渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

研ぎ

2021年12月15日 | open

母からの依頼で母の友人の包丁を
研ぐ。

結構傷みまくりの状態をようやく
ここまで持って来た。


研ぎ慣れない人が何度か研いだら
しく、出刃の鎬を潰してベタの平
研ぎで和包丁を駄目にしてしまっ
ていた。
和包丁の鎬は刃物の骨ではない。
日本刀と全く同じ機能と存在の意
味を持っている。
鎬が無くば楔作用の割断力が得ら
れず、本来の機能を発揮できない。
そして、鎬は日本刀も和包丁も
きっちりとエッヂが立っていない
とならない。
ぬぺ〜っとした丸まった鎬は鎬と
しては駄目なのだ。鎬の意味が無
い。
鎬はピンコ立ち。これ日本刀と和
包丁の絶対不動の定理なのだ。




どんどん押して行く。




鎬線が甘い所、Rのおかしい箇所
を片目で確認して成形と整形の
狙いを定めながら押して行く。






鎬は砥石のみで立てて行く。
鎬を蹴ったら音が変わるので即判る。
万一蹴ったら、周辺全体を包丁の断
面の相似形が崩れないように均しの
押しをかけて整形して行く。


鎬を蹴ると音で判るが、鎬が立って
来ると、これも砥当たりの感触で感
知できる。








研ぎは全て感知力にかかっている。
角度の微細な決めや、今どんな状態
であるかを認知するには、超ウル
トラ繊細に感知して行かないと研
ぎはできない。




裏は一応錆切りはしたが、ひどい
状態だった。





さらに鎬を整える。














まだ下地研ぎ。
刃部を成形していく本研ぎの段階
にさえ入っていない。

包丁がひどい状態でも、砥石さえ
あればなんとか復元再生できる。

刃付けと研磨の本研ぎ段階を経た。









止め刃を施していても滅法切れる。
刃角は鈍角。
刃先の光る髪の毛ほどの小刃の幅
の中に三層。私の早月(さつき)流
の研ぎだ。
摩擦係数を変化させることにより、
被切物体に吸い込まれるような切
れ味をみせる。

再生研ぎ完了。





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