聴覚障害児の入所施設である「金町学園」(東京都葛飾区)の閉園が決まったそうです。
金町学園は現在定員30名のところ29名が在園し今年度内と来年4月からの入園希望の相談が各数名いる状況であるにもかかわらず、です。聴覚障害児の入所施設が必要なくなったわけでは決してありません。
しかし平成30年3月31日の閉園は決定事項のようです。
と、言われても「なんのこっちゃ?」と思われるかたも多いでしょう。
まず金町学園とはどういうところでしょうか?
金町学園には、本人や家庭の事情による課題を抱えた児童が入所し、その解決や改善をめざして生活しています。また、聾学校から大学進学をめざす児童や、ろう学校で調理師や様々な資格を取得して社会自立をめざす児童の支援もしています。
(『日本聴力障害新聞』2015年12月1日号より)
様々な事情や課題を抱えた聴覚障害児の『駆け込み寺』的な側面も担ってきたと言えるかと思います。また例えば、地元のろう学校にはない多様な進路を求め親元を離れて入所したりするわけです。金町学園に入所し、そこから都内のろう学校に通ったりします。学園といってもいわゆる学校ではありません。法的には「福祉型障害児入所施設」ということになるようです。
それならば、寝泊まりできる寮があればそれでよいではないか?何も聴覚障害児童だけが集まる必要はないではないか?と思われる方もいるでしょう。
聴覚障害児の成長・発達には、「手話」という共通の言語によるコミュニケーション集団と、聴覚障害に適した学習方法が適した学習方法が不可欠です。入所施設はそれらを保障する数少ない生活の場です。関東・東日本地域で唯一の聴覚障害児入所施設である金町学園の閉園は、現在入所したり、入所を必要とする子どもたちの行き場所、居場所をなくすことでもあります。
(『日本聴力障害新聞』2015年12月1日号より)
もちろん聴者(聞こえる人)のなかで、学び育つことを選択する聴覚障害児、その親もいるでしょうが、聴覚障害児の唯一の自然言語である「手話言語」が基盤である入所施設の存在は不可欠です。音声言語の施設でいっしょに生活し、様々な課題を解決していくことには限界があります。
サッカーを通じて様々な障害に触れる機会がありますが、聴覚障害はどうにも誤解されやすい障害だという実感があります。他の障害に詳しい健常者や当事者が、どうにも聴覚障害のことを理解しれくれないと感じたことは何度もありました。他の障害との決定的な違いは言語の問題です。健常者や他の障害者は日本語話者(機能や知能の問題でうまく日本語を操れない人はいるでしょうが)ですが、聴覚障害者はそうではなかったりするわけです。もちろん現実的には聴覚障害者のなかにも日本語話者(第一言語が日本語で手話ができない人)もいます。
また「ともに」「いっしょに」という言葉をいろんなところで耳にしますが、『絶対的な善』の言葉として使われ過ぎているような気もします。聴覚障害児は『言語』の観点から言えば、(健常者、聴者とは)別に学び、生活することもまた重要だと思います。少なくともそういった選択肢は確保されているべきです。
ろう学校とはまた別の『生活の場』を必要としている聴覚障害児が存在するのなら、それに対応する入所施設が必要だということになります。
強い危機感をいだいた金町学園の関係者を始めとする方々が、新しい社会福祉法人「聴覚障害児の会」の設立や新学園設立に向けて動き出しているようです。
今後、より具体的な形になっていけばまた何かしら書き込もうと思います。
分かりやすく書き込もうとしましたが、あまりうまく書けなかったかもしれません。
あ、それからそもそも何故『金町学園』のことを書きこんでいるか言うと、映画『アイ・コンタクト』を手伝ってくれた聴覚障害者の女性が職員として働いていたり、その後上映でお世話になっている手話通訳者の方も関係されていたりということもあるからです。
(少しだけ加筆しました)