渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

快速ロード ~S字~

2023年06月03日 | open



サーキットだと、「楽しい」
などという心境とは別物の世界
だが、モーターサイクルの一般
公道乗りは楽しい。楽しむ走り
が公道では可能となる。サー
キットは戦いの場なので、「楽
しさ」はない。「面白さ」はあ
っても。
あくまでもサーキットは真剣勝
負の場だ。
真剣勝負はニヒルな面白さはあっ
ても、楽しさはない。
公道は勝負の場ではない。
だが、それゆえにこそ、そこに
楽しさをもたらす要素も多くある。
楽しさと面白さが合体する。

モーターサイクルで公道を走る
時の「走り」ではツイスティな
ロードが私は一番面白い。
直線は、たとえ速度リミッター
が作動する領域でも、クルージン
グしたら眠くなる。
ライダーの走りが覚醒するのは
ツイスティなワインディングロ
ードにおいてだ。
それは、例え街中であっても。

よくモーターサイクルのことを
知らない人たちは、このような
道がバイク乗りにとって楽しい
のかと勘違いしていることが多
い。


こういうレイアウトの道は
ひとつも面白くない。
超低速定常円旋回でただ回る
道だからだ。
ループロードなどもそう。
スパルタンで軽快な切り返し
ができるロードこそが二輪
ライディングの醍醐味だと
個人的には感じる。

例えるならこんなレイアウト(笑)。


8年程前、バイク仲間の250を
二人乗り
運転で走らせた。
彼は3台持っているが、その
うちの1台だ。
奴は元レーシングライダーだ。
ただ、彼は二人乗りの後ろに
乗ったことが一度もないと言
う。まじか。
私は高校時代は2ケツ多用だっ
た。
しかし、やはり、考えたら、
19才以降は人の後ろに乗った
ことが殆ど無かった。二人乗り
してスタンドやステップをすり
ながらも旋回していたのは全て
私が前だった。
そのうちレプリカマシンが出て、
擦った時には転んでいる時とい
う深いバンク角の車になったが。

奴を後ろに乗せる時、私は言っ
た。
「後ろでハングオフしないでよ。
曲がれなくなるから」と。
一度、学生時代に後輩を乗せて
走った時、どうもジャイロみた
いにマシンが変な挙動をするな
と後ろを見たら、タンデムの奴
も一緒にハングオフしていた事
がある。
やめれ。マシン曲がりませんが
な(笑)。

タンデムの時は、後ろの人間は
「物体」になる必要がある。
後ろの人間が旋回でバランスを
取ってはならないのだ。
ただ、加速と減速の時には後ろ
の人間も、ステップを思い切り
踏ん張って下半身で身体を「自
分で」支える必要がある。
でないと、上体を運転者に体重
乗せのようになり、ヘルメット
が運転者にガツンと当たったり、
仰け反ったりすることになる。
タンデムでは、後ろの人間も背
中を丸めてGを処理する乗り方
が必要となってくる。
オートバイに乗るのにはステップ
に踏ん張ったり足裏で掴むような
感覚で操作するのは運転者も後部
座席の者も同じだ。
オートバイはステップで乗る。
どてっと足を載せているだけと
いうのは無い。

で、その250の時、初めて後ろ
に乗るというバイク仲間を乗せ
て走った際にS字に差し掛かった。
ペタンペタンと寝かして切り返
して抜ける時、最初の右コーナー
で彼は「ウホッ!」と叫び、
次の左で「ウホホー!!」と叫
んだ。
自分で運転するのとは異なる初
めての新感覚を体験したのかも
しれない。
恐怖からの叫びではなく、ヒャッ
ハー!状態での雄叫びだったから
だ。

S字を快速で抜ける際にはアクセル
コントロールとクイクックリー
な体重移動のみで走る。
しかし、切り返しの際には前輪の
トラクションが抜け易いので、か
なり神経質に接地感とサスの動き
に注意する必要がある。
基本的にはサスは十分に沈ませて
しっかりと仕事をさせてやる。
また、基本はドリフトもさせない。
パーシャルでダラーッと走るよう
な定常円旋回もしない。
パーシャル
は非常に重要な区間
だが、ピューッ
と走る感じ。
ダラダラさせない。

パーシャル区間をどこに取るか
とても重要になる。
前輪と後輪を交互に路面に食い
つかせて、トラクションの前後
変化をバランスさせてライン
をトレースして旋回するのだ。
モーターサイクルの一番危険な
状態は、スロットルを開けもし
ない閉じもしないパーシャルの
状態の時で、主に定常円旋回区
間がこれにあたる。
サーキットではほんの一瞬の区
間だが、この時は後軸に駆動が
かからず、旋回Gをタイヤのグ
リップとサスの仕事任せとなり、
ライダーのコントロール制御か
ら離れる区間であるので、非常
に危険なのだ。
だが、極めて重要な旋回区間で
もある。
競技の場合、タイム縮めはパー
シャル旋回速度がどうかによる。
コーナーが速い走りが速い走り
に繋がる。結果的にタイムでは。

しかし、公道ではパーシャル
状態でコーナーをだらだらと
円旋回することが安全運転だ
とか勘違いしている人たちが
大勢いる。
モーターサイクルは、後軸に
駆動をかけている時、もしく
は、前輪にトラクションが集
中してステアが効いている時
が一番安定する。
なによりも、パーシャル状態
は、操縦者の意思を離れたと
ころにマシンが置かれる区間
なので、それこそが一番の危
険因子を構成しているのである。
全開コーナリング以外では殆
どのコーナーでパーシャル区
間があるが、サーキットでは
それをどれほどコンマ数秒以
下に抑えるかということをラ
イダーは考えて公道では実行
している。危険で遅い領域だ
からだ。つまり、パーシャル
旋回区間は速く走る。速度が
速い=短時間、短いという事
だ。距離的な点からの時間で
はない。区間タイムを速くする
という事。コースではコーナー
が速い者が全体タイムも速く、
公道でもパーシャル時間を減
らす事で危険領域滞在時間が
短くなる。

だが、一般公道では、特に峠の

ローリング族などは、加速減速
をせず、同速度でダラーッと
走って単一コーナーを「どれだ
け寝かせるか」という意味不明
で危険なことをやっていた。
そこらあたりが峠の走り屋と
ローリング族の大きな違いだっ
た。
それさえも見切れない解って
ない二輪乗りは、数十年後の今
でも峠族とローリング族の区別
もつかずに一緒くたにして毛嫌
いしているが、両者は大きく異
なる。それは何よりも、マシン
ライドの中身においてまるで別
物といえる。
サーキットとはまるで別物の限
界値が低すぎる公道だが、ロー
リング族は単一コーナーの中の
短い区間では峠族と代わり映え
しないようにも見えるが、コー
ナーが連続する場所である程度
の距離を走ると、全くローリン
グ族は峠族にはついて来れない。
こんなことは80年代中期までの
峠族はみんな知っている。
そして、そんなローリング族が
登場し始めてからは峠には行か
なくなった峠族は多い。
峠族にとっては、峠が危険走行
を続ける「走るパイロン」だら
けになったからだ。
周回遅れ以下の連中が集団で走っ
ているような状態に峠を走る層
が変質したからだろう。
鈍速寝かし込みオンリーの危険
集団が峠を占拠し始めたので、
走り屋は峠には行かなくなった。
実は「どれだけ寝かさないか」が
速さに繋がる事をローリング族
たちは知らない。
ローリング族は速く走ろうとは
していない。「どれだけ寝かせ
られるか」にしか興味はなかっ
た。それを煽る雑誌も登場した
りした。
峠では事故多発となり、通行止
めのロードも増えてしまった。

峠(やま)は軽く流していても面
白い。

そして、快速ロードは、ツイス
ティなS字と中高速コーナーが
連続するワインディングだ。
充分にモーターサイクルに本来
の仕事をさせて活き活きと活躍
させてあげることができる。
乗り屋のほうは、ずっとヒンズ
ースクワット運動をしているよ
うな感じになるけど。
しかし、マシンと一体になれて、
道を相棒と共に行ける。
これはね、もう最高だ。
「そうだよな、おまえもこう
やって走りたいよな」とマシン
のタンクを抱くようにしながら。



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