碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「アイムホーム」の木村拓哉、弱さやかっこ悪さも表現

2015年05月31日 | メディアでのコメント・論評




東京新聞で、木村拓哉「アイムホーム」についてコメントしました。

「アイムホーム」で新境地!? 
「フツー」のキムタク

 今回の木村拓哉(42)は違う。テレビ朝日の主演ドラマ「アイムホーム」(木曜午後9時)で耳にする評判だ。パイロット、レーサー、首相やアンドロイドまでさまざまな姿を見せてきた木村が今回挑んでいるのは、事故で挫折し家庭でも悩みを抱えるサラリーマン。木村は新境地を開いたのか-。 (鈴木学)

 「サラリーマン、夫、お父さんを気負わず演じているのが新鮮。同年代の男性から『面白い』『フツーの役のキムタクいいじゃん』の声を聞く。そういう評価は初めてでは」と、コラムニストで放送作家の山田美保子さんは言う。

 碓井広義上智大教授(メディア論)は「いわゆる『キムタクドラマ』ではない。かっこ悪さも引き受けて、記憶をなくして妻子に愛情があるのかも分からず途方にくれる役をきちんと演じている」と指摘する。

 木村自身は、過去に父親役もサラリーマン役もあるとして「描き方が異なるだけで、現場でやっていることは変わらない」とクールな反応だ。「信頼できる監督に自分を預けている。『違う』と言われるのは僕がどうこうではなく、監督の演出でそういう印象を与えてくれたんだと思う」

 横地郁英ゼネラルプロデューサーは、木村が主演した昨年の同局のドラマ「宮本武蔵」が背景にあるという。強さの半面、自らの弱さもろさに悩む武蔵を演じた。「強い武蔵の姿と同時に弱さの表現も魅力的で、そういう姿が生きる作品を探した」と明かす。木村の主演というだけで色眼鏡で見られがちな中、局に寄せられる意見で否定的なものは極めて少ないという。

◆平均視聴率14%

 主演ドラマで高視聴率を稼いできた木村。「コンマいくつ下がっただけでも『また下がった』と言われるのは木村さんぐらい。アンチも含めて無関心でいられないのだと思う」と山田さんは言う。苦戦の目立つ4月期の民放ドラマではトップだが、平均14%ほどでは物足りないようにも言われる。

 木村は「深刻な顔、深刻なトーンで数字を伝えてくれる人はいるが、できるだけはね返すようにしている。はね返すには? やるしかない、逃げないで」。今の現場でも「温かいテンションで常に現場にいてくれる」という妻役の上戸彩をはじめ、「一緒に受け止めてくれている共演者、スタッフがいる限り、絶対逃げたくない」と言い切る。

 「俳優として成熟していこうと思えば、どこかで脱皮しなければならない。今作で役の幅が広がったと思う」と碓井教授。田村正和は40歳を過ぎてコメディードラマで成功し、二枚目以外に役の幅を広げた。「木村さんも夫や父としての体験を芝居にいかしていくステップになるのでは」と碓井教授はみている。

◆原作と異なる結末

 主人公の証券会社に勤める家路久(木村拓哉)は、単身赴任先での爆発事故で五年間の記憶をなくし、後遺症で妻の恵(上戸彩)と長男の良雄(高橋來)の顔が仮面に見えるようになった。愛情があるのかさえ分からずに悩む久だが、一方で離婚した前妻(水野美紀)らにも愛着がある。久は手元に残っていた十本の鍵を手掛かりに過去を探るが、明らかになるのは冷徹な仕事人間だった自分だった。

 現場では、仕事は優秀ながら家庭に向かない事故前の久は「ブラック久」、正反対の事故後の久は「ホワイト久」と呼ばれているとか。最終回まであと三話。「仮面に見えてしまう妻子の顔が、普通に見えるようになるのかの答えは用意しています。何でそう見えるようになったかの理由も出そうと思っています」(横地ゼネラルプロデューサー)。結末も原作と違うものを用意しているという。

(東京新聞 2015.05.30)



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