産経新聞で、NHK朝ドラ「まれ」についてコメントしました。
【ZOOM】
堅調「まれ」 横浜編スタート
ゆるさに好感 「あまちゃん」継承?
堅調「まれ」 横浜編スタート
ゆるさに好感 「あまちゃん」継承?
放送中のNHK連続テレビ小説「まれ」が堅調な人気を示している。
一昨年の「あまちゃん」から続く朝ドラブームの流れをうまく引き継ぎ、これまで視聴率は20%前後をキープ。ヒロインの希(まれ)役を演じる土屋太鳳(たお)や脇を固める俳優陣の熱演も光る。今週から「横浜編」に突入した「まれ」の堅調の理由を探った。(本間英士)
「まれ」は、石川・能登地方や横浜を舞台に、希がパティシエ(ケーキ職人)を目指して成長していく物語。幼い頃、ヤマっ気のある父親、徹(大泉洋)に振り回された経験から「夢アレルギー」になった希は、いったんは輪島市役所に就職するものの、祖母のパティシエ、幸枝(草笛光子)が作るケーキとケーキが持つ「力」に感動し、本来の夢であるパティシエへの道を選ぶ。
「時代もの」反動?!
「ごちそうさん」「花子とアン」「マッサン」と3作連続で「時代もの」が続いた最近の朝ドラ。今作は久しぶりの現代劇だ。
コラムニストの桧山珠美さんは「3作品時代ものが続いた“反動”か、今回の朝ドラには全体的に良い意味で『ゆるさ』がある。青空や海など能登の光景は開放感と旅情感があり、朝から見ていてさわやかな気持ちになれる」と話す。
上智大の碓井広義教授(メディア論)は「戦時中も扱った『花子とアン』や『マッサン』に良い意味での重さがあったのに対し、『まれ』は全体的に雰囲気が明るく、肩の力を抜いて見られる。ヒロインが初めは『夢』に抵抗するというひとひねりがあって、物語が平板にならないよう、うまく工夫されている」と語る。
さらに、作中のユーモラスな演出や地方の風景や暮らしを強調していることについて、碓井教授は「『あまちゃん』から学んでいる感じがする」と指摘。「オープニングや語りも含め、隅々まで意識が行き届いていて、ぜいたく感がある」と称賛する。
ベテラン陣が好演
一方、早稲田大の岡室美奈子教授(テレビ文化論)の評価は少々からめだ。
「『夢を持てない』というのは現代の若者にとって切実な問題。この問題に朝ドラがどう向き合い、描いていくのかを楽しみにしていたが、初回でいきなり『夢を見つけて花開かせるまでの珍道中』と言われてしまったため、少しがっかりした。希が夢を持てない理由などについて、もっとリアリティーが欲しかった」と語る。
一方で、塩職人の元治役を演じる田中泯(みん)や、希の祖母代わりでもある文(ふみ)役の田中裕子ら「ベテラン陣の好演が光る」と分析。
「塩作りの際の田中泯さんの美しい姿や徹を演じる大泉洋さんの浮ついた姿など、周囲のキャラクターの存在感が素晴らしい。だからこそ、希役の土屋さんや(希の友人の)一子(いちこ)役の清水富美加さんら若い女の子たちの輝きが増している」と話す。
舞台は第二の故郷
物語は今週から「横浜編」に突入。希は、パティシエの修業をするために輪島市役所を辞め、夢の原点になったバースデーケーキを作った店がある横浜へと向かう。
制作統括の高橋練チーフ・プロデューサーは「希にとって『第二の故郷』になる横浜で、どんなことが繰り広げられていくのか。今後の展開も楽しみにしていただければと思います」と話している。
■手間と時間を実感 ロケ同行
「まれ」の撮影は、どのように行われているのか。4月上旬、ロケに同行し、その一端をのぞいてみた。
「本番、いきまーす!」
東京都内のある公園。スタッフのよく通る声が響き渡る。この日は、能登に住む文(田中裕子)が横浜を訪れ、希の父、徹(大泉洋)と話をするシーンが撮影された。
撮影は2度のリハーサルを経て、本番。カメラのアングルを変え、2度撮影した。演技に細かいカットはかからず、3分程度の連続しての芝居を撮影した。芝居のライブ感を大切にしており、10分弱の長いシーンも続けて撮ることもあるという。
田中と大泉は、力がほどよく抜けた自然体の演技を披露。また、スタッフによるカメラなどの準備が非常にてきぱきしており、一つの「伝統芸」を見るかのようだった。
このロケでは約40人のスタッフが2時間かけて撮影したが、実際にオンエアされるのはわずか2分程度。これでも放送に使える部分としては多い方だといい、朝ドラがいかに手間と時間を掛けて作られているかを実感した。
(産経新聞 2015.05.12)