サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

デフフットサル、ソーシャルフットボール、電動車椅子サッカー、デフサッカー、ブラインドサッカーと盛りだくさんの5日間

2017年03月21日 | 障害者サッカー全般

この5日間(3月16日~20日)は障害者サッカーの大会・合宿・イベントがめじろ押しだった。
16日はデフフットサルのチャレンジカップ。18日は電動車椅子のドリームカップ。19日はデフサッカー男子日本代表の合宿。20日はブラインドサッカーの日本対ブラジル戦。その他、デフサッカー女子日本代表合宿、CPサッカー日本代表の練習、埼玉のCPサッカーチーム主催の『ボーダーフリーサッカー』などには残念ながら足を運ぶことはできなかった。

本来なら一つ一つのイベントごとに記事を書きこんだほうが良いのかもしれないが駆け足で振り返っておきたい。


 まず16日に東京大田区で開催された、聞こえない聞こえにくい人たちによるフットサルであるデフフットサル・チャレンジカップ。当初はデフフットサル男子日本代表、韓国代表、ウズベキスタン代表の3か国が争う形の国際大会として準備が進められていたがウズベキスタンが来日することが出来ず、代わりとしてソーシャルフットボール(精神障害のフットサル)関東選抜チームが出場。ウズベキスタンが参加出来なかったことは残念だが、エキシビションマッチとは言え、別の障害者サッカーチームが大会に参戦するというある意味画期的な大会ともなった。急遽の出場が可能であったのも昨年4月に障がい者サッカー連盟が発足し、各障害者サッカー間の横のつながりが出来たからこそだろう。
 3試合行われたうちの第1試合はデフフットサル男子日本代表とソーシャルフットボール関東選抜チームとの対戦。全国から集まってきているというタレントの差、そして何よりもチームの成熟度の違いが出てデフチームが4-0で勝利した。デフチームも2015年11月の世界大会でいったんチームは解散、川元監督が再任され昨年11月に2019年の世界大会へ向けて船出したばかりではあるものの、急造チームであるソーシャルフットボール関東選抜チームに比べれば成熟というか、わかり合っているという意味である。ただソーシャルチームもポストを2度叩くなど惜しい場面もあった。
 2試合目はソーシャルチームと韓国フットサル代表のエキシビションマッチ。これまでも、知的障害者サッカー日本代表vsろう者サッカー日本代表、知的障害者フットサル日本代表vsデフフットサル日本選抜の対戦などがおこなわれてきたが、異なる障害者間の国を越えた対戦はおそらく初めてなのではないだろうか?ソーシャルチーム竹田選手の豪快な得点で幕を開けた試合は点の取り合いとなり、最終的には韓国が9-6で勝利した。
 3試合目は、デフフットサル日本代表と韓国代表の公式戦。前半はベテラン船越選手、テクニシャン東海林選手の活躍などで日本代表が相手を崩した得点を積み重ねるものの、韓国が個人技で追いつくという展開。しかし前半終了間際の韓国選手の退場(フットサルはサッカーと違い2分後の選手の補充が可能)からは完全に日本のペースに。結果としては吉野選手の6ゴールを始めとする怒涛のゴールラッシュとなり日本代表が19対5と韓国を撃破し、チャレンジカップの覇者となった。結果は素晴らしいものとなったが日本のベンチ入り選手12名に対し韓国は7名。日本は圧倒的に有利な状況でもあった。
 ウズベキスタン来日中止に見られるように国際大会を成立させることはなかなかむずかしい。今後は例えばいくつかの障がい者サッカーの日韓戦を同時開催してはどうだろうか?知的障害者サッカー、ブラインドサッカー、デフサッカー等々。
 また大会には日本の手話、韓国手話、国際手話の3つの手話通訳がついた。そういった点もとても興味深かった。
 大会の詳細は下記参照。
http://jdfa.jp/news/deaf_futasal_challengecup_20170316/


 翌々日の18日土曜日は電動車椅子サッカーの大会であるドリームカップが神奈川県平塚市で開催された。電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画を5年間撮り進めているが、撮影の一環として平塚まで行って来た。
 20回目を数えるこの大会は、近年においては制限速度10kmの国際ルール争われる、クラブチーム同士の大会としては唯一の大会として存在感を放ってきた。(但し今年の全国選手権大会からは制限速度10kmと国際ローカルルールである6kmの両方で行われることになっている)。
 大会には全国から6チームが集まり3チームずつ2つのグループに分けられ、各グループの同じ順位同士が対戦し順位を争った。優勝したのはNanchester United鹿児島。電動車椅子サッカーは4人対4人で試合が行われるが鹿児島は3人で参戦!鹿児島は予選リーグ初戦で金沢ベストブラザーズ相手に4-0、強豪レインボー・ソルジャーにも2-1と勝利しグループAを1位通過、決勝ではFCクラッシャーズを2-0で破り、見事優勝を果たした。3人のチームが優勝することはもう2度とないのではないだろうか?
 優勝の要因は、7月のアメリカワールドカップ最終メンバーに選ばれた東、塩入選手の高い技術と抜群のコンビネーションである。レインボー、クラシャーズ相手に流れのなかからは点を取ることが出来なかったものの、セットプレーから「分かっているけどやられてしまう」恐るべき精度で得点を積み重ねた。また3人目の選手である野下選手の守備も見事だった。
 またリアガードの有無が明暗を分ける局面もあった。日本代表選手たちは全員がアメリカ製の電動車椅子ストライクフォースに乗っている。純正のストライクフォースには小さなリアガードしか付いていないが、試合中も人工呼吸器を付けている選手や、体が屈曲しているためシートを改造している選手たちなどは、呼吸器や体の保護もあり電動車椅子を改造し大きめのリアガードに改造している選手も多かった。その結果としてリアガードがシュートコースを消し点が入りにくい状況も生まれていた。ワールドカップではリアガードの改造が認められるかどうか不透明であるため、改造して取り付けたリアガードを取り外し元の状態に戻した選手も多い。
 準優勝のFCクラッシャーズは飯島選手を中心にしたチームだが、飯島選手以外の選手の力も上がりチーム力がアップした。クラッシャーズに後塵を拝したYokohama Crackersと Red Eagles兵庫は全国大会優勝も狙えるチーム。今回4位に甘んじたレインボーも含めて秋の選手権大会の熱戦はとても楽しみである。
 国内の選手権大会前の7月にはアメリカフロリダ州でワールドカップが開催される。大会に参戦する日本代表を資金面から支援しようとクラウドファンディングが始まった。各障害者サッカーともに資金面ではとても苦労しているが、電動車椅子サッカーで大変なのは一人では行けない選手が多い点。家族、あるいはヘルパーが同行する必要がある。つまり自己負担が2倍3倍かかることもあるわけだ。
https://readyfor.jp/projects/11639


 その翌日19日はデフサッカー男子男子日本代表合宿の見学へ行ってきた。7月にトルコで開催されるデフリンピックメンバー発表前の最終合宿である。合宿2日目の19日は流通経済大学サッカー部との練習試合が行われた。
 昔からよく知っている選手、初めて見る選手、16日のフットサル日韓戦でも見た選手、負傷の選手以外は合宿に参加した選手全員が出場した。アピール出来た選手、出来なかった選手、様々だったが、もちろんこの合宿に至るまでのプレーを総合的に判断して最終メンバーが選ばれるのだろう。
 デフサッカーに限らず世界大会に出場する日本代表選手の選考は悲喜こもごも。落選した選手の胸中ははかりしれない。しかし選ぶ監督もまたつらい。...
 デフリンピックとは、ろう者のオリンピック。出場資格は55dB以上である。


 そのまた翌日の20日は世界一のチームであるブラインドサッカーブラジル代表を招いた、さいたま市のノーマライゼーションカップカップに行ってきた。日本代表との対戦である。ブラジル戦を観戦に訪れた観客は1000人を超え、かなり見にくい位置での観戦を余儀なくされた人も多かったようだ。
 ブラジル代表の「とんでもなく凄い」リカルド選手や「こいつもすげーぜ」ジェフェルソン選手が来日メンバーに入っていないことはわかっていたので、試合の注目は大きくなったゴールが試合にどう影響を与えるかという点と、攻撃的にシフトした日本代表の戦いぶりだった。
 ゴールは無人のピッチではあまり差がわからないが、GKが立つとかなりでかい。客観的な立場から見るとゴールが増えて楽しいがGKはかなり苦労しそうだ。
試合は1-4で敗れたが、そのうちのかなりの点数は以前の大きさなら入っていなかっただろう。もちろんシュートするほうも狙う場所自体が変わってきているだろうから単純比較はできないが。
 パラリンピック予選が終わり高田新監督になって以来初めての生観戦となった一戦。噂に聞いていたように以前の守備的戦術とは打って変わって攻撃的にシフトしていた。前半の黒田選手のゴールは狙い通りだったようだが、相手陣内でボールを奪って攻め切ろうという意思は見えるものの奪うべき位置でなかなか思い通りにはボールを奪えずカウンターから失点を喫することも多かった。まだまだ発展途上ということだろう。ファーストディフェンダーが1対1で、あるいは時には2対1でボールを取り切れればベストなのだろうが、抜かれた後のセカンドディフェンダーがいかにくらいつくかも今後の課題となるのだろうか。
 いずれにせよ、
この攻撃的な戦術がどう成熟していくかとても楽しみである。できれば時間帯や状況に応じて以前の守備的な戦術との併用がもし出来れば、さらに強くなると個人的には感じた。
 
試合等の詳細は下記参照
http://www.b-soccer.jp/10190/news/pr170320b1daihyo.html
 また会場ではモバイル動画配信が行われたが、15秒間再生を遅らせるという設定もあり、プレーをスマホで見返すのに便利だった。