
日本のビリヤード界には、和製
英語が多くある。
まず一番有名なものはこれ。

キューの一番先に付いている革。
これは英語ではtipと呼ぶ。
発音はティップだ。
だが日本語ではタップと呼ぶ。
タップとはタップダンスのタップ
であり、コンコン叩くという意味
で、キュー先のtipの事ではなくな
る。
だが、日本ではタップと呼ぶ。
何故なのかは不明。
さらに、業界で有名な英語風日本語
に「リボイス」がある。
これは英語の原語はreverseだ。
逆行の事。
それが日本語ではリボイスと書き、
はっきりとカタカナ語で発音する。
撞球技法として手玉を戻す玉運び
の事をそう呼ぶ。リバースとカタ
カナで書いて発音するよりも、リ
ボイスは発音が原語に近いニュア
ンスを表現しているかもしれない。
トンネルではなくタノーのような。
トンネルの事をネイティブ米英人
が言うのを聴いたらタノーと言って
いるように聴こえる。
ネイティブの発音はトンネルという
カタカナ語では聴こえない。
リボイスショット。2クッション目
にスピンを利かせて反射角を狭める
ために逆ヒネリを使う。

ダブルレールもリボイス系の玉出し
に分類できるだろう。

逆ヒネリだけでなく、順ヒネリを
入れてもダブルレールにさせる
場合もある。これはクッションと
手玉軌道の位置関係によりけりだ。

さらにビリヤードの世界で普段何気
なくよく使っている単語で、やはり
聞き慣れない和製英語がある。
それは「空コ」「玉コ」というもの。
これはcushion=クッションの事を
明治から戦後まではコッションと
呼んでいた事による。
手玉単独でクッションに当てる事を
「からコッション」、クッションに
密着した玉に手玉を当てて弾かせる
ことを「たまコッション」と呼んだ
歴史があり、それが今でも残って
いて日常的に多用される。
だが、これもリボイスと同じでクッ
ションよりもコッションのほうが
原語発音に近い。かなり近い。
Henryの事をヘンリーではなくヘン
ルィと書いたり言ったりするほうが
原音に近いのに似ている。
Robertの事もロバートと呼んだら
英米では全く通じない。カタカナ
に書き下ろすとロボッに近い発音
をするとRobertだと通じる。
マクドナルドというカタカナ語が
英米では一切通用しない和製語で
あるのと同じだ。マックは通じる
がマクドは論外。まるっきりの
「マクドナルド」以上の和製語だ。
オイドくらいに英米人には通じない。
ポケットビリヤードなどで的玉を
落としながら手玉を次の的玉を取り
やすい位置に移動させる事をポジ
ションプレーと呼ぶ。
「次」は英語ではnextだ。
そのnextの事を日本語撞球世界で
はネキストと発音する。
これも、戦後できた日本語英語の
ネクストではなく音感から聴き取っ
た日本人が理解した英語だろう。

ただし、上掲のいくつかケースの
ような類別ではなく、完璧な言い
間違いによる言い回しが大流行し
ている現象が日本のビリヤード界
には存在する例がある。
それはこれ。

14.1ラックコンティニュアスという
種目の呼び方だ。
英語でfourteen one rack cotinuous=
フォーティーンワンラックコンティ
ニュアスだ。略称して14.1 rack。
14はフォーティーンである。
だが日本人は英語の数を読めない人
が多いので、14の事をフォーティ
=40と呼んでしまうのだ。
これは2(two)の事をツーと呼んで
しまう日本人の自己中心発音とは
別物の意味でやってはならない事
であるといえる。
なぜならば、数の数値そのものを
変えてしまう言い方だからだ。
だが、日本人の玉撞き人たちは
14の事をフォーティーンとは言え
ずに40であるフォーティと言う。
これは非常に宜しくない。
14.1の事をビリヤード界の英語が
全く喋れない人たちは全員がフォー
ティワンと呼んでいる。
それは14.1ではなく41の事だ。
これだけは、明治から戦後までの
原語に近い呼び方と記述法で表現
していた日本ビリヤード界の独特
な現象(「タップ」は除く)=英語の
原音に近い言い回しの風習とは異
なる。
14は14であり40ではない。
14-1は14と1であり41ではない。
「フォーティワン」という呼び方
のみは日本のビリヤード界の人間
たちは絶対にやめるべきだ。
数が違うのだから。これはもう
言い回しとか訛りとかではなく、
明らかな誤謬であるので、やめる
べきものなのである。