりしたいい作品。CMで使えそう。

「COMETO」は独特のセンスを感じました。

「notice Bhim」は床屋の店頭にあるあのぐるぐる回ってるやつをアニメートしただけの作品で、?。

「車窓」を制作した人が会場に来ていました。この人はどこか別のところでも見た覚えが…。古澤龍さんね、覚えておこう。作品は、電車の中でうつらうつらしている若い男性の目に、小さな魚が車内を泳いでいるのが見えました、というもの。嫌いな作風ではないですが、やはり幻想的な「おるすばん」と比べると、若干弱いかな、という印象を捨て切れません。更に内容に膨らみをもたせるといいのかなあ。短すぎるので。でもこのミニマルな感じに作者は拘っているのかもしれませんね。ところで題名は「車窓」ですが、あんまり窓は関係なかったような…

「ハピー」はなかなかよかったです。ユーモアと哀しみがあって。お腹に物を詰めて赤ん坊ができたように見せかけている妻と、それに気付かない夫。しかし最後に服の下からぽとりと物が落ち、赤ん坊ではなかったことが明らかになります。手で顔を覆う妻。しかし夫はまたそれを服の下に隠し、お腹を撫でてやります。そして明確な表情のない夫の顔のアップ。表情が見えないだけに、ぼくはそこに一抹の哀しみを見てしまいました。ちなみに、最初と最後のカットの意味がよく分かりませんでした。

最後に「ぐるぐるの性的衝動」
交差点や公園を実写のコマ撮りでぐるぐる撮影しただけの作品。一分おきに、24時間も撮影していて、これはものすごい大変な仕事だぞ、と思いました。どうってことはないのですが、制作の裏側を想像すると、けっこう楽しめます。

帰りの山手線、クーラーがついていました。今日は涼しいのに、なぜ?


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