貯めていませんか「睡眠負債」(3)
日本人の平均睡眠時間は世界で最も短いといわれています。「毎日が睡眠不足だあ」という方も多いのでは。
慢性的な睡眠不足は「睡眠負債」となり蓄積され、命にかかわっるかもしれません。そこで、睡眠負債を解消する方法や質の良い睡眠を得るにはどうすればよいのか考えていきましょう。
イライラ、集中力散漫・・・睡眠負債の弊害とは(1)
単なる睡眠不足とは異なり、睡眠負債の害は、ただ「寝ても疲れが取れない」だけではないのです。
眠気による弊害のほか、心身の健康にも大きな影響を及ぼすと言われています。
睡眠負債の弊害として代表的なものが、日中のパフォーマンスの低下なのです。
日中も眠気が残るだけではなく、脳と身体の疲れが十分に回復していないため、脳の働きは酩酊状態(お酒を飲んで酔っているような状態)のときと変わらないレベルにまで低下してしまうともいわれています。
重大な事故につながることもあり、1986年に起こったスペースシャトル「チャレンジャー号」の爆発事故は、作業員の多くが多大な睡眠負債を負っていたことによるヒューマンエラーだという説が有力視されています。
事実、睡眠負債が貯まっていると、「マイクロスリープ」という現象が起こることが確認されています。
マイクロスリープとは、日中に1~10秒ほどの短時間、本人も気付かないうちに眠ってしまう現象のことです。
脳が覚醒を維持できないほど強く睡眠を欲しているとき発生するといわれており、3~4日ほど睡眠不足の日が続くと起こりやすくなります。
チャレンジャー号だけでなく、仕事中や運転中の事故などではっきりした原因が分からない人的事故は、ほとんどがマイクロスリープによるものだと考えられています。
そのほか、睡眠負債が貯まると、認知症を引き起こすといわれる物質「アミロイドβ」が沈着しやすくなったり、免疫力が低下して発がんリスクが高まったり、血糖値を下げるインスリンの分泌が減って糖尿病のリスクが高まったり、神経機能が低下してうつや不安神経症にかかりやすくなったりと、多くの健康被害を招きます。
アメリカの研究では、国民の平均である7.5時間より3時間近く睡眠時間が短い人は、6年後の死亡率が1.3~1.4倍ほど高いという結果が出ているほどです。時には命を脅かすこともある睡眠負債を返済する方法はどのようなものなのでしょうか。
次回は、睡眠負債の返済法についてお話しします。