何を書こうかと、ぼくはいまパソコンの前で考えている。
蚊がパソコン画面の前を時折り横切るのを見やっては、かつてのぼくは文字通り「蚊も殺せない男」だったことを思い返す。いまではほら(と言ってぼくは蚊を叩く真似をする)、思い切ってやってのけられるんだよ。まだ躊躇いは残ってるんだけどね、なかなかそれだけは消えてくれないのさ、風呂垢みたいにね。
さて、と言ってぼくはしばし放心する。何も考えない。ただぼんやりしている。すると右腕が痒くなってくる。さっきの蚊に血を吸われたんだろうか。やれやれ。ぼくは比較的蚊に食われやすい方なんだ。そういう人は実際いるらしい。ぼくみたいな人は。
で、何を書こうか、とまた悩む。遊覧船に乗ったことを書こうか、神保町を歩いたことを書こうか、フレデリック・バックの絵を見たことを書こうか、それとも、自分の気懸りを書こうか?
また、ぼくは迷っている。「話のネタ」はある。でも、それらを全部書くわけじゃあない。よい思い出は文字の形で残しておきたい気もするけれども――まあ、ぼくにも色々事情があるんだ。
背中が痒いから掻く。すぐによくなる。そしてまたしても書くことがなくて頭を悩ませる。頭をちょっと掻く。眉間を掻く。そろそろクーラーを止めようかな。いや、これを書き終えてからでいいや。ああ、ぼくは書いているんだな。いつの間にか、585文字も書いているんだな。
とりあえず、気懸りはきれいさっぱり消えてくれればいい。いつも何かしらはあるんだけどね。さあ、寝ようか。明日も早いぞ。
蚊がパソコン画面の前を時折り横切るのを見やっては、かつてのぼくは文字通り「蚊も殺せない男」だったことを思い返す。いまではほら(と言ってぼくは蚊を叩く真似をする)、思い切ってやってのけられるんだよ。まだ躊躇いは残ってるんだけどね、なかなかそれだけは消えてくれないのさ、風呂垢みたいにね。
さて、と言ってぼくはしばし放心する。何も考えない。ただぼんやりしている。すると右腕が痒くなってくる。さっきの蚊に血を吸われたんだろうか。やれやれ。ぼくは比較的蚊に食われやすい方なんだ。そういう人は実際いるらしい。ぼくみたいな人は。
で、何を書こうか、とまた悩む。遊覧船に乗ったことを書こうか、神保町を歩いたことを書こうか、フレデリック・バックの絵を見たことを書こうか、それとも、自分の気懸りを書こうか?
また、ぼくは迷っている。「話のネタ」はある。でも、それらを全部書くわけじゃあない。よい思い出は文字の形で残しておきたい気もするけれども――まあ、ぼくにも色々事情があるんだ。
背中が痒いから掻く。すぐによくなる。そしてまたしても書くことがなくて頭を悩ませる。頭をちょっと掻く。眉間を掻く。そろそろクーラーを止めようかな。いや、これを書き終えてからでいいや。ああ、ぼくは書いているんだな。いつの間にか、585文字も書いているんだな。
とりあえず、気懸りはきれいさっぱり消えてくれればいい。いつも何かしらはあるんだけどね。さあ、寝ようか。明日も早いぞ。