私たちの乗った日本人引き揚げ船
「信濃丸」は、目の前の日本、
博多港を見ながら上陸出来ません。
… … …
博多港の沖合から日本を眺めながら
「信濃丸」の数日は過ぎました
そこへ、また厭なニュースが
聞こえてきました…
なんと、大型台風の襲来です。
… … …
私らの乗った「信濃丸」は台風に
備えて、船の方向、投錨など
対策は行われたはずです。
私を可愛がってくれた船員さんも
「大丈夫だ!」と云ってくれました。
幼かった私には海の上での台風など
全く知りません。
… … …
寝ていた私は、あまりに船が
揺れるので眼が覚めました
私は、たちまち船酔いになって
いました…
6千㌧級の貨客船「信濃丸」も
嵐(台風)なかで木の葉のように
揺れています…
船室の丸窓から外を覗いてみると
小山のような大きな波で、博多港は
荒れ狂っています。
こんな大きな波は初めてでした
… … …
日本に押し寄せる台風は
沖縄から九州を通ることが
あとで知ることになりましまた。
つまり、日本人引き揚げ船
「信濃丸」は台風メッカの
真っ只中に停泊していたのでした。