1日1日感動したことを書きたい

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人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「ハイファに戻って/太陽の男たち」(ガッサーン・カナファーニー)(2)

2009-08-27 17:12:32 | 
  「太陽の男たち」を読みました。著者のカナファーニーは、1936年生まれ。1948年、ディルヤーシン村の虐殺事件がおこるのですが、カナファーニーと彼の家族も、イスラエルの軍隊によって故郷を追われ、難民となってシリアに逃れたそうです。カナファーニーの作品には、故郷を追われ、難民として生きざるをえなかった自らの境遇が深くきざみこまれてます。

 「太陽の男たち」は、イラクのバスラからクゥエートに密入国しようとする三人のパレスチナ難民の物語です。子供にわずかばかりの教育をさずけるために。父に去られ一人で暮らす母親の生活を支えるために。そしてなによりも人間としての尊厳をもって生きるために。三人がなぜクゥエートに向かうのかを通して、カナファーニーは、パレスチナ難民がおかれている境遇を明らかにしていきます。

 三人は、灼熱の砂漠の中を、焼けるように熱くなった給水車のタンクの中に身を隠して、国境を越えようとします。

 「ずんぐりと大きな車は彼ら自身のために道を進むばかりでなく、彼らの夢想、家庭への思慕、あるいは彼らの執念、希望、悲惨、絶望、力強い意欲や底なしの挫折感、そして過去や未来にまでもたえず道を切り拓いていた」

 悲惨と絶望と底なしの挫折感を抱えながら、未来へのわずかな希望を支えにタンクに身をひそめる3人の姿は、難民キャンプで暮らすパレスチナ民衆の姿そのものなのでしょうね。

 この小説は、3人の死を目撃した運転手の次の言葉で終わります。

 「なぜおまえたちはタンクの壁を叩かなかったんだ。」

カナファーニーが伝えたかったもの・・・
難民キャンプやガザで暮らすパレスチナ民衆の沈黙の言葉。


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