渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

キュー切れ ~ポケット・ビリヤード~

2022年11月29日 | open


先週、私より上級者が魅せた。
魅せるビリヤード。

その人はマッセも上手いのだが、
5-9の4人撞きでこういう配置が
回って来た。

どう撞くのかなぁと思っていた
ら、スパンと撞いてこう出した。


そして、8番を落とした直後に
キュー出ししたまま顔だけ横
に向けて私を見てニッと笑った。
やられたよ(笑)。
その後、予定通り9番をサイド
に切り押しで入れて4点。手玉
もキッチン内のさらにブレイク
エリアに移動させてこのマス
完了。
次はその人からのブレイク。
手玉停止位置からのブレイクだ。

幸いマスワリにはならなかった。

普段はとても柔らかいしなやか
なショットをする人だ。
身長は私より5-6センチある位
かなぁと思ったら182あるそう
だ。私より8センチ程背が高か
った。
私も左でも撞くが彼もそう。
そして二人とも、ほぼメカニ
カルレストを使うシーンは少
ない。
4人のうち、利き手の逆手が

使えないのは一人だけで、歴
18年。
他は歴42年、歴36年、36年だ。
だが、私は始めた当初から逆手
でも使えた。使えないと四ツ玉
は話にならないからだ。
そういえば逆手を使えない一人
を除いては全員が四ツ玉出身
で本物の玉屋育ちだ。歴18年
は玉屋育ちではなくアミューズ
メント中心。たまに玉屋に行く
事がある程度。だが平撞きでは
よくマスを割る。


今回いろいろ決めていた最年長
者の人のマッセを動画撮影すれ
よかったと思う。レストも
綺麗だ。お手本のような人差し

指がU字レスト。
こういうマッセを対戦の中で
ごく普通に見せていた。


これなどはマッセショット自体
がウルトラだが、この配置で
それを決めたら、どれほど
対戦者にとってとんでもない
展開になるかは、5-9リング
ゲームをやる人は即判るだろう。
私ならグランドマッセでやるが、
その人はレールの高さを利用し
ての通常マッセU曲げブリッヂ
でトンと撞いてこれをやって
いた。エディのように。


こういうのをごく普通に対戦の
中で繰り出してくる。巧者は
やるやる。
それゆえ「芸術的な玉撞き」と
先週語った次第。
私も同様の玉筋をいくつか見せ
た。
ポケット・ビリヤードは、角度を
正確に取って手玉を転がせば
的玉は狙った穴に入る。
だが、ポケット・ビリヤードは
それではない。それやってタマ
ツキだと思っている人が現代は
ゴマンといるが。
玉撞きは手玉を撞いて手玉を
自由自在に動かすのだ。
的玉を入れるのは当たり前。
そこではないところに要諦も
奥義もある。玉入れなど玉転
がしでも入る。技術など無く
とも。
そうではないのだ。
玉撞きは「場を作る」事をやる。
テーブルを支配する。
そして、玉を落とし続けてプール
して行く。
それが、つまりプールゲームだ。

私がラストゲームで見せた玉は、
この配置での取り切り大量得点。


こんなごちゃ玉はストレート
プールみたいで大好きだ。
全部落とす。手玉を職人技で
動かして。
ここでは、9番を狙い通りに
手玉でそっと蹴って穴前の
白丸位置に移動させたのが
功を奏した。
この時は芸術的過ぎて対戦者は
「おお~」とか言ってた。
的玉シュートしながら手玉で
何度か優しく蹴って9番を穴前
に運んだのよね。一回ではなく、
まるで手で触ってそっと9番を
少しずつ移動させるように。
そして9番はサイドに2度落と
した。
最後も的玉入れと手玉戻しの
キャロムショットで同時に
的玉と点玉をダブルイン。
この最初の配置の局面から10点
をワンキューで取った。
玉撞きやる人は詰将棋のように
図を見て構想を考えてみてくだ
さい。

それでゲームオーバー。
全員ほぼチャラ(笑)。私ともう
一人が1点のみ負け。
一切金は賭けてないが、計算上は
そうなる。
まるで「壮大なるゼロ」のような
リングゲーム対戦だった。
12時間撞いてこれか、みたい
な(笑

4人撞きで1点は大きいですよ。
昭和時代は大抵は1点50円だが
100円レートの場もあった。
プロたちは1点200円撞きだ。
4人撞きだと、1点は3倍だから
全員からで50×3=150、100なら
100×3でたった点玉1球が300円
のショットという事になる。
負けが込むと、とんでもない事
になる。
マスワリが倍だが、ただの平
マスワリなどはしない。
何度も何度も点玉の5番と9番を
途中で落とす。途中落としは
フットスポットにアップだ。
二つ縦にフットスポットに
上がって密着セット置きにな
っても、ヒネリのスロウを使っ
て縦バンクで遠いコーナーに
入れてしまう。
手玉や別玉で狙い玉を蹴って
サイドポケットに寄せるよう
な玉撞きもする。
的玉を入れるなどというのは
当たり前。入れるだけでなく、
入れて、なおかつ場を新たに
作る。玉の配置を狙った計算
通りに動かして。
それがリングゲームの5-9だ。
リングなので延々と輪っかの
ように無限大に続けられる。
可能性としては。
最後の私の10点でも、1点100円
だとしたら、4人撞きだと10点=
3000円だ。
いやあ。バクチはよくない。
本当にまじなところ一切金を
賭けずにやっているから、それ
こそが実は面白い。
ギスギスしないしね。
1マスで10点以上の得点は先週は
全撞きの中で私は3回出した。
私が出すという事は、実力伯仲
の中では他の人たちも出す、と
いう事。ありとあらゆる技術
を駆使して真っ向から勝負に
行く。アーティスティックな
職人技のショット連発で。
だから「芸術的」なのよ。
ただし、玉筋は汚くなる。
綺麗に全部取り切りマスワリ
の平撞きではなく、的玉を入れ
て、同時にとにかく5番と9番を
蹴り出すから。
それを全員がやる(笑)。
まあ、配置や場はキュー持つ人
に好きなようにかき混ぜられる。
それが「汚い玉」という事。

ちなみに通常の相撞きの場合、
手玉や別玉で9番や10番の点玉
を動かしたら、「失礼」と相手
に言う。これはどんなに親しい
間柄であっても。セーフティ
以外の隠れ玉も失礼と言う。
それは日本の撞球者の礼儀だ。
海外や外国人は日本の礼儀
作法など関係ないのでどうでも
いいが、日本で玉撞く時の
日本人は最低限の礼儀を撞球
では守らなければ玉撞きなど
する資格はない。
試合ではお手合わせではなく
対戦の競技中なので言わないが。
ところが、今の若いプロらは
トッププロでも、チャレマと
かの場で、土足でずっと椅子の
上に足(靴裏)乗せて体育座り
のようにしてたり、挨拶もろく
にできないのがいたりする。
どういう躾を親から受けたのか
と思ったりするが、よしゃいい
のに、それが玉入れだけは上手
くて公式戦でかなり上に行く。
今後、後進たちに何教えるの
でしょうね。そういう社会人
として失格の行儀ぶりで。
玉入れだけが上手くとも人と
して駄目な奴は駄目なんです。
スポーツ選手としても。
帽子被ったまま「コーチ」とか
「指導」とか公的にやっている
ドカンチがおっさんにもいるの
だから、やれやれというやつ。
撞球界、案外昔の賭け玉師の
クズのほうが対人局面では礼節
を守っている紳士だったりする。
クズでろくでなしの博打打ち
だったが、カスではなかったと
いうことか。
撞球師ほど、きちんと敬語を
使って話をするしね。
ありゃ都内では逆に怖かった。
物静かに、丁寧な標準語で
敬語でゆっくりと話をする。
撞球師はそれ。


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