「みうらじゅん」という名前があると、新聞でも雑誌でも、つい見てしまうし、読んでしまう。
たとえば、『SPA!』を手にとれば、真っ先に「グラビアン魂」だ。
ほんと、好き勝手なこと、それも妄想爆発みたいなことばかり言っていて、それがことごとく面白い。
もちろん、この『みうらじゅんのゆるゆる映画劇場』も同様です。
<文庫>
みうらじゅん
『みうらじゅんのゆるゆる映画劇場』
文春文庫 853円
著者本人による肩書きは「イラストレーターなど」。この「など」の部分にディープな嗜好が散りばめられている。仏像、エロ写真、そしてロック。しかしB級映画についてもこれほどのマニアだったとは。
『ビースト~巨大イカの大逆襲』などの特撮ものから、『新・個人授業』といったエロものまで、短文とイラストの苦笑・爆笑ページが続く。読みどころは噴出する名言の数々である。
「愛とは、つまりやりすぎることである」(『愛の流刑地』)。また「若い頃はオッパイで、年を取るとおしりっていう男のルールがある」(『Tバックビーチバレー』)。映画の面白さは、見た者が発見するものだと実感する。
「大竹まことの金曜オトナイト」スタジオ収録で
<十行本棚>
チョウ キジェ
『指揮官の流儀~直球リーダー論』
角川学芸出版 1404円
湘南ベルマーレ監督である著者は、「湘南スタイル」と呼ばれる独特のサッカーで勝負してきた。選手と本音で向き合う。リスクと規律。攻めの姿勢。そして、責任は指揮官。本書で語られるリーダー論とマネージメント哲学は、ビジネスシーンでの応用も効く。
谷崎潤一郎
『谷崎潤一郎対談集 文藝編』
中央公論新社 5838円
昨年刊行された藝能編に続く本格的対談集の第2弾。永井荷風との女性談義では「僕は大体素人が好きなんです」と語り、戦後に親交を深めた志賀直哉とは、小説から映画まで話が弾む。師弟関係にあった今東光との新春対談からは、文豪の笑い声さえ聞こえてくる。
浦戸 宏
『縛師~日活ロマンポルノ SMドラマの現場』
筑摩書房 2592円
SM誌の編集者だった著者が、映画『花と蛇』で“縛り”を手がけたのは1974年のことだ。以来50本以上のSM作品に関わった。怒涛の現場と緊縛の美学。女優・谷ナオミや作家・団鬼六の秘話も含め、生きた日活ロマンポルノ裏面史であり、挽歌でもある。
(週刊新潮 2015.05.21菖蒲月増大号)