サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

蹴る女

2015年01月13日 | 映画

「蹴る女」
蹴るといっても彼氏や夫を蹴っちゃうような気の強い女のことではなくて、ボールを蹴る女のことです。
阪口夢穂選手を通してなでしこジャパン全体を照射した、河崎三行さんの著作です。
昨年初頭に発売されましたが、年末にやっと読みました。
「いやあ、面白かった」
私自身も著者と同じく2003年から女子サッカーを観始めたということもあり、「あの時のことだ」と即座にいろいろと思い出されて。しかし内情をそれほど知っているわけではないので、なるほどそういうことだったのかと思う部分が多々あって。
阪口選手中心ではありますが、随所に池田(旧姓磯崎)、加藤(旧姓酒井)、山郷、荒川、下小鶴各選手や佐々木監督なども登場し、構成に厚みを持たせてあります。しかしやっぱり、一見何を考えているのかよくわからない阪口選手に着目したことがよかったんでしょうね。

 ところで河崎三行さんの前作は「チュックダン」。
 時期によっては日本代表よりも強い時代もあった在日朝鮮人蹴球団の歴史を生き生きと掘り起こした本。チュックは朝鮮語で蹴球の意、団は団体の団です。
「これも面白かった」。 
 この本を読んでサッカー映画を撮りたいと思い、女子サッカーを観るようになったんです。ちょっと話が飛びました。
 元・チュックダンの選手にして北朝鮮代表でもあった祖父とサッカーが大好きな孫娘を軸とした話で、孫娘が朝鮮国籍と日本国籍のはざまで揺れるといった内容。祖父の若かりし頃と孫娘の時空を超えたやり取りがあったりなど、いろいろとプロット「チュック」を練っていたんです。(ドキュメンタリーではなく劇映画の企画としてです)。まあそんなことがあって女子サッカーを観るようになりました。当時のなでしこリーグは本当に閑古鳥が鳴いていて、ベレーザの試合を観に行ったら金網越しに立って観るしかないとか、観客も10人くらいだったりとか。そんな時代でした。
 で映画の方は結局頓挫してしまい、その後、中国でのアジアカップのDVDを作ったり、パニック障害のロードムービーのシナリオ「パニック」を当事者でもある妻と共作したりしていたのですが、知的障害者サッカー日本代表のドキュメンタリー映画「プライドinブルー」を作り、その流れで、聴こえない聴こえにくい「蹴る女」たちのドキュメンタリー映画「アイ・コンタクト」を作るに至りました。
 そして今日は聴こえない聴こえにくい「蹴る女」たちのフットサル日本代表合宿に行って来ました。デフフットサル女子日本代表の合宿です。11月にタイで世界大会が開催される予定で合宿を積み重ねています。練習試合を見学したのですが、結果だけみればボコボコにやられてしまいました。しかしスターティングメンバープラスαの守備力は格段に上がってきている印象でした。大会に向け、さらなる守備力の向上と攻撃力アップは望まれるところではあります。
 いわゆる障害者サッカーのなかで「蹴る女」がいるのは、ろう者のサッカーとフットサル、そして電動車椅子サッカーです。電動車椅子サッカーは自分の生身の足ではなく、足代わりの電動車椅子のフットガードで蹴ります。そして女子チームではなく、男女混合。
 その「蹴る女」に興味を魅かれ、現在電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画の撮影を続けています。「蹴る女」だけではなく、「蹴る女」を通して電動車椅子サッカー全体を照射した内容にしたいと思っています。
 これからも「蹴る女」たちから目が離せません。