日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今回は、フジテレビ「金曜プレミアム 連続企業爆破テロ 40年目の真実」を取り上げました。
フジテレビ系 金曜プレミアム
「連続企業爆破テロ 40年目の真実」
事件の風化に歯止めをかけ、
現在へと目を向けさせた意義は大きい
「連続企業爆破テロ 40年目の真実」
事件の風化に歯止めをかけ、
現在へと目を向けさせた意義は大きい
1975年5月19日、連続企業爆破テロの犯人たちが逮捕された。前年8月に三菱重工本社、その後三井物産本社や鹿島建設なども標的とされた衝撃の事件だった。
このドキュメンタリードラマに登場するのは、大道寺将司たち犯行グループ、彼らを追った公安刑事、そして必死の取材を続けた産経新聞社会部だ。外部からはうかがい知れない各々の動きが、ドラマにすることで有機的につながり、リアルな物語となっていた。
番組にも登場する元産経新聞社会部キャップの福井惇氏が、「狼・さそり・大地の牙」と題する回想記を上梓したのは6年前のことだ。後に新協会賞を受けることになる執念の取材活動は、本書を基に描かれていた。
また犯人を追い詰めていく公安刑事たちの捜査の様子は、制作陣が入手したという「超一級の極秘資料」が明らかにしていた。一部の幹部のみに配布された資料のタイトルは「連続企業爆破事件の概要」。1992年11月に作成されたものだ。ここには9か月に及んだ捜査の全貌が克明に記されていた。
事件発生から約40年。確かにその記憶も薄れている。しかし、今ほど世界が「テロ」の脅威にさらされている時代もない。報道色の強いドキュメンタリードラマという形で、事件の風化に歯止めをかけ、現在へと目を向けさせた意義は大きい。
(日刊ゲンダイ 2015.05.26)