渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

ノーマルスタンダードソリッドとハイテク ~キューのシャフト~

2022年06月03日 | open

ビリヤードキューのシャフトは、
いわゆる日本でノーマルシャフ
トと呼ばれている物は英語で
は「オリジナルシャフト」と呼
ばれる事が多い。(カスタム
キューの場合)
私はソリッドと呼ぶが、これは
ハイテクシャフトの中空構造に
対して構造を表した呼び方で、
直訳すると「無垢」だ。
ただ、ハイテクシャフトには貼

り合わせのべニア構造もあるの
で、総合してソリッド+スタン
ダードの呼称で概念表示する
事が私は多い。
私はノーマルシャフトという呼
び方はあまりしない。

無垢造のシャフトについてそう
いう呼び方をするのならば、ハイ
テクシャフトはアブノーマルシ
ャフトと呼ぶのが妥当になって
しまうからだ。


ハイテクが良いかスタンダード
ソリッドが良いかは、完全に

好みによる。
ハイテクやカーボンが何が何で
も優れているという感覚を持っ
ている人がいるとしたら、それ
はあまりにも目が昏い。

また逆にソリッドがすべてに
おいて卓越していると過信する

人もまた然り。物事を解ってい
ない。

キューのシャフトの両者には
両者の特質があり、どちらも
メリット・デメリットがある。


両者による手玉の動きは全く異
なる。

ソリッドは、野球で例えるなら
ば、変化球を投げればすべて
変化球になるようなシャフトで
ある。

一方、ハイテクシャフトは、す
べて直球にしかならないが、打
者がバットに当てた時には、全
部跳ね返り方が異なる球になる、
というものに近い。
これらは物理的にそうなので、

その現象を何ぴとたりとも否定
できない。
ハイテクシャフトは真横を撞い
てもほぼ手玉がほぼ直進する。

ソリッドシャフトは真横を撞く
と撞いたほうと逆に手玉がずれ
て進行する。いわゆるトビ。
なので的玉に手玉が当たる厚み
に人間が補正をかけて軌道を予
め予測する。

この時のズレを業界ではトビと
呼び、補正行動を見越しという。

ハイテクシャフトには球の重な
りの見越しはほぼ要らないが、

手玉に回転をかけた場合は的玉
は歯車の原理で横にずれるので、
その的玉の軌道についての見越
し補正が必要になる。
ソリッドだろうがハイテクだろう

が、見越しは絶対に必要だ。
「ハイテクシャフトはトビが少な
いゆえに見越しがいらない」と
か言うプロやアマが結構いるが、
物事を解っていない。手玉に
横トビが少なくとも、イングリッ
シュが乗っていれば先玉はズレる。
結果としてそれの見越しが必要
になる。キューというものはどの
キューであっても、人間による
補正行動無くしては的玉を入れ
る事は不可能だ。ポンポコ玉入れ
だけしていれば巧者と思っている
アマやプロに限って、物事の物理
について考察を深める知的活動
を放棄している人間が多い。
そういう人間は、いくら試合に
強くとも一代で終わり。物事の
道理を頭脳で理解していないの
で、次世代の後進の指導にあたる
事は不可能だ。物事を自分が解か
っていないから人に説明や教育
ができないからだ。学識無き者
が教師にはなれないのと同じ。
知の伝達ができない者は指導者
にはなれない。知性が無いから
だ。当然、知的活動などはでき
ない。いくら玉を入れたり当て
たりしても、歴史の中での人間
社会の構成員としての実のある
功績は作れない。

もう一つ違う動きは、ソリッド
シャフトは手玉が的玉と当たった

時の分離角度は大きく開いて割れ
る動きをするが、同じ撞点の

同じ水平撞きの場合、ハイテクシ
ャフトは大きく開いて割れずに縦
に鋭角に分離する。

これは押し球でも引き球でもそう
なる。

一見ハイテクシャフトのほうが
キューが利いて切れているように

見えるが、そういうことではない。
切れとは別な現象の問題。

一般的な水平押し撞きで撞くと
このような割れの違いが出る。
ハイテクシャフトだからキュー
が切れるのではない。この割れに
ついてはキュー切れとは別次元の
現象を指す。

これは一般論であり、ソリッド
シャフトでも、ハイテクシャフ
トのような軌跡を描くシャフト
を作ることはできる。
また、撞き方次第でハイテクシャ
フト軌道をソリッドシャフトで
出すことも可能だ。
結論的には、ソリッドシャフトの
ほうがハイテクシャフトよりも
玉の出し方のバリエーションが
多いために多種多様な玉筋を得る
事が可能だ。これは物理的に。
しかし、それはキューの動きと
効能を知悉しきっている上級者
によってしか実現できない。
その「割れない撞き方」は、上級
者は知悉しており、ソリッドシャ
フト遣いの上級者は通常の押し玉
と割れない押し玉を使い分けてい
る。
世界のトッププロたちが今でも
ノーマルソリッドスタンダード
シャフトを多用している選手が
多いのは、そうしたソリッドには
守備範囲が広い優位性があると
いう物理的なキューの現象を知り
抜いているからだ。

だが、「新製品」を年中発売して
大衆に消費させないとならない
企業の広告塔になっているプロは、
キューの選択権は無い。資本の
紐付きとなるからだ。
ゆえに、プロの中には本当はTAD
を使いたいのに、選手活動の資金
を得るために泣く泣くメーカーの
新商品を使い続けているプロも
多くいる。「今度のシャフトは
とても良い」というお決まりの
宣伝文句を口にしながら。ゴルフ
道具のように。
それは、資本、企業というものが
スポーツに関与する限り存在する
「スポーツの健全性の捨象」に
も繋がる社会問題であり、キュー
の性能の良し悪しとは別次元の
問題だ。
だが、その別次元である資本の論理
を「道具の性能の如何」であるか
のような虚飾を弄して大衆に金を
消費させるのが企業の目的なので、
人間はよく目を見開いて社会構造
の真実の姿を見抜かないとならない。
例え相手が国家であろうと、巨大
資本であろうと、人間は「洗脳」
されてはならない。被洗脳による
鳴動集団行動はとても危険だ。

また撞き方の効果を助長するもの
として、ソリッドシャフトの場合
は、キューのシャフトのテーパー
も大きなファクターとなる。
テーパー次第でほぼハイテクシャ
フトと同じ手玉の軌跡を描くソリ
ッドにさせる事も可能だ。
かといって、それは入れが強い事
に直結するかかというと、そうい
うことではない。入れは別な次元
とファクターに関することだ。
「ハイテク=入れの強いキュー」
とか思っている人間や解説をする
業界人も多いが、てんでそれは
見当違いの不見識だ。
シャフトの構造のキモは、あくま
で手玉の動きをどのようにさせる
かという違いがテーパーや内部
構造により現出するだけの事で
ある。

ハイテクシャフト系の動きが好き
でソリッドシャフトが好きならば、
そのように動くテーパーとそれな
りの撞き方を知ればよいだけだ。
シャフトはソリッドもハイテクも、
テーパーがかなり重要なシャフト
の動きの要素を占める。コンマ
ミリの違いで大きく打球性能が
変わる世界。シビアだ。
これと同じく、フライフィッシン
グのロッドも、ごくほんの0.0幾つ
のテーパーの違いで、ロッドアク
ションが大きく変わる。当然、
それは釣果に繋がって行く。だか
らロッドメーカーは各社ともテー
パーを命としているのである。

キューを作る人間、それを使う
人間にとってはシャフトのテー
パーは命なのだが、キューとい
うものは販売しているので、
そのデータは非公開ではない。
ただし、「使用者が削り込んで
自分のテーパーにする」ために
最初から太めのシャフトにして
出荷するケースもあるので、そ
のあたりは見極めが必要だ。
カスタムキューのシュレーガー
やアダムのGBシリーズなどは
そうしたシャフト群に類すると
いえるだろう。


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