稽古なる人生

人生は稽古、そのひとり言的な空間

No.79(昭和62年8月13日)

2019年11月09日 | 長井長正範士の遺文


○小野派一刀流大太刀組太刀の中で主な仕方の足ずかいを次に挙げると、

二つ勝:
仕方は一つ勝のように進む心で切落し、切落しざま一拍子で打方ののどを突き、
打方が左上段に引取る左小手を打ち、打方の動静を監視しながら、右、左足と引
き間合を離すと、打方から続いて再び深く正面を打ちにくるから、早くもその心
を読んですかさず進んで切落しざま一拍子で打方ののどを突き勝つ続き技につか
う足ずかいである。

従って打方は仕方が右足を引き左足を引くと同時に呼吸を合わせ追い込んで二度
めの打ちを出す。その心理は仕方に初めの技の打ちと、次の技の打ちとの二つの
係りあいの進退について、心の糸を相手の心につなぎ(打、仕とも)これをゆる
めず、断ち切らず、よく引っ張って引寄せもし、送り出しもして、待中懸、懸中
待のところを弁(わきま)えて行うところに意義があるのです。

このように説明すると感じられるのは、なぜ仕方があえて前の足の右足から先に
後へ引き次に左足を後へ引くのか疑問が少し解けて来たように思います。そうで
す、その通りで、このポイントは左足が地に着くか着かないかの瞬間(左足が軽
く着き、まだ重心が前の右足に残っている時)切落とすように心がけてやること
が大切で、これに反し、仕方の左足が完全に地について重心が両足の中心になる
まで打方が打って出るようなことをすれば、この技は死んでしまうのである。

一つ勝って油断するな、もう一つ、すかさず打つぞの意をもって打って出れば仕
方は大変勉強になる。「一刀流極意」の本には書かれてないが、この左足をふん
ばって打ちに出ないよう、左足をやわらかく踏み、サッと右足で打つための手助
けをする女房役が左足と心得てやって頂きたい。

小野派一刀流ではこのように前の右足から先に左足の後へ引く足運びが多いので
ある。次の技はより一層左足の大切さを教えている。

下段の付・中正眼:
この技の中正眼という構えを先に説明すると。大正眼と正眼との中に位する正眼
であって、守りの中に攻めのある体勢と気力のこもる構えであり、右足先を爪立
て、左足の爪先へ近く引きつけて構える。この構えを中正眼ということを先ず念
頭において貰いたい。

この技は下段の付と中正眼との二つの技だけにしぼって説明すると、(中略)打
方が仕太刀を急に右下に払いくじくので仕方はこれに応じて急に右小手を中心に
左手上げ、刃のほうを右に切先を下に、くるりと手首を廻し打太刀をはずす。打
方が体をとり直し、右上段にかわるところを仕方は表から両手首を右から左に返
し、打方の右上段の小手を打ち右上段に構える。そして仕方は打方を眼下に見お
ろし、右、左足と引き乍ら右上段から中正眼にまでかわるところを、打方が面を
打ちにくるから、仕方はそれを軽快に切り落して勝ち、打方が右上段に引きとる
その小手を打ち、左足から引いて下段残心にとる。

大体以上のような技であるが、この時の仕方の中正眼の時の切りは軽快で速妙で
あれと教えてある。この所を何遍も繰返し修練すれば如何に左足の軽快な働きが
大切かがわかるのである。ここがわかり体得(足おぼえ、手おぼえ、体がおぼえ
る)すれば以上のような単調に固まることなく、己れが思うままに品をかえ、相
手を動かし、己れ従わせて、相手を自在につかう工夫が大事であるから更に此上
とも稽古を重ねるよう教えてある。私は目下それを組太刀の形だけにとどまらず
竹刀剣道で元に立った時、努めて修錬に励んでいる。

摺上(すりあげ):
(中略)仕方が右上段にかぶり、打方を眼下に瞰おろし、動静を監視し乍ら、右、
左足と二足引き(この時、打方は正眼から仕方が右足を引く時に調子を合わせ、
わが左足を前に運び、仕方が左足を引くと(続く)
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