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渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

止め刃

2022年06月06日 | open
 
私はナイフの研ぎでは止め刃を
付ける。
これはどんなナイフでも。
理由はベタ研ぎ平面延長のみの
切り通し
の研ぎと比べて刃持ち
に雲泥の差がある
からだ。
私は出刃包丁にも止め刃を付け
る。
切りに使う日本刀にも止め刃を
付ける。
彫刻刀にも付ける。
光に透かして反射させて初めて
それがある
と判る程の細い刃を。
 
鋭利とは刃先を薄くすることで
はない。
エッヂを立たせる、ということだ。
刃先は鈍角であろうと、エッヂ
が立って
いることが即ち切れ味
と関係してくる。
ベタ研ぎのまま刃物を使うと、
すぐに刃先
は丸まったり、刃
マクレを起こしたり、
刃こぼれ
を生じたりする。すぐに切れな
なる。
 
日本刀では、現代では切ること
が一般的
はないので止め刃
を付けない美術研ぎ
が蔓延
している。
そのまま切ると、例え畳表だろ
うと刃先
はすぐになめる。刀
であってもだ。
これも光に透かして精査しない
と判らない
程の小ささで刃先が
マクレる。
ベタ研ぎはそうなる定めなのだ。
物理的
に。
 
止め刃は厳密には糸刃や小刃と
も異なる。
心得ある日本刀研磨師は試斬研
ぎでは止め
刃を付けるが、切り
の世界の実態を知らな
い研ぎ師
はベタ研ぎを何度も繰り返す。
切れなくなったからと試斬研ぎ
を依頼され
てまたベタ研ぎで刃
先をただとんがらす。
切ると、即また切れなくなる。
それの繰り返し。
刀はだんどん痩せて行く。
根本的に「切る」事について
の知見が
浅いのだ。研ぎ師自身
が自分で切らないからだろう。
高番手の天然砥石で、アングル
を決めて
それをぶれさせずにひと
撫でかふた撫で
して止め刃を付
けるだけで耐久性が格段に
異な
ってくるのに、知らないからか
それを
しない「研ぎ」が世の中
には多すぎる。
研ぎとは平地を研磨する事でも
刃先を
やみくもにベタで尖ら
せることでもない。ベタは
バカだ。いわゆるバカ研ぎ。
研ぎとはエッヂを作る事
のであるの
だが、きちんと
そこの意味と理論と技法を
理解して
いる研ぎ手は世
中存外少ない。
 
日本刀にも試斬前には止め刃を
付ける。


新聞紙1日分。吸い込まれるよう
に切れる。



畳表。備後表なので1枚が二重織
であり、
実質的に通常の畳表
2枚巻きに相当する。


極限の下まで切った際、心棒の木も
畳表
もろとも一刀両断で切断し
てしまった
(斬鉄剣小林康宏刀)。




日本刀は骨を断つを良しとする。
これは700年以上前から何一つ
変わって
おらず、日本において
ずっと言われて来
たことだ。
刀なのだから。絵に描いた芸術家
の焼き
物作品ではないのだから。
人の命を守る
ものなのだから。
当然、在りようは歌詠みや蹴鞠と
は違う。

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